第31話
新作『オタクな俺がポンコツ美少女JKを助けたら、お互いの家を行き来するような仲になりました』も読んでください!
https://kakuyomu.jp/works/1177354054896310575
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次の日。
朝の特訓のため、俺は五時に起きて玄関で待っていた。
非常に眠たい。あくびを片手で隠しながら、喜多がやってくるのを待っていた。
「先輩」
控えめな笑顔とともに小首をわずかに傾げた喜多が、にこりと微笑んだ。
彼女はジャージに身を包んでいる。
控えめな彼女のボディラインが浮き上がるようになっている。
朝から良いものを見た。
眼福眼福、とかなんとか心の中で念じながら俺は軽く体を伸ばした。
「それじゃあ、一時間くらい軽めに運動するか?」
「そうですね。まずは準備体操と行きましょうか」
そうだな。
いきなり運動したら、体が驚く。
喜多とともに軽く準備体操をして、それから走り出した。
といっても、本気で走るというかは本当に軽いジョギングだ。
そうして、三十分ほどかけて体を温めたあと、近くの公園に移動する。
「短距離の練習もしておきますか?」
「だな。……といっても、久しぶりに全力で走るな」
「私もです。足つらないように、気を付けてくださいね」
「さすがにそこまで落ちちゃいないぜ……よし」
公園の端から端。おおよその場所で線をひいた。
それほど長い公園ではないので、50mもなさそうだ。
まずは流し気味に走る。
それを五本ほどやったあと、全力で走る。
その後は、軽く走るのと全力で走るのを交互に繰り返し、体を調整していく。
「先輩、まだまだ全然陸上できるくらい走れているじゃないですか」
「……いや、頭の感覚と実際の体の動きに結構誤差があるんだよ。もうちょっと、早く走れると思っていたんだけどな」
「あれですか? 子どもの運動会で昔のように走ろうとして転ぶ人みたいなものですか?」
「……喜多の親がそうだったのか?」
「……恥ずかしいことに」
その時の光景でも思い出しているのか、喜多は頬を赤く染めていた。
……俺は自分の足へと視線をいぇる。
「安心しろ。俺の父親もそうだったんだ」
親御さんが参加するリレーで、子どもにいいところを見せようとしたのか、俺の父親は派手にすっころび、医者に行く羽目になったのだ……。
「……それは別に安心できることでもないですよね」
お互いに苦笑する。
それにしても、俺の親父も……こんな感覚だったのかもしれない。
なんというか、力が出し切れない。
今の表現、中二病みたいなので口には出せないな。
「とりあえず、感覚を戻していかないとですね」
「そうだな。頑張るか……」
「はい、そうですね」
……クラスのためにもな。
押し付けられたとはいえ、なってしまった以上足を引っ張るわけにはいかないからな。
〇
六時頃まで走りこんだあと、家に戻った。
シャワーで汗を流したあと、朝食を食べて家を出た。
「先輩、さっき振りです」
別れ際。喜多と一緒に登校しないかと聞かれていた。
もちろん、俺に断る理由はなかった。
というのも昨日太郎から連絡が来ていたが、宿題を机の引き出しに忘れてしまったので、明日は一緒に通えないと聞いていたからだ。
そんなこんなで喜多とともに歩いていく。この注目される感覚は中々慣れないな。
「……先輩、注目されていますね」
「まあ、喜多と一緒だからな」
「私……というよりも、先輩のほうですよ」
俺が?
「どういうことだ?」
「……だって、先輩。一年生の間で話題になっているんですよ?」
「へ、変な話題じゃないだろうな?」
「大丈夫ですよ。凄いかっこいい先輩がいるって……」
「そ、そうなんだな……」
まさか、そんな評価を受けるとは思っていなかったな。
悪い気はしないな。
「私も良く聞かれるんです。つきあっているの? って」
「……まさか、嘘はついてないよな?」
「もちろんですよ。でも、私が狙っている先輩、とは伝えちゃってます」
恥ずかしそうに顔をうつ向かせる。
……なるほどな。
もしかしたら、そのおかげで告白とかされずに済んでいるのかもしれない。
基本的に、断るからな。
相手の辛そうな顔とみるのはできれば避けたかった。
そんなことを考えて歩いている時だった。……前に陽菜を見つけた。
一人で歩いていた彼女の表情までは見えない。
そんな陽菜が校門近くについたところで、
「おはよ、陽菜ちゃん」
クラスメートに声をかけられていた。
「おはよ!」
……お、おお! 陽菜が友達みたいな子に挨拶をしている!
その後、二人で学校へと消えていく姿を見て、俺は感動していた。
それはもう、親鳥がひな鳥の飛び立つ瞬間を見たかのごとくだ。感情という波に、俺の心が流されていた。
……もう、俺の手助けがなくても生きていけるのではないだろうか?
成長したな陽菜……。あとは、それが今後も継続できるかどうか。
そして、俺に対しての絡みが完全になくなれば、晴れて約束達成ということになるだろう。
そんな風に思っていると、喜多が俺の左手をぎゅっと握ってきた。
「……喜多? どうした?」
じっと、喜多を見る。
いきなり手を掴まれたので何事かと思っていたら、彼女がぼそりといった。
「……そんなに有坂先輩が気になるんですか?」
……これは、嫉妬という奴か?
……というか、また変な誤解を与えてしまった。
「い、いやそんなことはない。まったくないからな!」
「……そうなんですか?」
「あ、ああ」
どこか訝しむような喜多の視線に、俺は慌てて返した。
……危ないところだったな。
何とか、誤魔化せたようだ。
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