第84話 避難民キャンプ

フェンミル国境爵は、屋敷に行くとすぐにあってくれた。ランディの名前を既に知っていたから、


「あなたの事は精霊巫女エリーセ様から聞いておりますよ。お仲間だとね。

しかし、なぜ精霊巫女はご自身で動かれないのでしょう、正直申しまして意外なのですが。何か理由でもあるのでしょうか。」


と。ランディは返事にちょっと困ってしまった。でも確かにそうなのだ。エリーセは教会と共にいると言った。それは彼女の大き過ぎる力を使うと、後々悪影響を及ぼすであろうから・・・と。後々とは・・・要するに神命を果たすのに差し障りがあるという事ではないか。


「エリーセは精霊巫女ですが、その前に大神様の使徒という立場がありますから。善悪はさておいて、どこかの勢力に一方的に加勢するというのは具合が悪いのではないでしょうか。そもそもこの問題は人が起こしたもので、人が解決すべきもの。神の使徒に裁いてもらう事を期待するのは、いささか安直とは言えませんか。」


こんな聖職者の屁理屈の返答をするのは自分らしくないと思いつつ、かと言って他に答えようもない。幸いにしてフェンミル国境爵は、それ以上の追求はしなかった。そして、


「そういうものですか・・・わかりました。それで、あなたを介して御味方していただける、そう理解して良いのですね。」


そのように念を押す。ランディとしてはそれでいい、だから頷いて見せる。


「それでしたら素直にあなたを信頼して頼るのが良しとすべきでしょうな。

で、ガルマン達ですが、彼らは寄付金を集めに奉加帳を持って国境爵を回っておったのですが、ベルゲン国境爵・・・ご存知ですか?・・・酒の醸造に成功して一番羽振りのいい国境爵なんですが・・・彼が、"金策の件、国境爵をまとめる件については、わしが引き受ける!"と言ってくれたらしく、早々に戻ってきまして、避難民キャンプの立ち上げ・建設やら大活躍していましたよ。今は避難民キャンプにいるはずです。

家人に案内させましょう。」


と、言うことになった。フェンミル家の家人の案内で山に1時間程も入ってゆくと、森の木立が少し開けた谷間にでてきて、そこに避難民キャンプが広がっていた。幅が15m程もある建物が10件ばかり建っている。背丈ほどの高さの土壁が円柱状に立ち、その上には、藁ぶきと言うか茅ぶきと言うか、とにかく雑多な草や木の皮で葺かれた大きな円錐状の屋根が乗っかている。その中央天辺には煙突があって煙がゆったりとたなびいていた。

ガルマンとエルフィンはここのキャンプの世話人をしているとの事。


「おう、ランディ久しぶりだ。よく来てくれた。」


向うからガルマンがやってきて、話しかけてくる。ランディは


「ああ、知らんかったこととは言え、何の手助けもできなくて済まなかった。」


「気にすんな、悪ゥは思っとらんわい。あの時は、わしらも慌てとったからな、こっちにすっ飛んで来て、なんの相談もせんかったからな。

まあ、入れって。」


そう言って、その建物の一つに招いてくれる。

中に入ると、おおきな広間が広がっていて、環状の土壁が外周を取り巻いているだけ。ドワーフの石造円柱集合住宅の粗製と言ったところ。床は土間のままであるが、外周部は床の土が一段盛り上げてあって、そこには藁や細い枯れ枝が敷かれて寝床となっていて、避難民たちが所々で休んでいる。広間の真ん中には、石造りの煙突を兼ねた大黒柱が立っていて、その下はかまどとなっていて、中では焚火が炊かれている。建物の中は至極暖かい。かまどには大きな鍋がかかっていて、いい匂いのする湯気が立ち上がっていた。

ガルマンは鍋の所に行って、木椀にそれを掬って手渡してくれる。


「ここいらの山は、大分冷えるようになってきたからな。あったかいのが何よりだ。」


粥を馳走してくれたのだ。木のしゃもじで口の中に流し込むと、くたくたに煮込まれた菜っ葉のような野菜、柔らかくなった豆、そして・・・玄米がほのかな塩味で仕上げられている。


「米を炊いているのかい、王都ではなかなか手に入らないだろうに。」


田んぼは、テルミス王国の南西部、ランディのふるさとの辺りで見られるだけで、北東部の王都近辺まで来るとまったく見当たらない。


「ああ、これはベルゲンのオヤジ・・・ベルゲン国境爵が俵ごと送ってきおったんじゃい。わしらドワーフにとっては御馳走じゃからのぅ。それだけじゃぁない、ホレっ、見てみい。」


そう言って顎のさす方を見ると、土壁のそばに樽が置いてある・・・これは酒樽だ、ウイスキーの・・・。


「なんだい・・・現物の仕送りかい。しかし飲んだくれている場合じゃないだろう。」


「そんなことぁ~ないわい、金もどっさり送ってきたぞ。それに今回の事で家族を失った者が大勢おる。飲みたくもなるぞ。」


「・・・そうだな。つまらん事を言った・・・謝るよ。」


「気にしとらんから。それより、なんの用で来たんじゃ。避難民の見物なんぞしても面白くもなかろう。手伝いに来たんならちょっと時期おくれじゃぞ。」


確かに、もう一応の落ち着きがみられていて、今更手伝いは不要だろう。この建屋の中が少しガランとしているのは、外に働きに行っている者がもうたくさんいるからだと。


「ああ、用と言うのは、ちょっとばかし際どい話だ。ここでしてもいいのか?」


「構わんよ、よそ者はおらんから。」


「じゃあ言うぞ。

テルミス王国がゴムラを占領したってのはもう聞いているか?」


「ゴムラ・・・、・・・、

なっ、なんじゃと・・・。ゴムラと言えばウェルシの根城じゃねえか。」


「ウェルシの根城?いや、それほどでもないが。いや・・・ウェルシ南部一帯の根城とは言えるか・・・。

そのゴムラ占領だが、俺は今までそこにいたんだよ。それで、ボスのガストを逮捕して、連中の縄張・・・あの一帯の森だな、そこを押えたと言う訳だ。」


「ゴムラ・・・あそこの森をウェルシに盗られたのはもう昔の事だ。俺達からしたら、ウェルシの根城としか言えん・・・それを、お前らがあっさりと取り返しただと。」


「そうじゃないんだ、ボルツ辺境伯の騎士団が1500の兵でもって、ゴムラを占拠したという事だ。ボスのガストは所詮裏の世界の親分だ、兵力はせいぜい300、それも野盗のような連中だから戦って勝てるような相手ではあるまい。おれは、それに協力しただけだ。」


「つっ・・・つまり、王国が動き出したと言う訳か・・・」


「ああ、その通りだ。そもそもエイドラ山地は山と森の民のものだ、王国が手を出すべきことではない。しかし、今回の有様はもう放ってはおかれないだろう、だから動いた。と、ボルツ辺境伯は言っていたな・・・。」


「今回の有様・・・ヴォルカニックの事か・・・?」


「えっ、なんで知っている。」


「当たり前だ。昨今のウェルシの動きの背後にはヴォルカニックがおる事は、みんな知っとるわい。わしらはウェルシと殺り合ってきたんだぞ。捕虜にしたウェルシからそんな話はとうに聞き出しとるわい。」


「ああ、そうかい・・・そんなところだ。ところがだ、俺にしたら王国のやり方は間が抜けている。あいつら、ゴムラの街を押えるだけで満足していやがる。

それではダメだ。

周囲の森も押えないと。そうしないと、森からの奇襲を受けて、せっかくの街も取り返されちまう・・・そうだろう?。」


その時ランディは背後から強い怒気を感じて背筋がゾクッとする。後ろを振り向くと物凄い形相のエルフ、エルフィンが睨みつけていた。そして、その周囲にはいつの間にか避難民たちも集まってきている。


「森は俺たちのものだ・・・普人族が好きなようにしていい場所ではない・・・。」


低くかみ砕くようにゆっくりと話す。ランディはゾクゾクしながら、


「だからここに来たんだろうが。お前達にその森に入ってくれないか頼むために。」


「・・・俺達を使う気か・・・」


「使われるのはイヤか?

自分達だけで山と森を守れるのならそうするがいい。しかし、そうできなかったから、ここに逃げてきたのだろう。

少なくとも、王国は森を盗ろうなどとは言っていない。ウェルシを退ける事を望んでいるだけだ。自分達だけでは、できなかったのだから、こっちの言う事も聞いてみたらどうなんだ。」


「・・・聞かない・・・とは言っていない。」

エルフィンは初っ端からへこまされて、顔をゆがませる。


「わかった。じゃあ、俺の目論見を言うからよく聞いてくれ。王国側の意向は・・・いろいろあるがな・・・とにかくゴムラを確保する事だ。そのために周囲の森を固めて警戒して欲しい・・・と、いったところだ。」


「ああ、わかったわい。で、その《いろいろ》というのは、なんじゃい?」


「ウェルシの背後にいるヴォルカニックだ。あいつらが居るかぎり、背後に頑張っているかぎり、ウェルシが落ち着くことはなかろう。エイドラ山地が荒れると、隣の平地にあるテルミス王国も不穏になる。つまりテルミス王国からしたら、真の脅威はヴォルカニックということだ。エイドラ山地にヴォルカニックが居るかぎり、山と森の民に味方してもらわないと困る・・・ってことさね。」


「ああ、そいつもわかったわい。が・・・じゃな、今のわしらにどうにかせいと言われてもご覧の通りじゃ。」


ガルマンはそう言って、着の身着のままにいる周囲の避難民を見回す。


「もちろん俺だってその事は承知だ。王室に掛け合って金(かね)と武器を出させた。」


それを聞いて、またエルフィンが目と口をとがらせる。


「つまり、俺達を傭い兵として使うつもりか・・・断る。この戦いを普人族のテルミスに売るつもりはない。」


するとガルマンが、


「まあ待てって、エルフィン。もちろん雇われるつもりはない・・・しかしじゃな、武器も金もそれから根拠地となる森も、王国が用意してくれたってんだろう。それを断るのは、愛想が無いというもんじゃろうが。

わしらはわしらの大義のために戦う、王国とは・・・そうだな、テルミス王国との間には、イヤース王の時代の古(いにしえ)の盟約があるだろう・・・それに則って(のっとって)と言う事、それでいいのならわしは乗るぞ。」


「ああ、それで結構だ。その調子で義勇軍を立ち上げたらいい。王国のお偉いさんもそれを望んでいる。

ただ、実際に戦(いくさ)をするときは王国と合わせてくれなきゃ困るがな。勝手に突っ走って、勝手に全滅されたのでは目も当てられん。」


「本格的な戦争となるとこっちは素人だからな、その辺の事は聞いてやるわい。しかしそれでいいんじゃな。」


エルフィンはまだ警戒の色を浮かべながらも、


「・・・わかったよ、ガルマンがそう言うのなら、俺も乗るさ。で、どのくらいの人数が要るんだ。」


「あそこの森を占拠していたガストの手下は300ほどもいた。まあ、この地図を見てくれ。森の中にガストの隠れ家がここと・・・ここと・・・全部で14~5もある。この端から端までは、俺達の足でほぼ2~3日と言ったところだ。」


「それだけの広さの森ならば、自活できる人数は100名弱かな。で、食料の手当は?それさえしてくれるなら300でも500でもいける。」


「食料?う~ん、それはこれから交渉するよ。多分いけると思うがな。とりあえず10人でも手を挙げるヤツがいたら御の字さ。募ってくれないか?」


「ああ、よかろう。

10人?このキャンプだけでも100人近くは集まると思うぞ。数日間待ってくれ。」


こうしてランディ達は避難民キャンプに滞在することとにした。もちろん、ここでも地図作成のための地形の聞き取り調査はおこなう。あちらこちらから逃げて来た者が集まっているのだから情報も集まるはずだ。ここでリリアが大いに活躍してくれる。元々フィンメール族の狩人でもあり、彼女自身が避難民と同様の身の上なのだ、だから話が合う。避難民たちと話している姿は、聞き取り調査と言うよりも身の上話を聞いていると言った方がお似合いだ。


"数日"と言ったが、当日の内に希望者が20名も集まった。で、とりあえず翌日にモルツ侯爵の息のかかった武器屋;アルメット商会に行くことにする。


王都の表通りから一本奥に入ったところに大きな店が立っていた。店と言ってもショウウインドウがあるわけではない、入口はただの事務所のそれと変わりのない愛想のない構えである。騎士団など大口相手に納入している商会なのだろう、バルディにあったような冒険者に小売りをしているあるいは鍛冶屋が自分でやっている武器屋とは雰囲気が全く違う。

表門から入ると、すぐにホールがあり、そこには警備の者が居る。すると、そいつに"何者か"と押しとどめられてしまった。ランディ達と避難民20名の風体をみて、胡乱な連中が店に入ってきたと思われたらしい。するとドワーフとエルフ達が"うるさい、通しやがれ、話が違うぞ"ともみ合いとなってしまい・・・様子が不穏になってしまった。

その騒ぎを聞きつけたのであろう、奥から店員が出てきたので、ランディは慌てて侯爵のくれた指示書を出して、取り次いでくれるように頼む。店員は、指示書にモルツ侯爵の署名を見つけると、今度は飛び上がるように驚いて、また奥にすっ飛んで行く。この後ろ姿をみてホールでのもみ合いは収まったのでそのまま待っていると、成金趣味丸出しの脂ぎったオヤジがやってきて、「会頭のオットマン・アルメットと申します」とえらく下手(したで)に自己紹介する。

こうして一行は店の奥の応接室に案内されたのであるが、総勢25人おり、応接室では少し狭かったようだ。では、"ランディ様たちだけ中へどうぞ、あとの方はお待ちを"と、オットマンは招くが、ランディは、「いや、同志達です、一緒にお願いします」と、譲らない。少し困った顔で眺めていたが、何か気が付いたのか、「これは失礼をば」と、今度は会議室に案内する。ここで、ようやく丸く収まって総勢25名がお茶の接待を受けることとなった。


「侯爵閣下からの指示は昨日には届いておったのですが、もう、これだけ御人数が来られるとは想像もしておりませんで、このような不調法となってしまいました。まずはお許しのほどを。」


と、まずは商人らしく、下手(したで)の挨拶で始まる。


「森と山の民たちはいささか気が立ってはいますが、元々彼らは誇り高き戦士たち。一声かけただけですぐさまこの20名が手を挙げてくれたのです。」


ランディは、エルフやドワーフ達の面目をつぶすことのない様に気が気でないのだが、その事は会頭に十分に伝わって応じてくれているので、内心ホッとしている。流石に侯爵の息のかかった政商ではある。

「では、さっそく武器と防具を見て頂きましょう」と、早々にドワーフとエルフ達は会議室から連れられて出て行った。

部屋には会頭とランディだけが残される。


「ランディさん、侯爵閣下から指示を頂いた時は、数人分の武器をお渡ししたらいいかと気軽に思っていたのですが・・・この様子では、相当な御人数が集まりそうですな。」


「ええ、300~500も集まるとの話も出ましたから。それに、たった今まで避難民だった連中だ。着の身着のままです・・・。」


「ですな・・・武器だけでなく、他の被服や毛布、食器も全部用意する必要がありそうですな・・・。誇り高き戦士というよりは、埃(ほこり)うず高き避難民、と言うべきですかな。」


「元々プライドの高い連中です。今回はウェルシに散々な目にあって、不安と屈辱と怒りが心中で満ちあふれて渦巻いている。その辺は察してやらねば。そうしないと、ついてはきません。」


「いやいや、失礼をば。いずれにせよ500と言えば、ほぼ大隊規模だ。もはや、小さな騎士団レベルの兵站を賄うと言うことになる。ちょっと予想していたのとは違う・・・いやいや、侯爵閣下のご希望・・・義勇軍でしたか、意外と早く実現しそうだと。」


「いえ、まだ可能性の話であり、人数が集まりそうだというだけの話。戦闘部隊として組織を組めるか、それはこれからです。」


「意外と堅い事を言われるので・・・まあ、それはそうとこれからの事、全てうちでお引き受けする様に侯爵閣下から伺っておりますから、なんでも仰っていただいて結構なのですよ。ぜひ忌憚のない処をお聞きしたいものですな。」


「それはありがたい。避難民キャンプでの話をすると、枯れ野原に火をつけた、そんな感じでした、少し怖いくらいのネ。ですから思ったより人が集まる・・・しかし、今度はそれはそれで、食料など補給が問題になってくる。果たして騎士団に頼り切って良いものか・・・いや、当然協力してやっていかないといけないが、彼らは騎士団の命令通りに従うか・・・。《われらはわれらの大義に殉ずる》、そんな事も言っていましたから。」


「その話、さっそく侯爵閣下に報告させていただきますよ。そのうえで、今後の方針を決めましょう。こちらとしても覚悟を決めなくてはいけないようですし・・・。」


こうしてこの日は避難民キャンプに戻る。ま新しい皮鎧を身に着けて、腰に武器をぶら下げたドワーフやエルフ達は、「これで、勝つる!」と、もう戦争に勝ったかのように上機嫌ではしゃいでいる。これまではロクな装備も無く、それこそ狩猟用の弓やナイフとか伐採用の鉈・斧なんかで戦っていたのだから。


この姿をみて・・・いや・・・キャンプに戻る前から、100人の希望者が待っていた。彼らはま新しい装備を身に着けた連中を羨ましそうに眺めながら、口々に、「我らの大義を、古の盟約を、勇者イヤース王の縁(えにし)を」などと、口走っている。ランディ自身がそんな事をブッた覚えはないのだが・・・もはや取り消す事もできない・・・。エルフィンは、ニヤリと少し陰険な笑みを浮かべながら、


「ランディ、覚悟を決めてもらわないと。もう、後戻りはできないよ。」


などと追い詰めてくる。弱ってしまって、PTの他のメンバーの方を頼らんばかりに見ても、視線をサッと避けて、"うちのリーダーは、大丈夫!"だとか"ランディはその道のプロだから"だとか言っている。自分の方にお鉢が回って来るのはイヤなのだ。

ふ~と、重圧にため息をつきながらも、前世で俺がやりたかった戦(いくさ)とはこう言うものだったのではないか、それならばなんの不満もあるまい、腹を括るだけさ・・・そう自分自身に言い聞かした。


翌日、午前中は地図の聞き取り調査に当てた。リリアが頑張っていてくれていて、こちらの方はおおいに捗っている。地図の範囲が、ウェルシ城辺りまで広がり、抜け道・尾根道・獣道、ありとあらゆる細道が書き込まれた。そして、ドワーフやエルフ達の奪われた村の位置も書き込まれていた。彼らにしたら、そこを取り返すのが目的であるから。そしてランディにとっては、そこはウェルシ達の拠点となっているに違いない場所である。


午後になると、アルメット商会の手代と言う若者が面会にやって来て、"モルツ侯爵閣下がもう一度会いたいと言っている、早急に王宮に来るように"と、そう伝える。


「さすがだわ、あの侯爵。動くのが速い・・・。」


王宮の反応の速さはありがたいのはいうまでもない・・・しかし、モルツ侯爵との面会は気が重い。さてと・・・周りを見回しても、PTのメンバーは目を合わせようとしない。そして、


「そうねぇ、王宮にはランディが行けばいいと思うの。私達はこれで結構忙しいのよ・・・」


と、何の仕事もしないでブラブラしてる様にしか見えないアカネが、そう宣う。そして、他のメンバーも概ね同じ意見の様だ。なんと薄情な奴らだと、腹が立ってくる。


「ランディ、正念場なのかい。大変だな。俺達でよければついて行ってもいいよ。」


ランディの憂鬱な表情を見て、エルフィンがそう言ってくれる。ガルマンも「そうすべい」といっている。


いい奴らなのだ・・・涙が出そうになってきた。

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