第28話 メルラン神社

『エイドラの山々・森で悠久の歴史を誇る人々よ。山の民・森の民の方々よ。ヌカイ河の向う岸で何が起こっているかご存知か。

我らがこうして人として生きているのは神の祝福ゆえにである。にもかかわらず、暴虐の王が、”お前は人でなく獣である”と、勝手に邪な判定を下し、多くの人を家畜のごとく鞭打って使っていることをご存知か。

そして、暴虐の王国が我らの天地に攻め来たりて、我らの子女を劫掠し、その家畜・奴隷となさんとしていることをご存知か。

先祖代々の功(いさよし)にあふれる誇り高き人々よ、子々孫々に繋がる自由と誇りのために我らと共に戦いたまえ。 』


新誓書の一節であるが、聖ネンジャ・プが山の民(:ドワーフ)や森の民(:エルフ)達に会盟を求めた話である。

教会の聖職者たちはいう、

「人の人たる由縁は神がそうお決めになったからであり、これは神聖なものであって、たとえ王と言えどもこれに反することは許されない。また、ドワーフやエルフも姿形は違うが同様で、神が同じく人であると定め祝福した人々である。人である資格は能力・血縁・種族にかかわりなく、神が等しく定めたものであり、等しく扱われねばならない。

それ故、この神聖な法を犯すものは、人である全ての種族の敵であり、共に戦って打ち滅ぼさねばならない。

聖ネンジャ・プは、この神の定めた法を犯す暴虐の王を征伐するために、山の民・森の民と共に戦うべく会盟を求めたのである。」

と。

しかし、神が人を人としてどのようにして定めたのか?人はどのようにしてそれを知ったのか?、その証拠はどこにあるのか?それについては語らない。

そして敵は誰であったのか?、それについても、ただ”暴虐の王”であるとしか語らない。


いずれにせよ、会盟が結ばれたのはこのメルラン神社であった。ここは武勇の社としても有名で、騎士達の参拝が多い。

そして、ここには、戦闘用の魔法のグリモワールがいくつか置いてある。まあ、騎士達は脳筋の方(かた)が少なからずおいでであり、グリモワールが役に立たない方(かた)も多いであろう。それでも物は試しということで挑戦するのだそうだが、時には気絶してしまう人も少なくないとの事。

王宮にいたころ、逢引きの寝物語で聞いた話である。


メルラン神社の社は深い森の中にある。

境内にはなんと武闘場があり、祭りの時には木剣を使っての模擬試合:武道大会があり、観覧者でにぎわう。

そういえば、盾にメルラン神社の紋を描いている騎士がいた、彼はこの大会で入賞したとかを自慢して吹聴してた。


しかし、普段はいずこの神社とも同じで、人気(ひとけ)は少なく森の静寂に包まれている。


神官を訪ねようと社務所を覗くと、中で座っていて、果たして巫女さんとお茶をしていたのだった。


「こんにちわ。」

「はーい。」


と、振り向いてこちらを向くと、なんとエルフの宮司に巫女さんであった。向こうもこちらを見て物珍し気な顔である。エルフの神職・エルフの巡礼者、互いにそういうエルフが居るとは思ってもみなかったから。


「まあ、珍しい。こちらに来て一緒にお茶でもいかが?」

今の時期は、やっぱり閑らしい。


この宮司と巫女は、御夫婦なんだそうだ。

挨拶をして、自分の境遇を簡単に伝える。そして、自分の素性・身元を知りたく巡礼に巡っている、イヤリル神社にもいきたいのだと、また自身の能力を鍛えるために各地のグリモワールを訪ねているとも。それから、途中で幽霊に出会い、グリモワールを預かったことも。

巫女さんはこの話を聞くとよほど感心したらしく目に涙を浮かべている。旦那の宮司は腕を組みながら、目をつぶって聞いていたが、いきなりクワッと目をひらいてこちらを睨みつけ、


「では、あなたの本貫(ほんがん)をたどって、盟神探湯(くかたち)で神判を仰ぎましょうや?」

「ひっ!」

・・・・・・

なんか知らないけど、いきなり怖そうなことになってしまった。


と、ビビッていると、巫女さんが、”怖ない怖ない”と、ニコニコしながら手を振っている。普通に祝詞よりも少しグレードを上げたようなものらしい。

その話を聞いていて、宮司さんは少しムッとしたようだけど、”じゃあ、用意してきますからね”、とだけ言って部屋を立って行った。残った巫女さんからいろんな話を聞かされる。


「普人族の王国の神社やのにエルフの神職て、変や思うでしょ?。せやけど、ここはね、もともとからエルフの神社やったの。ここの神社の杜(もり)は森の民エルフの森の南限で、このあたりは普人族とうちら森の民の住む境になってたの。」

そういえば、ここからはエイドラ山地の山々が近くに眺められ、そこまで森が続いている。

「まあ、普人族が増えてきて、うちらエルフは山に引き上げていったんやけどね、あんまりええ土地やないし。せやけど昔は境界を巡って戦(いくさ)もあったのよ。」

そんな話は聞いたことがない、

「いつの話なんです?それ。」

「ネンジャはんの来る前よ。エルフと普人族が険悪な関係やったのをネンジャはんが仲を取り持って、境界も決めはったんよ、これからは仲良うしましょって。

それから、ここには普人族の人も、ようけお参りに来はる様になったというわけなの。」

聖ネンジャ・プが生きたのは、何百年も前の遥か昔のことである。そんな大昔の事をついこの前の事のように言う、エルフの巫女とはこう言うものなのか!

「エルフはここの土地を譲る代わりに普人族は塩を送る、そないな取り決めになってね。以来、お祭りの時にこの神社に塩が奉納されてるのよ。」

いや、騎士団で聞いた話では、武勇を祈願して魂の禊(みそぎ)の証として塩を奉納するしきたりになってたと思うが・・・。

地元の人たちはどう思ってんだろ、まさか土地の借地料として塩を何百年年にもわたって払い続けているとは・・・。

まあ、塩の代金なんて、たかがしれたものだけど。

「そんなことはないんよ、山や森の中では塩はなかなか取れんもんなんやから。海まで降りて行って、塩田で過ごすなんてエルフにとっては、とんでもなく苦痛やし、ありがたいもんなのよ。

あなたはどうなの、海に行ったことある?」

「まだ、海には行ったことがないです。」

と、その時、

「用意がでけたで、ほないこか。」

と、宮司がよびにきた。


祭祀場は石畳の部屋で、中央にかまどがあって大きな釜に沸騰した湯が焚かれている。そこに榊を浸けては、周囲に湯を振りまき、あたりは湯気でもうもうとしている。


「祓いたまえ~清めたまえ~

ここなるエルフ、エリーセは、その記憶を失い、その本貫をうしない、平地をさまよいたる~、

おのが記憶を求め、おのが本貫を求め、さまよいたる~、

大神(おおみかみ)よ、世の全てを見通したる大神よ~、示したまえ~指し示したまえ~」


湯気が一段と濃くなってきた、

”デデーン!”

濃くなった湯気の向うに現れた!・・・のはてっぺん禿げ白髪の爺神であった。


「フハッ!!」

爺神の顕現に驚き、エルフの宮司がのけぞる。

「はは~大神様の御顕現に畏れ仕りまする~」

宮司は直ちにジャンピング土下座で額を石畳にこすりつけている。

「苦しゅうはないぞ~、何なりと申せ~」

爺神も何やら気取っている。

「ここに控えしエルフ、エリーセの本貫を探っておりまする~」

「そこに控えたるエリーセはエルフにあらず~、ハイエルフなり~。我の用に立てんがため、この地に差し遣わしたるものなり~。」

「はは~、如何なる用でありましょうや~」

「そは聞くべきに有らざるなり~詮索は禁忌とせよ~ただ助力に勤むるべきなり~」

「ゲゲーッ・・・畏まりましてでございまする~。」

後ろであっけにとられて呆然としていると

「お前も少しは畏まらんかのう、雰囲気を察したらどうじゃ。」

と爺神がこちらに見て苦言を呈するので、慌てて、正座ですわり、両手を前にそろえる。

「まあええ、イヤリル神社にはここから言付けを伝えてもらえ。それから、ここは古くからのグリモアールがあるから見せてもらうのをわすれるなよ。それにこの宮司はな、なかなかの武術の猛者ぞ、後のために少しでも習うがよい。」

「はは~、では如何なるものを伝授いたせば宜しきや~。」

「エリーセは魔法の巧者なり~、ただ身体の動きは鈍く、身を守るすべも知らざれば~、武技のいずれか宜しきを伝授せよ。」

「ハハ~、では長柄のいずれかを伝えまする~」

ここまで聞くと、”デデーン”と消えてしまった。

あっ、大事なこと忘れてる。私は大声で、

「戻って!まだもう一つあるのです!」

と叫ぶと、また”デデーン”と現れる。

急いで、幽霊と出会い、グリルモアールを預かったことを伝えると

「まあ、その魔法なら毒にはならんじゃろ。ちょっと高度じゃから、読めるヤツはほとんどおらんじゃろうがの。ここの神社に置いといてもらうがええ。」

それだけいうとまた”デデーン”と消えてしまった。


宮司と私は、しばらく伏せたままであったが、もういないのを確かめると、立ちあがって顔をみあわせる。

「おお~びっくりした。まさか、大神(おおみかみ)が御顕現なさるとはおもわなんだわ。こんなん、百年に一回も有るか無いかやで。」

ということはこの数百年に何回かあるというのだろうか。教会に爺神が顕現したという話は聞かない、ずいぶんと依怙贔屓なことである。

「しかし、武術の鍛錬となったら、今日一日では無理やな。」

ということで、この神社にしばらく滞在させてもらうことになったのである。

「まあ、えらいことやわね~」

巫女さんもびっくりしている。が、緊張感は抜けている。

「とりあえず、あんた、宝物庫に案内したげなはれ。わたしはお泊りの用意してますから。」

「まあ、こっちおいで、グリモワール試してみたらええわ。」


宝物庫は、入口に青銅の重々しい扉のついた大きな蔵であった。

中では木の棚に石のグリモワールが横一列に並べてあり、順番に触れて読んでいけるようになっている。

「まずはこれ、”名乗り”や。さあ、読んでみ!」

”我こそは勇士、我が雄姿を観よ、敵よ打ち震えよ、味方よ奮い立て。”

「これはな、敵味方に自分の旗幟を顕すんや。乱戦になったら敵味方わからんようになるやろ、そんなときに使うと相手も自分も敵か味方かはっきりするんや。それから、敵を威圧して味方を勇気づける効果もあるんやで、ちょっとだけやけどな。まあ一種の精神魔法やな。」


「次はこれや、金剛力や」

”我は力の申し子、金剛力のこの身に授かる、我は力の申し子”

「おう、これも読めたんか。よう来はる騎士さんらでこれを読めるのは5人に一人ぐらいやな。瞬間的に力と耐久力を上げる魔法やで。効いているのは1~2秒やから無詠唱でできるようにならんと役に立たへんけどな。打ち込む瞬間や盾で受ける瞬間に気合と共にかけるんや。魔力の消費が少ないから、何べんでも掛けれる。皆さん魔法というより、技のように使こうていやはる。」


「よし、次はこれや。光刃や。」

”光れ、この刃、辟邪の光刃”

「光の刃や。よう切れるけどカミソリみたいに脆い、これだけでは断ち切るのはむつかしい。せやから、刀や槍に纏わせて使うんや。切れ味がグッと上がる。

うちのカミさんは手刀に纏ろわせて使うから怖いんやで~。

しかしあんたなかなかのもんやな。ここまであっさりと来れるとは。」


「ほな、これはどうや。千の手や。」

”磨きを掛けたこの術、練られたるこの技、巧緻を増して、突き抜けよ”

「これも、いけたんか。普通の騎士でここまで読めるヤツはおらんで。これは器用さと敬虔さを増す魔法や。これはいつまでもかかってるけど、魔力を消費し続けるのが難点やな。」


「これは、難しいで、私にもこれは読めなんだ。韋駄天や。」

”時間よ、我は突き抜けたる、時間よ”

「なんと、これもあっさりと読みよった。凄いなあんた。これは言い伝えによると、素早さと知性が上がる魔法や。かけた後、かなり疲れるらしいから、ヒールやキュアーとの併用が必須という事や。」


「次はネンジャはん由来のやつや。」

”鎮まれ、心の波よ、如何なる波も、さかしまに”

「これは反精神魔法やな。戦闘中に精神魔法掛けられたら、一発でやられてまうからな、これで味方を守るんや。範囲魔法やから、敵味方関係ないけどな。

相手の魔法の強さに関係ないから効き目は強力やけど、心に作用するんやなく、魔法をキャンセルするだけや。せやからかかってしまった混乱や恐慌を回復できるわけやないんや。使いどころの難しい魔法やな。」


「これもネンジャはん由来や。」

”熱よ消え去れ、如何なる波も、さかしまに”

「これはすごいで、どんなに熱いもんも一発で冷ましてしまうんや。溶岩かて一気に冷たい石になるという凄い魔法や。もちろん火消しに使うたら抜群やで。

問題はやな、魔法を発動させるのがおそろしく難しいことや。おまけに範囲も広げて使うのがまた難しい。

まあ、ネンジャはんの魔法は魔力の消費がないし、超強力なんやけど、今一つ使いどころがな・・・。」


フムフム、精神魔法のキャンセルと熱のキャンセルである。つまり、精神攻撃の予防ができ、如何なる炎や溶岩もすべて冷まして無害にできる、これは強力な魔法を手に入れた!


「はあ・・・?あんた・・・!一気に、全部読んでしもうたんかいな!

ハイエルフって、凄いな。さすが大神が遣わしはっただけあるわ。」

驚き呆れている宮司に話しかける。

「あの、さっき言いました幽霊のグリモワール・・・。」

「あっ、忘れとったわ。ほなら、御由来を聞かしてんか。」

ということで、幽霊の話を伝え、グリルモワールを手渡した。

この日はこれで終わったのである。


翌日から武闘場で武術の修練を教えてくれる。

「せやな、大神さんの話ではあんたトロいらしいし、しかし、相当な魔法の使い手みたいやからな、得物は何がええかいな。

攻撃は魔法に任せるとして、できるだけ器用に防御するのに具合ええ言うたら棒かな。」

「棒ですか、それ武術なんですか?」

「立派な武術よ。

間合いを上手に扱うようになるにはこれから始めらええねん。

それに棒やったら、どこに持って歩いても誰も咎めんわ、杖や言うたらええんやからな。

うん、棒の練習しなはれ。」

こう言って、身長より少し長い棒を手渡してくれた。エルフの女性である私は170㎝弱の身長であり、180㎝ぐらいの棒、いわゆる6尺棒である。下には金属製の石突が付いている。


いくつかの型を教えてくれる。間合いのある時、無い時、棒を持つ部位は柔軟に変化する。縦に振る、右に振る、左に振る、体(たい)の返し・足の運びもそれぞれに違う。そして突き。最後に大きく振りかぶって石突で叩きふせる。

「ええか、スキをついて敵を打ち倒すにはそれなりに技量がいる。あんたの場合、そこまでせんでええやろ。とにかく身を守ることや。

型に慣れたら、金剛力や光刃を気合と共に込める練習もするんやで、あんたの強みは魔法なんやから。攻撃は魔法をつこうて、魔法の力でやってもうたらええんや。」

「それから、短刀や。これは今でも持ち歩いとるやろ?これも、簡単な型だけ教えとこ。突き詰めてやっていったら、体術の方にも入ってくるさかい、なかなか深いんやで。まあ、そこまでせんでええけどな。」

ナイフを少し大きめにした刃渡り30㎝程の小刀は、この世界ではいつ野犬に襲われるかもしれない旅行者必携の品である。


その日一日は、型を教わり、それを真似る。

いやそこは違うんだとさんざんいじられながら、一日が過ぎて、ようやく夕方になる。筋肉痛で節々が痛い、自分にヒールをかけることになるとは。

「その6尺棒あんたにあげるさかい、ええか、ずっとそばに置いとくんやで。トイレする時もやで!フロ入る時はええけどな、棒が湿ってふやけてしまうからな。飯食うとき・寝る時は壁に立てかけるんや、外に出歩くときも持って歩くんや。そないして日頃からいつもそばに置いとくのが間合いの練習やで。」


次の日は、一人で型の練習である。昼前に宮司が見にきて、

「まあ、ええわ。午後からは金剛身・光刃を掛ける様練習し。」

午後は、言われたとおりに型と魔法を複合して練習する。まあ、一日中練習していると言っても、合間合間に結構別のこともしてんだけどね。お茶とか散歩。もちろん棒を持って。


武闘場で一汗かいたら、適当に休むし、そのあたりを気ままにブラブラともしてみる。

神社の周りは垣根もなく、もう森になっていて、この森はエイドラ山地にそのまま続いているとの事。

その森の少し奥まったところに何か惹かれるものがある。


魔眼・心眼で確かめても、木々の中に魔物が隠れているという事もない。

気を付けて森の中に分け入ってゆくと、そこには苔むした大きな磐座があった。

そしてそれを見つけた時、背中のあちらこちらがギュッと痛む。

”栄光、その誉れが人々を高みにつける。”

そんな声が頭の中で響く。

しばらく呆然としていたが、後ろに誰かが居る気配がする。

振り向くと、てっぺん禿げ白髪の爺神が立っていた。

「傲慢の光翅も覚醒したか。

これで光の翅が使えるようになる。お前は魔法での戦闘にえらく執着しとるが、それにぴったりのスキルじゃよ。

16本の自由に動く翅が使えるようになる。その翅から魔法を発現できるのじゃ。その翅からファイアーボールを打てば、一気に16発撃てるぞ。」

「ファイアーボールはうまく使えないのです。」

「・・・不器用なヤツ・・・。じゃあ、光刃を纏ろわして16本の魔剣として使えばよかろう。」

「おお~、試して見ます。」

「まあ、もっと有効な使い方があるのじゃがナッ。それはおいおい自分で考えてみることじゃな。」

それだけ言うともう消えてしまった。


さっそく光の翅を確かめてみよう。

まず、翅を出してみる。

背中から16本の翅が出た。これは翅と言うよりも帯に近い。それが、背後から空中に出てきてうねうねとうねっている。縺(もつ)れるとマズいなっと思ったが、交差しても縺れない。物質的な存在ではないようだ。

そして、手の様に自由に動くことを確かめる。

全く思い通りに動く。

一本一本が右手左手と同じように動くのである。


”光刃”、この神社で覚えたばかりの魔法だ!

コイツを翅に纏ろわせて、光の剣としてビュンビュン振り回すと、最強ではないか。長さは20mほどある、つまり間合いが20mの16本の剣を自由に振ることができるのだ。

棒なんか練習している場合じゃないだろう。

そこら辺に生えている木の枝を払ってみる。

バサッ、

葉っぱが散った。

・・・・・・。

でも、枝はそのままだった。木の枝は光刃で切るには硬すぎたというのか・・・。

葉っぱしか切れないのか。

・・・使えないな・・・。

光刃は物理的な実体のある剣に纏ろわせて初めて使えるという訳か・・・。

期待を持たせておいて、あっさりと裏切る・・・。

あるいは、そもそも見当違いの方向に期待を煽る・・・。

それが爺神の手口。

無性に腹が立ってきた。

「爺神め!、爺神め!。」

そうつぶやきながら、光刃で目の前のくさはらを払い続ける。

みるみるうちに草刈りがすすみ、あたりの草むらはサッパリとなった。収穫の秋の麦刈りや庭の草むしりのアルバイトなんかには便利かもしれない・・・。

やっぱり、棒の鍛錬を地道に続ける必要があるようだ。

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