第弐話
俺は檻の中に閉じ込められている。
どうしてこうなったかは言うまでもなくあの魔剣と化け物のせいなのだが、そもそも論だがあの化け物がいなければ、俺が捕まるようなことは多分きっとおそらくなかった。
なかった。
……なかった。だんだん自信が持てなくなってきた。
魔剣が化け物を斬らないかわりに『人間を!人間を斬らせろ!』とか発狂しだすの目に見えている。
檻の中だが、暗いし狭いしなんだか寒いし、おまけになんだか臭い。
魔剣はというと、当然のごとく取り上げられている。
そのまま処分してもらえると助かるんだが。それにしても、今日の夜はもうここで寝るしかないのか。腹が減って仕方がない。ハラがへッて……タベ……タイ……
……寝る。
さすがに明日になったら留置しているとはいえ食い物くらいよこすだろう。でないと暴れたくなる。
そう思って横になってじっと寝ているとだ。
警察署内だろうか、何やらどったんばったん大騒ぎしている音が聞こえてきた。うるせぇ!寝られないだろが!あまりにうるさいので怒鳴りつけてやろうとすると。
「斬る……斬る……斬る……」
どっかでみた魔剣を警官が握りしめ、斬るとかぶつぶつ言いながら、魔剣を振り回しとるじゃないか!当然周囲の警官はサーベルを片手に相対しているが、何人かのサーベルはもののみごとにへし折られて、いやへし斬られている。
「うっわ……」
幸いにしてけが人とかはまだいなさそうではあるが、この状況だといつ死人が出てもおかしくない。でもやだぞあんな状況のところに突っ込むの。大体俺素手で、しかも手錠掛けられてるし、おまけに相手魔剣だし。そもそも檻の中だし。
……檻の中だからそもそもあいつ入ってこれないな。
そう思うとまぁいいか、そう思えてきた。檻の中は逆に安全だ。最悪
かといってあいつに暴れられると寝てもいられないんだよな。どっか行ってくれたらいいんだが、そんなことを考えていると。
鈍い音がした。
……檻を攻撃し始めやがった。警官たちが遠巻きにしているせいで、一番近い人間が俺になったのか?ふざけんな。さすがに鉄格子は斬れないよな?な?空を斬る音がする。まさかと思うけど……
「斬る……斬る……斬る……」
こら警官、一般市民に刃を向けるんじゃないというか
「檻が斬れてるんですけどぉ!」
鉄格子って斬れるんだ刀で。勉強になったね、じゃなくてだな!ここももはや安全じゃなくなった。普通に危険だ。
「斬るぅ!!!」
鉄格子が一撃のもとに何本も斬れてしまった。巻き藁や竹じゃねぇんだぞ!これそもそも市民の税金でできてるだろ!破壊活動やめろ!それなのにさらに無慈悲な一撃。鉄格子が外から破壊されるってあるんだな。
「うわバカやめろこっちくんじゃねぇ!」
「斬るううううううぅぅぅぅぅ!!!」
もう駄目だこの警官、斬ることしか考えられない斬撃狂人じゃねぇか!思わず手錠を前に突き出す。あ、手錠斬れた。一歩間違うと腕斬れてたけどな!
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そりゃ逃げるだろ逃げるしかないだろこの状況!思わず遠巻きに物陰に隠れて見ている警官に助けを求める。
「おまわりさん!助けてぇ!」
「俺たちだって助けたいけど!近寄れないんだ!!」
そりゃそうだな、鉄格子斬るような刀だしな。気持ちはわかる。分かるけどこのままだと俺が斬られて死んでしまう。拳銃とかないの?確かどこかの警察では装備してたって新聞にあったけど。どんどん斬れる鉄格子。こんな状況になったら誰でもこう叫ぶ。
「死にたくない死にたくない死にたくない!!」
「斬るうううぅぅぅぅぅ!!!」
鉄格子がまた斬れる。この魔剣なんで折れないんだろうな!斬れすぎぃ!!こうなったら仕方ない、おまわりさんには悪いけどやらなきゃやられる!
「必殺の!飛び道具!鉄格子の破片っ!!!」
斬れた鉄格子を投げつける。とにかく投げる!当たろうが当たるまいが知ったことか!魔剣が飛んでくる鉄格子の破片をさらに斬る。魔剣にも程がある。
「そして!飛び道具第二弾!鉄格子の塊!!うおおおおおおお!!!」
火事場の馬鹿力って言うのは本当にあるらしい。
鉄格子の大きい破片を複数まとめて持ち上げ、投げつけてやる。腰痛い。
「斬るううううううぅぅぅぅぅ!!!……うっ」
どうやら魔剣の力が体の限界を超えてしまったらしい。魔剣を持った警官の動きが止まった瞬間。
ゴン。
俺が投げつけた鉄格子が警官の頭に直撃し、そのまま警官はぶっ倒れてしまった。……生きてるかな?とりあえずそこらへんに転がっていた鉛筆で突っついてみた。僅かにぴくぴくと動いているので多分生きている。よかった。
とりあえず警官から魔剣を取り上げる。魔剣に文句を言うしかない。
「お前ふざけんなよ、死ぬかと思ったぞ」
『こっちだってここまで暴走するとは思わなかった。こんなの初めてだ』
そりゃちょっとだけ悪い。不慮の事故ってやつだな。相性の問題はあるか。警官たちが俺のそばに寄ってきた。
「大丈夫か?」
「……何とか大丈夫ですが、この刀俺以外が触ると危ないんで触らないでもらえますか」
「……どうする?」
「実際この惨状みると、危ない代物だとしか言えないなこれは」
他の警官がこうならない保証はかけらもない。だとすると、とりあえず俺が持っておくしかないのかこの危険物。折らねば(使命感)。
「わかった。移動させるときはお前に頼む」
どうやら警官の中の一番偉いさん?のような人がそう言ってきた。くそ、魔剣からは逃げられないのか。
「はい。……いつかへし折る」
『折られてたまるか。まだ斬りたいものが山ほどあるのに』
何を斬る気だ何を。
腹……減ったなぁ……
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