第153話 邪神 栄光

【勇者イヤースより長老ピピン宛の書簡】

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今回も忍び込んで様子を探ってやろうと思ったが、その隙がなくてできやしねぇ。

で、本拠地から離れた所に砦を作って小競り合いをしながら様子を見ているが・・・今度の奴は、明らかに今までとは違う。

配下の魔物は人型のがおおくて結構狡猾でそれなりの統率も取れている。そして、粗野ながらも統一した皮鎧や鉄の槍すら装備している。

つまり、まともな軍隊の様相を呈している・・・ってぇ事だ。

中ボスの様子も窺えなかった。


今までの様に嵌め殺しは無理かもしれない。

それなりの損害を覚悟して真っ当な戦をせざるえない・・・ってことになるナ。

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邪神『栄光』は真っ当な軍を擁しているって事。

イヤースは意外と冷静に敵を観察している・・・



【長老ピピンより勇者イヤース宛の書簡】

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最後の邪神だからネ。その覚悟はしているよ。

幸いなことに、これまでの戦いで斃れた戦闘員はそれほど多くない。つまり、戦いの経験が蓄積しているってことだよ。我々の方も強い軍勢を持つようになってんだ。決して悲観なんかしていないさ。

彼ら以上の軍勢を整えるだけだ。

うちの職人が新しい兵器を発明してくれたよ。

動く戦塔だ!

荷馬車に少し装甲をつけて・・・主に木枠の革盾なんだけど・・・てっぺんにバリスタを取り付けたんだ。

装甲には狭間さまもついていて、矢も打てる。

元々が荷馬車だから、当然移動もできるわけだ。この馬車に柵を作るための杭を積み込んでゆけば、野戦場において簡易の砦がすぐにできる・・・っていう優れものだよ。

総勢で一万もの大軍だ。

教団からは治癒魔法や聖魔法の使える聖職者も大勢参加する。

戦傷者の治療・・・それからお葬式に供えてね。


さあ、最後の戦いだ!

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いつもピピンは、励ますようなことを言っている。そして、十分な準備。理想的な上司?



【諸侯軍筆頭騎士ヴァルカンより長老ピピン宛の書簡】

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聖ネンジャ・プの友にして第一の弟子であった長老ピピン様、あなた様の導きを願うヴァルカンであります。久しくご無沙汰しております。


ご報告させていただきます。

勇者イヤースが最後の邪神『栄光』を斃してございます。


しかし、その時に負った傷が深くいまだ病床に伏しておりますれば、不肖ヴァルカンが勇者に代わりましてこの報告をさせていただきます。


勇者イヤース率いる修道騎士会の聖騎士、および我ら義のもとに集いし諸侯、教団より送られた精鋭の増援部隊、イヤリル大神社の山と森の精鋭イヤリル戦士団、その他賤民を含めて総勢1万に膨れ上がった最後の邪神討伐軍は、邪神『栄光』の魔物の大軍と最後の決戦を致すべく、メルランの荒地にて対陣いたしました。

聖ネンジャ・プ聖天以来、これまでにない1万にものぼる大軍です。我ら人の意志と勇気がここに結集し、その陣は重厚で堂々たるものでありました。


我らは最前列に大型の置き盾を並べ、その間には丸太の柵を組み、槍を構えまて待ちました。その後ろには荷車を改造して作った新兵器の戦塔を30基も並べて備えています。まさしく、一夜にして城壁を造りつけたように見えたでありましょう。

そこにはバリスタ(大型の石弓)を備え、他にはエルフの魔道兵、その下には弓兵やクロスボウ兵も配置いたしています。そしてその後ろには何千もの予備兵をおき、最後列には騎兵800を待ち構えさせていました。


この威容に、さすがの魔物軍も気圧されたのでありましょう、始めは攻めて来ずにじっと睨んでいるばかリでありました。我らの強固な陣を見て、攻めあぐねていたのです。

そこで敵をおびき出すために、投石兵・弓兵を前に繰り出して攻撃を繰り返しかけ続けました。するとさすがに敵は堪らなくなったようで、とうとう総攻撃をしかけて参ったのです。


もっとも多くいたのはオーク兵とノール(ハイエナ鬼)兵でありました。凶暴なオーガや身の丈4mもあるトロルもその中に混じえて、砂煙を巻き上げ地響きをならして、攻め寄せて参りました。


我が陣で最初に唸り声を上げたのはバリスタであります。強力な鉄の銛をノロマで大きな体のトロルに向けて打ち込んだのであります。そして、その次にはエルフの魔術師たちが火の玉を放ち始めます。オークやノールたちが吹き飛ばしてゆきます。

しかし、敵も統率がよくとれていたとみえ、それでもめげずに突っ込んでまいりました。

そして、その第一撃が最前衛の置き盾と丸太の柵に衝突いたします。わが軍の兵達は盾を後ろからしっかりと支え、柵の後ろから槍を突き出し魔物兵どもを串刺しにいたしました。


しかしオーガがやってくるとそういうわけにもいきません。大きなこん棒の衝撃に槍はへし折られてしまい、盾も横倒しになってしまう。

そして、その綻んだ隙から魔物軍は陣内に突入してきます。


次には荷車の戦塔が障壁となり、その後ろから予備軍が穴を埋めるべく突っ込んでまいります。たとえ一か所で魔物軍が入り込んでも、直ちに後ろに控えていた予備兵が集まり、周りからこれを取り囲んでその勢いを押し殺し、櫓の上からは矢やボルトが射殺すわけです。

このようにして、一度綻んだ陣もすぐに元に押し返してゆきました。


一時間あまりこのような戦いを続けていましたが、わが軍の奮闘により魔物軍は次々と数を減らし、生き残った魔物軍もとうとう逃げ出しました。

それを騎兵隊が追撃をかけ、その後から本隊の歩兵部隊も総攻撃をかけ、掃討追撃してゆきます。

このようにして、魔物軍に大打撃を与え、敵の本拠地に向けてわが軍は殺到したわけなのですが・・・そこには邪神『栄光』が待ち構えておりました。

元の4分の一ほどにも減った魔物軍が周りを円陣を作って取り囲み、その真ん中には4本の長い腕を持った身の丈が3mを越える双頭の邪神が、その腕に2本の矛と2つの盾を構えていたのです。


ここまで勝利を収めてきたわが軍はその士気は高く、その先陣が一気に襲い掛かりました。

ところがです・・・邪神軍にあと200mほどの処のあちらこちらで地面が破裂し始めたのです。


「火魔法の【爆破】だ!」

 魔術師が叫びました。

その【爆破】に巻き込まれ大勢の兵士が吹き飛ばされて倒れてゆきます。わずかな者だけが魔物軍に至りましたが、それもすぐに斃される・・・先ほどとまったく逆のでき事が出来しゅったいしたわけです。


「なぜ?・・・邪神から遠く離れた場所なのに、あんなにたくさんの【爆破】、それも同時に!」


全軍は呆然として立ち止まり、魔術師がこのように呟くという始末。

我々は大勢の負傷者を目の前にしながら、それを救出する事すらままならないという状況に陥ってしまった。


その時です、少し遅れてきた勇者イヤースが

「ヒャッハー!

邪神は俺っちの獲物だと言ってんだろ~、勝手に始めやがって~」

と、叫びながら一人・・・いえ、仲間の愚人フンと高飛車エルフの巫女フィアナが続き、聖戦士殿達がその後を追っていましたが・・・とにかくその列の真っ先に立って駆けてきました。


そして、

「おら~、闇結界!

おめぇ~ら、先攻の後始末しやがれ~」

と、我らに指示を与えるとそのまま突っ込んでいきました。

闇結界が張られて辺りは少し暗くなり、同時に先ほどまで連発していた【爆破】がピタリと止みました。

慌てて負傷者の回収を行い、同時に勇者や聖戦士たちと共に戦うべく・・・いえ、もう後詰となってしまいましたが・・・我らは陣形を整え、遅ればせながら突撃してゆきました。


勇者イヤースの闇結界の力で奇怪な【爆破】は止みましたが、先に駆けて行った勇者たちだけでは魔物軍に対してはさすがに多勢に無勢でいささか形成不利・・・いや、無茶なんです、あのような少数で魔物の軍勢に向かって突っ込んでゆくこと自体が。

それで、我らも大急ぎでその後を追わざるえなかったのです。


「雑魚はおめぇ~らに任せた。

邪神は俺っちのだ~。」


勇者イヤースと愚人フンが、邪神を左右から挟み込んでその動きを抑えてくれている間に我々は魔物たちを討伐してゆきました。

そして、余裕のある者が邪神に取り掛かろうとしたのですが、その一撃は強烈で盾を構えても盾ごと叩き飛ばされてしまう始末です。勇者イヤースはそのありさまを横目で見てそう叫んだのです。


仕方ないので、間合いを置いた所から弓、ボルトを打ち込みました。しかし、邪神の持つ2つの大盾がそれを防ぎます。それでも、邪神の注意をこちらに逸らせましたので、勇者イヤースと愚人フンの助けにはなったでありましょう。

このようにして暫くやり合っていましたが、事態を打開する兵がやってきました。

荷馬車に造りつけた戦塔です。イヤース配下の大勢の賤民たちがその車を手で押し綱で引いて、3台ほどが荒地を乗り越えてそこに辿り着いたのです。

そこには大型のバリスタを積んでいます。

そのバリスタがうなりを上げて鉄の銛を放ち、それが邪神の盾を貫きました。そして邪神が姿勢を崩した隙に勇者の剣が入り、ついに邪神を傷つけました。そこからは嵐のような矢とボルトが撃ち込まれ、邪神に突き刺さりました。

そして・・・邪神は後ろに跳び下がり、

・・・姿を消しました!?


その後ろを見ますと大岩があり、その陰には地面に大きな穴が開いておりました。

その穴こそが邪神『栄光』の棲家なのでありましょう。

早速重装甲兵を集めて、その穴の中に攻め込もうとしましたが・・・

とんでもない事がわかりました。

・・・なんとその中は瘴気に満ちており、常人をして到底入ることの能わざるものであったのです。


そして・・・勇者イヤースは、

「せっかくここまで、やったんだ。今殺らんでどうする。すぐに再生しちまうぞ。また魔物も湧き出てくるぞ。」

そう言って邪神を仕留めるべく、放胆にも我らの軍勢を捨ておいて、自らその中に入って行ったのであります。後についてゆけるのは愚人フンだけでした。

いかに勇者とはいえ、いかに邪神が傷ついたとはいえ、たった2人で敵の本拠の中に入ってゆくなんて、流石に無謀と云わねばなりません。それで多くの者がそれを諫め、押しとどめようと致しました。

が、それでとどまる勇者イヤースでないのはご存じの通り。


しかし、邪神の籠る迷宮にたった二人で挑んでいった勇者達がもはや生きて戻ってこれると期待している者は誰もいませんでした。故に、修道騎士会の聖騎士達はみんな祈りに入り、諸侯達は話し合いのうえ・・・私に今後の統率を執るように要請してきました。


御存じ通り我らの勇者イヤースは些かおバカであります。

その言動、雑というか放胆というか、諸侯達と私はそれに振り回されてきていささか疲れていた・・・それゆえに、勇者イヤース亡き後の事も話し合い・・・私に盟主となることを要請してきた・・・のかもしれません。

そして日も暮れてきて夕方となりなりましたが・・・勇者イヤースと邪神の戦う雄たけびが地の底から響いてきた時・・・しかし・・・もし、彼が死んでしまったら、残された我々だけで一体どのようにして邪神と戦えと云うのか?。その重責・邪神への恐怖・再びあの時代がやってくるかもしれないという不安、その思いのために居てもたっていられません。


そして、戦場となった荒地をふと眺めると・・・夜の暗がりの中を賤民たちが群がり、そこを掘り返していました。野戦築城の土木のための鍬を必死に振いながら、地面を掘り返していたのです。

聞くと

「この地下からイヤースの雄たけびが聞こえる。イヤースと邪神がこの下で戦っている。行かなくては、イヤースの処に行かなくては。」

と・・・。

それゆえに、我々も寝床から飛び起きて地面を掘り始めたのです。鍬が足りなかったので代わりに大剣と矛を地面に突き刺して、万の軍勢が恐怖に囚われ誇りも何もかもかなぐり捨てて狂ったように地面を掘り返しました。


そして明けて次の日の早朝、地下迷宮にある邪神の広間を掘り当てました。地面が崩れて空いた穴から、まず緑の瘴気が流れ出てきました。やがてそれが薄れてきて中の様子が現れ・・・中には、フラフラになった勇者イヤースと邪神『栄光』が向き合って、その傍らには愚人フンが斃れておりました。

彼らは一晩中、激しく打ち合っていたのです。


直ちに我々は、穴の上から矢やボルトを放って勇者の援護を致しました。そして、その矢の嵐に邪神が怯んだ隙をみて、勇者イヤースが渾身の一撃を突き込み、見事その心臓を大剣で貫いたのです。

そして、そのまま・・・剣を握ったまま、邪神と共に倒れました・・・その心臓にはしっかりと大剣が埋まり・・・。


そしてイヤースは剣に覆い被さったまま身動き一つしていませんでした。呼んでも応えませんでした・・・しかしその両手は剣の柄をしっかりと握りしめて。何としても邪神を斃さねばならぬ、その強い意志が・・・。

それを見た私は喚声を上げるのではなく、脱力し泣いてしまいました。いえ私だけでなくこの光景を見たすべての者がそうでありました。

その涙はイヤースの勇敢さに対してだけではなく・・・多分、安堵・・・先に述べた重圧・恐怖・不安から解放されたのだという安堵ゆえに・・・。


そして、私が盟主にという話はその瞬間に、すべての者の脳裏から消え去っていました。


全ての邪神を斃した今、新たな国を建てなくてはなりませぬ。

その新たなる国は正義に基づいて建てられなくてはなりませぬ。

それでは・・・その正義とは?

まことに邪神を打倒して人の世界を確固たるものにした事、その事に他ありませぬ。

で、あれば・・・その王たるは、勇者イヤース以外にありましょうや。

それ以外の誰がなっても、万人が納得できるものではありますまい。

私は今、その事を心底感じ入っているのであります。


繰り返しますが、我らの勇者イヤースは些かおバカであります。頭の回転は悪くないのですが、その言動が雑というか放胆というか・・・要するにおバカさんなのです。

ですから誰かがそれを補ってやらねばならない。ならば、私がその踏み石となって支えるより他ありますまい。


私はその事を大神様に誓います。

もし、この誓いを破ることあらば雷がこの身を打ち砕きますように!

そして長老ピピン様、この誓いを貫けますよう・・・どうかお導きを!

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邪神『栄光』が使った【爆破】の魔法。このからくりは私いはよく分かる。『傲慢の光翅』を使っているんだ。この翅を使って離れた処に【爆破】の魔法を同時に発動している。こういう使い方をしたら、大勢の敵を簡単に殲滅できるだろう。私が今まで封印してきたやり方だ。



【長老ピピンより諸侯軍筆頭騎士ヴァルカン宛の書簡】

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名誉ある騎士ヴァルカン、

あなたの正しい決意に深い感銘を受けました。

あなたの正しい願いを大神様はよみされるでありましょう。


私はこの件について長老会にかけました。


そこで、

長老会は、あなたの意志を支持することを一致して決議しました。

長老会は、あなたの願いに支援することを一致して決議しました。

長老会は、そのために行動をとることを一致して決議しました。


つまり、勇者イヤースのもとに新たな王国を建てることを、

その新たな王国が、聖ネンジャ・プの申された『神の王国』を目指せるよう教団を挙げて支援することを、

一致して決議いたしました。


その事をお知らせいたします。

あなたにこれからも大神さまの御慈愛がありますように。

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一見するとピピンは、公正に援助をしているように見える。でも、考えようによったら、教団に取り込んだ新王国を実現しようとしているようにも思えてくる・・・おバカなイヤースを利用して。



【勇者イヤースより長老ピピン宛の書簡】

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ふ~死ぬかと思ったぜ。

いや、それで当たり前なんだ。邪神を相手に戦って余裕をかましてなんぞいられるわけないだろう。

なのに・・・あいつら・・・俺がとどめを刺しに地下に潜ると言った時、「これまでの勝利を手放すような事をすべきではない」などと・・・知った風の事をぬかしやがる。

ハァ~?、何?、寝言は寝てから言え!。

7分の勝利?そんなもんは、ネェ~~。8分も、9分も、9分9厘も、ネェ~。

最後に勝つまで、最後の最後まで、勝ったとは言わねぇんだよ。

これはそういう戦いなんだよ。


あいつら、これまでうまくいってたんで日和ってやがったんだ。

だからもう話すことなんかない、無視して潜ってやったぜ。

まあいいさ、これは俺の仕事だ。あの禿神に約束したからな。


邪神『栄光』は、奥の石造りの広間に居た。

どうやら、そこが奴のホームランドらしい。

そこで、傷を癒して新たな魔物を生み出して、魔物軍を再編成しようとしていたんだ。

ミクラタナがそう言ってんだから間違いない。


数はだいぶんと減っていたが、手下の魔物もそこにいた。フンがそいつらを相手してくれたので、俺は邪神とタイマンを張れたわけだ。

長い長い間、打ち合ったサ。何としてもここで奴を仕留めないと、そして奴もあきらめの悪いヤツだったからな。

残念ながらフンは力尽きてヤられちまった。でも、子分の魔物は見事に狩ってくれたわ。

だからおれは何としてもこの邪神を斃さにゃならんかったんだ。

そんな時、天井の一角が崩れ朝日が射しこんできた。

眩しかったよ・・・そして、光と共に矢が降って来たんだ、邪神に向けて。

邪神はその瞬間に注意をひかれて隙を作り、オレはそこを突き、邪神の心臓に剣を突き刺してやった。

ついに奴の心臓に剣を突き立ててやった・・・が、俺も疲れていてつい気が緩んでしまったぜ・・・例の黒い霧が俺の中に入って、いつものように気を失ったが・・・どうやら、そのままその上で寝ちまったらしい。


寝不足で疲れて寝てしまっただけだ、失神したんじゃぁねぇぞ。

おかげで、『栄光の翅』とやらが付いたらしいが。


目が覚めたら3日が経っていたとヨ。大テントの中に寝ていた。

どこでどうしたのかはわからんが、わざわざ俺の寝床まで運んでくれたらしい。

ちょっとフラついたが、まあ起き上がったのサ。腹も減ってたし、便所にもいきたかったからな。

そして周りを見回すと、足元にはでっけぇ酒樽が置いてあったんだ。

蓋を開けて中をのぞくと、死んだ邪神の首が白目をむいて舌を伸ばして浸かっていた。2つともな、邪神は双頭だったからな。その下にはでっけぇ心臓が入っていたな。

邪神の首と心臓を焼酎に漬けてあったんだ・・・。

マムシ酒ならぬ邪神酒ってか・・・まったく、そんな気持ち悪いもん作るなよナッ。

しかし、せっかく作ってくれたんだ、好意を無にはできんだろ?

だから一杯だけ杯に掬って飲んだのよ・・・まずかったよ。生臭くて反吐が出そうだった。邪神も酒に漬かると終わりだな。

ああ!!、フンにも・・・飲ませてやりたかったぜ。


すると大騒ぎになって、「そんなもん飲むな!」だって。

討伐の記念に首と心臓を取ってあるだけだと・・・腐ったらいかんので、焼酎に漬けてあるんだと・・・。

まあいい、勝利の美酒・・・いや生臭くてヒデェ~酒だったがな。


さあ、あともう一匹だ!

それで終わり。

しかし、いったいどこにいるのかねぇ。なんか、知らない?

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