音楽祭の裏で

「失礼するよ」

 研究所の一室に入りホームズは言う。

「失礼致します」

 ワトソンも言う。

「やぁ。元気してるかい」

 葛切は言う。

「こちらこそ」

 ホームズはそう返す。

「柏から話は聞いてるよ。銃を付き付けないのかい」

「貴方は発砲されないと分かり切っている銃を見てびびりますか?それに一応この街の全データベースを見せてくれている恩もありますし」

「ドライだね。あと能力無効化弾はどうやって」

「たまたま銃に入ってました」

「困ったね。あれはこの街の機密兵器なのだけど」

「秘密だよ。あんたにもあんだろ。秘密」


「ホームズ君能力開発がどう行われるか知っているかい?」

「さぁ」

「特殊な電気信号を浴びせると人は超能力を得るんだ。そして、もう一度同じ電気信号を浴びせると能力が逆探知できる。単純過ぎるとは思わないか」

「ええ」

「この技術はとうの昔に開発されていたものだ。ただ未だに特定の超能力開発を行うことはできない。超能力の本質はルクスと言う人体のブラックボックスのみが知っている。不思議だね」

「何を言いたいのか分からない。僕は柏がスキルバーストを引き起こす能力だと知っていて何故放置していたのか聞いているんだ。答えてくれ」

「柏は元宰領生徒だ。得た能力はスキルバースト。周りの能力者を暴走させる。不幸にも柏はその能力を得た。しかも、スキルバーストは操作不能の能力だ。僕は薬で柏の能力を抑制した。三銃士がいない頃以外はね」

「なぜそんなことをした?」

「三銃士は円卓の中でも特に危険な任務をこなす。故に、三銃士は任務中に死ぬことがある。三銃士が居なくなった時、円卓はポセアリウスの治安を守れない。そういうことがたびたびあった。円卓から三銃士が消えた時を想定して円卓を強化する為に彼の能力を利用した」

「そういうことか」

「不満はあるかい?」

「ああ。暴走した能力者たちは心に傷を負った。周りに与えたくない危害を与えることになった。そういう人たちに謝りなよ」

「分かった。約束しよう」




 時期を同じくして円卓


「ホームズ達はどうしたんじゃ」

 坊主頭の最中が言う。

「事件を調べると言ってから連絡がつかないにゃ」

 猫耳赤髪のもちはいう。


「1年生とホームズとワトソンを覗いた円卓でルクセンブルクに向かうぜ。目標はブラックスワンの本拠地だ。気を引き締めやがれ。もち。お前が今回のキーパーソンだぜ」

 八橋が言う。


「分かってるにゃ」

「じゃあ行くぜ」


 数時間後


 円卓はブラックスワンの研究員の多くの死体を目視した。


「これはどういうことですかね?」

 ういろうは尋ねる。


「これは」

 もちは死体の記憶を見て腰を抜かした。


 ◆◆◆


「ホームズ」

 ホームズの脳内にもちが語り掛ける。


「凛先輩の能力?もち。どうしたんだい」

「もちだにゃ。緊急事態だにゃ」

「どう言う事だい?」

「今一年生とホームズ達を除いた円卓のメンバーはルクセンブルクにいるにゃ。ルクセンブルクにあるとある施設にいるにゃ」

「それで?」

「その施設では超能力を有す生き物や神器を研究していたにゃ。通称モンスターと呼ばれる超能力を使う生物がポセアリウスに向かっているにゃ。正直言って超危険にゃ」


「そんなのどうしたら良いんだよ。円卓が揃わなきゃどうにもならないだろ」

「ルクセンブルクを今嵐が襲っているにゃ。私達は帰れないにゃ。恐らくホームズとワトソンでは太刀打ちできないにゃ。残ってる一年生に任せるにゃ」

「でも確か蕨君には能力が」

「蕨君には莫大なルクスがあるにゃ。だから神器を使えるにゃ。今から、この施設にあった神器を蘭先輩が能力で贈るにゃ」

「分かった。円卓一年生のみんなに任せればいいんだな」

「円卓で出した答えだにゃ。モンスター達は人工物。ルナちゃんの能力は相性が悪いにゃ。だから、ルナちゃんはこの件から手を引くように伝えてほしいにゃ。多分モンスター達が訪れるのは明日まではかにゃ。ポセアリウスの避難誘導任せたにゃ」

「最善を尽くすよ」


 ◆◆◆


「凛先輩。ありがとうにゃ」

「大丈夫だよ〜。ギリギリだけど〜」

「この嵐が開けるのを待つ事しか出来ないなんて最悪だぜ」

「……明日は晴れるから大丈夫だよ」

「そうなんじゃ?」

「そうですかね?」

「ういろう。一年生を信じるしかないにゃ」

「蕨君はそれまでに立ち上がれるのでしょうか?」

「そういえばその問題もあるにゃ。でももう私たちは一年生の三人を信じるしかないにゃ」

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