覚悟 佐藤ういろう


 1年前


「ういろう。お前らの代は自由過ぎる。円卓としてまとまりやがれ」

 八橋が喝を入れる。

「八橋先輩は偉そうなんですよ。貴方の能力はパイロキネシスと聞きました。私より恐らく強力な能力なのに、私より全然事件を解決してないじゃないですか。私は八橋先輩よりこの街を良くしてます。もういいですか。パトロール行くので。行こう、もち、ホームズ」

「はいにゃ」

「はい。はーい。ちょっと待ってね。すぐ追いつくから」

「八橋先輩。ういろうは警察官の娘です。あの子の強すぎる正義感はそうそう変わりませんよ」

 ホームズは八橋に耳打ちする。

「分かったぜ」


「宰領の生徒が次々ナイフで刺されてる。刺し傷の深さはまちまちで、恐らく相手は愉快犯だ」

 ホームズは言う。

「やっぱり被害者の記憶には残っていなかったにゃ」

「じゃあホームズの能力を使うしか無いわね」

「はぁーこれ疲れるんだけど。まぁいっか。犯人の情報も分からないからね。完全捜査ハローシャーロック。事件現場にいつもあった足跡がこの道の先へ進んでいる。一つ目の角を右だ。相当新しい物だよ。相手は正体不明の能力者だ。任せたよ、ういろう」

「分かりました」

 ういろうはホームズに言われた通りの道に行く。



「貴方ですね。犯人は」

 暗い道の先には影ではっきりと顔は見えないがそこに男がいた。

「へへへ、見つかっちゃったぁ」

 男はにやけて言った。

「速攻蹴りをつけます。影針修羅えいしんしゅら

 ういろうは男の下にある影をトゲに変え、男の足を攻撃する。

「へへへ、やっぱりだぁ。君とは会うと思ってたんだぁ。相性がぁ」

 その男はういろうの後ろ側にナイフを持って立っていた。


(裏を取られた。隙はなかったはずなのに何で?)


 カキーン


 ういろうは手を鞭のようにして、振り返ると同時に相手のナイフを弾く。


「やるねぇ。興奮するよぉ。やっぱり相性抜群だぁ」

「チェックメイトです。影針修羅」

 再び男の影を針に変える。

「説明遅れてごめぇんねぇ。俺の能力は影に乗り移る能力なんだぁ。いいだろぉ。相性」

 犯人の男はういろうの顔を後ろからなめる。


 ベロッ


「ごめん、舌がつい出ちゃったよ」


 バスッ


 ういろうは鋭い蹴りを入れる。犯人はういろうの足の下の影に入り込む。


「そんなんじゃパンツ丸見えだよ。白パンかぁ。いいねえ。一番好きな色だ。やっぱり相性抜群だぁ。一生一緒にいられるだろぉ」

「私は貴方を倒します」

「お前の能力は影の変形だ。お前に倒せるのかなぁ」

 ういろうはほっぺたを奥歯で噛む。

「最高だねぇ。その目。でも、思ってたより興奮しないやぁ。そうだぁ、差しちゃおっかなぁ。取り敢えず一本だけ、手加減するからさぁ。ほらあーげる」

 犯人の男はういろうの肩にナイフを刺す。


 グサッ


「凄いねぇ。肩から血を出しながらもそんなに頑張るなんて感動しちゃうよ」

「ういろう。大丈夫か」

 八橋が駆け寄る。

「先輩。来ちゃダメッ」


(へへへ、こいつ殺したらういろうちゃんはどんな顔するんだろう)


「ほーらよ」 

 犯人は八橋にナイフを投げる。


金炎フラムドール

 八橋は眩い金の炎を体に纏う。道からは影が無くなり、ナイフは溶け、犯人に姿が影から現れる。

「どう言う事だ?何で俺の姿がぁ?ナイフが溶けたぁ?なんだよぉ。お前」

「円卓ってには記憶を見る能力者が居やがる。テメェの能力被害者の記憶にしっかり移ってやがった。一瞬だったから最初はそいつも認識できなかったらしいがな」

「そう言う事じゃねぇ。何でナイフが溶けたんだぁ。それに俺は隠れてたはずだぁ。何故俺の姿が現れたぁ?」

「見て分かんなかったのかよ。金に輝く炎を纏ったんだぜ。それで全部謎は解けやがるだろ。地獄の果てで反省しやがれ」

 八橋は男を手刀で気絶させ、運ぶ。


「ありがとうございました」

「お前はもうちょっと周りを見やがれ。これはアドバイスじゃねぇ。命令だぜ」

「分かったからっ‼︎サッサっと行ってよっ‼︎私はもちとホームズの所へ行くから」

「勝手にしやがれ」

「そこは止めるのが男でしょ。ったく」

 ういろうは呟く。


「ういろう肩大丈夫にゃ?」

「しっかり止血したから大丈夫だよ」

 ういろうは肩に能力で作った影の布を着けた。

「僕はちゃんと止血した方が良いと思うけど」

「そんなの分かってる」

「ういろう顔が赤い」 「顔が赤いにゃ」

「もちも同じ事思ってたのか」

「早く病院に行った方が良いにゃ」

「病院じゃ治らないわよ」

 ういろうが言う。

「ういろうがおかしくなった」「おかしくなったにゃ」

「おかしくなってません。あと明日からは私たちちゃんと円卓会議出ますから」

「ういろうが言うなら」「文句は無いにゃ」


 ◆◆◆


 次の日の円卓


「八橋先輩?」

 八橋は円卓会議が終わった後ういろうに近づいた。

「もうじき三銃士での活動がある。三銃士の活動は命がけだぜ。能力を使っても生き残れるかは分からねぇ。三銃士では常に冷静な判断をしやがれ。俺と先輩はそれが苦手だぜ。だから、人一倍冷静に動いてくれ。お前ならそれができるはずだぜ」


(何で私を気付かう言葉が無いんですか。まぁ良いです。けど、八橋先輩には恩がありますし、それに、、、)


「分かりました」



「私はあの時から、八橋先輩について行くって決めたから、だからお願いです。クロノス。力を貸して」

 ういろうは金の懐中時計に想いを馳せる。

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