7ー3 人が消える森
深く山の奥地に入ってしばらく。
私達は先を進む皐月さんの後を追った。
皐月さんはズンズンと進んでいく。
「皐月さん凄いね」
「うん。迷いがない上に、体力がありすぎる」
皐月さんも私と同じで刀を背負っているにも関わらず、それらを完全に物ともせず舗装もされていない道を進む。
岩肌が見え、木々の根が露わになった凸凹道を進んでいく姿には感銘を受ける。
あれから約一時間。
結果として何も起きてはいない。
それどころか平和すぎる。
「こんな森の中に入っちゃったけど大丈夫なのかな?」
「さあ。でも今は皐月さんについていくしかないよ」
皐月さんは何かあてでもあるのかどんどんと突き進んでいく。
しかしどんどんと山の奥地へと入り込み、このまま迷子になるかそれとも
(それにしても妙だ。さっきから鳥のさえずり一つ聞こえてこない)
私は耳を済ませてみるが、何も聞こえてこないのを不思議に思っていた。
川の音や風の音色はこの際無視して生物の息吹を一切感じてこないのだ。
まるでここには誰もいない。いや誰もいてはいけないそんな気分にさせるほど冷たくて不気味だ。
「ねえルーナちゃん」
「何、蒼」
私は立ち止まり振り返る。
すると蒼はこう返答した。
「さっきから変なの」
「なにが?」
私が首を傾げると、蒼はこう話す。
「さっきからね私の使い魔が」
「ああさっき言ってた。確かエルキィだっけ」
「うん。それでねここは変だって言ってるの!」
強い口調で話す。
エルキィと言うのは蒼の使い魔で確か姿は金魚だったはずだ。
たださっき見せてもらった時以外には外に出していない。それにプクプクと聞き取れない言葉を話していたから、よくわからない。
「如何してここが危険なんだい」
「あのね、ここの雰囲気がその現実のそれと違うんだって。如何言うことかな?」
「現実のものと違う……」
私は考えた。
蒼が感じないのは置いておいて、私も違和感はある。
しかしその類のものをより鮮明に感じることができる天界の使い魔であれば尚のことここが異常な空間であることに変わりない。
つまりはここは表の世界とは根本が違うと言うことか。
(いや、考えすぎか?でももしそうだとしたらここは……)
私が嫌な予感を働かせていると、皐月さんが叫んだ。
「お二人とも、こちらに来てください!」
「皐月さん?」
私達は皐月さんに呼ばれ急遽山の奥に向けて山登りを始めた。
足場は悪い。飛んでもいいのだが、流石にここまで深いと翼がかえって邪魔になる。
だから私も疲れた顔をしている蒼に倣って一緒に登った。
◇◇◇
「はあはあ」
「大丈夫、蒼」
「うん。流石に、魔法少女になったばっかりだと、基礎体力はあんまりなんだね」
「まあ」
少し息は荒い。
それもそのはずかなりのハイペースで登って来た。
山を駆け登るのと、平坦な道を走るのとではメートルは同じでも辛さが違うのだ。
まあかく言う私は息を荒くなどしていなかったが。(自慢ではない)
「蒼はトレーニングしてるの」
「えっ?トレーニング」
「魔法少女の体は普通とは異なる。魔力と呼ばれる生命力を媒介として作り出したものだから魔力が極度に失われるとコアになるって知ってるよね?」
「う、うん」
「本来魔法少女は普通の人よりも何倍も高い身体能力を有するんだけど、どうやら蒼の場合魔力効率を上げていないからそんな風にすぐに疲れてしまうんだと思う」
「だからトレーニング?」
「少なくとも自分の魔力をコントロールできるようになるまでは毎日精神統一とか運動をした方がいい。コントロールできるようになってからも定期的にあわよくば毎日しておくのにこしたことはないよ」
「そ、そっか」
私は簡単に説明した。
そして先行してある皐月さんと合流し、私達は皐月さんに訊ねた。
「どうしたんですか、皐月さん」
「はい。どうやらここは普通の森とは根本から違うようです。見てください、これを」
と言って自分のいる場所を避け、私達にその先の光景を覗かせる。
それを見て私達は固まった。
そして私の想像が現実になったのだと確信した瞬間でもあった。
そこに広がっていたのは森。
しかしそこには蠢くものがあった。
一つの塊。人のような姿をした化け物。もとい妖怪。
つまりここは普通の森ではない。妖気が充満し形成した人を飲み込む森なのだ。
そこにいた一際目立ち、そして何よりも巨大な妖怪こそがこの空間を生成するに至った元凶である。
「ねえルーナちゃん。あれ何かな?」
「妖怪だ」
「妖怪?」
「うん。あいつは……」
私はポツリと一言。
「
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