第8話
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次に「ダメなこと」をしたのは、彼女が家に来た次の日の夜だった。そして夏休み最後の「ダメなこと」だった。
「海に行きたい。もしくはプール」
いつものように、人をこき使うようにスマホにメッセージを送ってくる。
「そんなこと、急に言われても」
僕達の街には、市民プールなどなく、海も隣の県に行かなければ、入れない。
「私に考えがある」
彼女はそう言い、その話題を締めくくった。
指定された場所へ向かうと、彼女はそこから十分ぐらい僕に歩かせた。夜道は、独特な危ない雰囲気があって、これから何をするのかわからない恐怖と相まって、僕を興奮させた。
「中学?」
ここだよ、と到着した様子の彼女に訊いた。
「ここなら、プールあるし」
訊くに、この中学は、彼女の母校だという。およそ中学らしくないデザインの建物に僕は本当に中学か疑う。
「行こ」
慣れた手つきでフェンスをよじ登る彼女を見て、僕もそれに続く。ジーンズを履いた彼女は、迷うこと無く歩を進めていく。
月の光に、プールの水面が反射する。ここで綺麗だね、なんて言えば。言うだけで、救われるならいい。
僕達は、持ってきた私服をプールサイドにおいて、プールに飛んだ。
ドバアとバシャンの中間の様な水しぶきを出して、濡れていく服の重みを感じる。
「これ、泳ぎづらいね」
「ぬご」
「え?」
「別に良いでしょ」
「君がいいなら」
緊張と恥じらいで火照った体に、冷たい水が服と共に体の周りを貼る。
照った彼女の上肢を見て、単純に綺麗だな、と思う。
彼女は、こっちを見るな、という視線を送ってくることも無く、僕達の脱ぐという行為は行われる。
これもまた、彼女の中では不純異性交遊として収まっているのだろう。
ぷかーと全裸で背泳ぎする彼女を僕は身下ろす。
一時間ぐらいして、彼女は疲れたのか、「帰るよ」と言って、僕達は帰る。
髪をびしょびしょに濡らしながら、僕達の夏は終った。
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