第肆拾捌話
ダゴンが天城と融合しようとしているところに、魚雷艇の雷撃と機関砲が叩き込まれていく!融合しようとしたダゴンには油断があったのかもしれない。油断駄目。邪神も油断は命取りではないか。
「大澤中佐!戻ってきやがったのか!」
「当たり前だ!天城を奪われてたまるものか!」
まさかの大澤中佐である。やはり海のことは海さんに任せておくべきだな。松原大佐も大概だが、こいつもどうしてなかなかやるじゃないか。ちょっと見直した。
「それよりだ!奴が回復していく!魚雷もそんなに沢山あるわけではない!わかるか警官!」
「お!おう!どうすればいい!?」
「さっさとそいつぶち殺せ!残念だが我らではとどめは刺せないんだろ!?」
「そうだ!」
先程までとは違って、ダゴンのあちこちは吹き飛び、再生はしているというもののあちこちが吹き飛び血も流れているように見える。こうなったら、奴の弱点と思しきところを片っ端からぶった斬る!海水は若干冷たかろうが、軍の人間も命張っているのよくわかったんだ、俺も気合入れていくぞ。
「魔剣!行くぞ!」
『えっ、行くのか?』
「行くに決まってんだろ!なに言ってんだ斬るぞダゴン!」
『錆びる錆びる錆びる錆びる!』
うるさいぞ魔剣!あとできちんと水で拭いて油引いておけば錆びるわけねぇだろ!
「海水で錆びるっていうが魔剣」
『普通に錆びるぞ』
「人間の血にも水分とか塩分含まれてるだろうが」
『うっ』
「整備すれば問題ないだろうが整備すれば!」
『あとでちゃんと整備しろよ!』
「生きて帰ったらな!」
ちょ、待てよ!という魔剣の叫びを無視しつつ、俺は天城と融合しつつも大量の血と体液を流しながら暴れ狂うダゴンに飛びかかって行く。ダゴンが触手を俺に叩きつけようとするが、それこそ狙い目だ!
「足場を作ってくれて、ありがと、よっ!と!!」
振り下ろしてくる触手をかわしたあと、その上に飛びのれば足場になるじゃないか。怒りに任せて暴れ狂うんじゃ、隙も大きくなるだろが。隙があるならつけ込めるというものだろう。足場も隙もある、これはもう斬るしかない。
「星辰一刀流!零縮!!」
一瞬で次の振り下ろした触手に飛び移り、そこから一気に触手を斬り落とす。怒りに任せてさらに暴れ狂う狂乱のダゴンの上を、飛び移り続けて触手を斬り落とす。
「零縮!零縮!零縮ぅ!!零縮!八艘飛びぃ!!!」
『義経はさすがに知らんぞ。それに船じゃなくて触手飛び移ってるし』
「……冷静になるなよ」
魔剣の奴はのりが悪いぞ。海水が嫌いなのはわかるが、こっちとしてはさっさとこいつ始末しないと、こいつが兵器と化して襲ってくるという惨事が起きるわけだ。魔剣の都合は聞いていられない。
「あの魚雷で出来た穴に突っ込むぞ!」
『あのドロドロの中か……』
「いいから行くぞ!」
さらに暴れ狂うダゴンの上を、胴体に接近するため飛び移り続ける。大澤中佐がぶち込んでくれた魚雷、有効に活用させてもらう。
「うおおおおぉぉぉぉ!!」
『やめろおおおお!!!』
「おおおおぉぉぉぉ!!……ってあれ?」
飛びこんだ穴は想像していたよりもはるかに大きかった。これはちょっと斬るのも一苦労なので、もう奥義を使うしかない。使うしかないんだが……奴がまた異界に逃げ込んだら取り逃すことになる。
「取り逃さないようにするならば……冥府の果てまで追い詰めるしかないな」
『冥府?そんなところに行けるか人間が?』
「……行ける。俺たちなら」
『錆びるよりは冥府の方がましか。いいだろう!剣禅!一如!』
「星辰!一刀流うううぅぅぅ!!!」
「『無 神 喪 閃 !』」
最大の威力で放つ無神喪閃の刃が、異界ごと空間を斬り裂く。その刃は無数の空間から到達し、そして!
「無神喪閃・阿頼耶識!!」
その刃の一撃は、異界に逃げ込むことすら許さない空間の刃となってダゴンを内側から斬り刻む!!最早避けることは能わぬ一撃だ。斬り刻まれたダゴンは絶叫を上げながら絶命してゆく。それと同時に気がついた。……ここ、海水入りドックの中だ。
「うわぁぁぁぁぁ!!!海水!海水が!」
『錆びる錆びる錆びるううう!!!』
なんとか木材にしがみつくが、冷たい冷たい冷たい冷たいぃ!!!海水が冷たすぎて死ぬ。このままだと死ぬ!早く陸に上がらないと俺が死ぬ。
『急いで泳げ!死ぬ気で泳げ!死んでも泳げ!!』
「死んでも泳げって無茶苦茶言いやがる畜生おおおお!!」
死ぬ気で泳ぐ必要は確かにある。この冷たさだと長くはもたない。死ぬ。ドックだから横方向に泳げばそう長く泳ぐ必要はない。木材につかまっているし、何とかなる。そう思っていた時が俺にもあった。
真っ暗だ!見えない!どっちに行けばいいんだ!?闇雲に泳いでも死ぬぞこれ!……水流が!?どうやらドックから流れ出した水が、海の外に俺を押し出そうとしている。まずいこれは完全に死ぬ!
「あ、あ、あ、あ……」
『お、終わった……』
流れが強すぎて逆らうこともできない。崩れゆくダゴンと天城の残骸の中、水流に押し流され、ただ俺たちは流されて行く。もう駄目だ、そう思った時。
「警官!掴まれ!」
「大澤中佐!?」
「……よくやったな」
「えっ?」
「なんでもない!ほら、行くぞ」
俺は大澤中佐に回収され、魚雷艇に何とか引きずり上げられた。寒いが、それでも水の中に比べたらはるかにましである。
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