プラネタリウム 〜I wish I could〜
「大河君。プラネタリウムに行こう」
金髪ポニーテールの少女杏ら蕨を誘う。
「分かった」
そう返答し、2人は家へ帰った。
◆◆◆
翌日2人はポセアリウスにあるプラネタリウムへ向かった。恐ろしく2人は静かだった。それはこの街の宿命を知ってしまったからだ。2人の歩幅はひどく狭かった。長い長い静寂を経て2人はプラネタリウムにたどり着いた。客は2人を除いて1人も居なかった。
スーツを着た年老いた男に入場料を払ってドーム場の建物に入る。赤い椅子に腰をかけると辺りが暗くなり椅子が倒れ、装置が図々しい音を鳴らして起動する。真っ暗闇に点々と光る偽物の星々は現実の物と遜色がない程正確で麗しかった。
「ねぇ、大河君」
正座毎に結ばれて行く星々の線を気にする事なく杏が蕨に呟く様に語りかける。
「なに?」
蕨は優しく杏に聞き返した。暫く、杏は黙った。鷲座の話をした辺りで杏は口を開いた。
「無数の星々が空を埋め尽くすのはとても綺麗で、とても神秘的で、とても芸術的で、いっつも自分を認めてくれる気がするの」
プラネタリウムは星雲とかの解説を始めた。
「好きなんだね。星」
蕨はまた優しく返した。
「だから、大河君に来てほしかったんだ。この星々みたいに大河君の決断した事を私を含め、誰ももう否定しない」
杏は強い決意を胸にしっかりと、しっかりと言っていった。
「その変わり一つだけ約束して欲しいの」
杏は小さな子供を諭すかの様に言った。
「約束?」
蕨は聞き返した。もう解説の声は2人には一切入っていなかった。機械の作り出した明瞭な光が杏の輪郭をキッパリと映し出していた。可憐な彼女の顔がいつになく穏やかに笑っていた。
「もしも、この街の根源を。3人が無事にやっつけられたら」
杏はそこで一旦止めて、息を吐き、吸って言う。
「私、蕨君の事一目見た時から、好きだって思った。もし、みんな生きて帰ってこれたらで良いから、私をあのハレー彗星見たいに向かえに来て、私の思いに答えてほしい」
長い沈黙の後で蕨は答えた。
「そうしよう」
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