第拾壱話
「信奉者のキョテンがあった……しかも山のナカにですか……」
「そうなんだ。ところでトーラス、信奉者ってなんでこの子たち攫ったんだよ」
「普通の信奉者はソンなことはしないんですが、ヘンですね」
「あの、なんで変なんですか?」
「それはですね、信奉者はキョウダン、つまり彼らのショゾクしている集団に迷惑をかけないというルール……キマりがあるんです」
霧島さんの質問にトーラスが答える。それが本当だとすると確かに変だな。
「迷惑をかけないっていうけど、人を攫ってるのは私たちに迷惑をかけてるんであって、教団にではないでしょ?」
「それが、そうでもナイのです」
「どういうこと?」
由衣に対してトーラスは人差し指を振る。なんだその振る舞い。
「今回、こうやってヒトさらいがバレてしまいました。当然、警察はシラべます」
「当たり前だろ、そんな犯罪行為」
「当然キョウダンを捜査します。……キョウダン的にはいいメイワクですね」
なるほど。確かに普通に信奉者がそういうルールで生きているんであれば、教団に迷惑をかけないようこそこそやるよな。
「信奉者はフツウ、こっそりナカマを増やすのです。それが今回、何者かのナエドコにしようとしていたのデスよね」
「そういってはいたな。意味が分からんが」
人間以外が人間を孕ませようとするとか、頭おかしいんじゃねぇの?てめえらどうしで繁殖してろってんだ。
「狙いはワカりませんが、普通の信奉者ではないナニものかが悪いことをシテいそうです」
「そいつら見つけ次第捕まえて吐かせたいところだないろいろ」
『そんな連中なら、斬ってよかろう?』
「斬るな斬るな、相手人間」
『くそっ』
アホの魔剣は放置するとして、実際これからもこういう事件があちこちで起きるんだろうか。対応しきれるのか?
「しかしトーラス、早めに根本の原因見つけて叩けないと、あちこちでこういう事件が起きることになるな」
「そうです、そのタメにもムミョーには早くヨクなってもらう必要がアリまーす。栄養もタクサン必要です」
だからって鳥の餌はねぇよ鳥の餌は!せめて牛乳だけにしろ牛乳だけに!
「ところで、他のところで似たような事件や、行方不明の女の子とかっていないんですか?」
「今のトコロはわかりません……」
霧島さんのいうように、他のところでやらかしててくれればこっちも対処しに行けるのだがな。被害者がいるのは大問題なので、勝手に死んでくれると一番なので全員死んでくれないかな。
「んで、これからどうすんだよトーラスは」
「信奉者たちがお二人をウバいにくるかもしれません。神戸の星御門さんのところでもあるテイドはアンシンですが……もっとアンシンなところでホゴさせていただけないかとオモうのですが」
「大丈夫なのか?」
「トーキョーの真ん中でコトを起こすほどバカではないと思います」
であってほしいんだがな。
「お二人はドウですか?」
「どうっていわれても……家族のところに帰りたいんだけど私は」
「わたしは……帰れる家が……」
「……那月……ごめん」
霧島さんもか……信奉者も邪神も始末しなければいけない理由が、一つ増えた。始末したい、したいが体はまだ治ってないしどこにいるかも見当もつかぬ。
「すぐにキメなくてもオーケーです。とはいえ、またネラわれる可能性はアリます」
「確かにな。俺がどうこう言うことじゃないと思うが」
「そしてムミョー、あなた、もっと強くなりたいってホントウですか?」
「それは本当だ。危うく殺されるところだった。俺は……そんなに強くない」
「オー……ツヨくない、ですか……」
トーラスが額に手をやる。トーラスからしたら俺は怪物を退治できる力の持ち主に見えたろうが、俺からしたらあいつらとの力の差は歴然である。
「でもムミョー、強くなるといいマシたが、どうやって?」
そういわれると確かにそうだな。うーん。全くいい考えは浮かばん。持っていた魔剣がなんか言い出した。
『なに?強くなりたい?ならまずは体を鍛えろ。動かせ!』
「体を鍛えろ?そんなもんなのか?」
「こうやってみると一人でぶつぶつ言ってるようにしか見えないわね」
「わたしは触れば伝わりますけど」
それは自覚あるから言ってほしくなかったな!実際変な人にしか見えないから困るんだよ!霧島さんのおかげでまだましだけど!!
「というわけで体を鍛えたい」
「体を鍛える……」
「といってもあんたあちこち折れてるんでしょ?無理じゃない?」
確かに折れて……いや、ひび入ってるんだよなあちこちの骨が。折れたのはもうくっつけた(魔剣が)。
『あと三日もすれば完治する。さっさと鍛えろ』
「すごい、三日で完治するんですか!?」
「ちょっとまて三日ってどういうことだ、全治三か月って言われたのに」
「あんたほんとに人間!?」
由衣の暴言にはムカッと来るけど、全治三か月の骨折が三日で治るって言われたら、そりゃ人間やめてるといわれても不思議はない。
『そこでだ、お前明後日くらいからちょっと走れ』
「まだ完治してねぇのにか!?」
『それくらいから鍛えろ。時間が惜しい』
病院にもいさせないつもりか?待て待て待て待て!
「いいかげんにしてくれ!強くなりたいとは言ったがそこまで必要なのか!?」
『甘ったれるな、強くなりたいならそのくらい必要だ』
「お前、実は何かを斬りたくてしょうがないだけだろ!!」
『……そんなことはないぞ、あと三日くらいは我慢はできる!』
「我慢できて偉いです」
『』
霧島さん、その言い方は残酷すぎないか?魔剣黙ってしまったぞおい。
「刀さんが我慢できるなら三日後からでいいのでは?」
『ぐうの音も出ない』
「やだこの子強い」
「オーケー、それなら三日後にいろいろキメるとしましょう」
そういうことになった。
次の日の朝、俺はベットの上に座っていた。
本当は全身打撲にあちこち骨折で全治三か月だ、寝てて普通なのだ。修行とかできない。できてたまるか。それなのに魔剣が、
『身体を鍛える修行ができなくても、できる修行があるだろう』
とか言い出したのが運の尽きだった。あのなぁ。俺痛いんだぞ。折れてるんだぞ。全身。なんで折れてるのに精神統一しないといけないんだ。あ、今は折れてはいないが。痛いのは変わりないし精神統一とかこれでできたらすごいだろ。
……でもやる。痛い痛い痛いっ!!!やっぱりできるかぁ!全身激痛に襲われながら精神統一するとか、無理だろ。
「痛い痛い痛いっ!!!無理!精神統一とか無理!!」
『その程度の状態で精神統一できないなら、死ぬぞ』
「死ぬ?」
『あの日比谷以上の奴が確実に存在するのだろう、信奉者の中には。そして邪神そのものも』
「だからって今やる必要あるのか?」
『特にない』
ないのかよ!思わずずっこけた。
『ないが、このような状況で精神統一できるのなら、いかなるときにも技が繰りだせるようになる』
「そういうものか」
『なのでやれ』
再び精神を統一しようとする。いや痛いんですけど。痛みに耐えてよく頑張ったとかだれか言ってほしい。
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