最中卓

 三銃士がローマへ向かう頃。円卓会議は三銃士を除いた9人で行われた。


「今日の会議はスキルバーストの件じゃ」

 例によって例のごとく坊主頭の最中が円卓を指揮する。

「スキルバーストって?」

 金髪ポニーテールの杏は質問する。

「君たち一年生は分身の能力者とたたかったじゃろう」

「ええ。戦いましたわ」

「戦っただし」

「シオルナの握手会の時ですよね」

 白い髪のシオルナ、緑色の髪の青二、杏が順番に答える。

「あれは本人の意思ではないんじゃ。意識のない暴走状態。即ち、スキルバーストなのじゃ。スキルバーストの詳しいことは分かってないのじゃが、暴走した本人にとっても、暴走した人の周りにとっても、危険なのじゃ」

「そんなことがあるんですね」

「この時期になるとスキルバーストが多発するのじゃ。だから今日円卓はパトロールするのじゃ」

「はい。分かりました」


 ◆◆◆


 杏は桜凛と一緒にパトロール班が決まった。各々がパトロールに着いた。二人セットなのはこの二人だけである。


「最中先輩ってしっかりしてますよね」

 赤渕眼鏡に黒髪三つ編みの桜凛が答える。

「まぁ責任感が強いからね~」

「頼りになりますよね」

「まぁそうかも~。最中は昔から私達のリーダーだったからね~」

「八橋先輩がリーダーじゃ無いんですか」

「八橋はね能力を使いこなすのにかなり時間がかかったんだ~」

「えっ、そうなんですか!」

「本当だよ~。でも最中はね~、どんな時でもこの街の為だけを思って行動するんだよ~」

「なんか蕨見たいですね」

「そんな事ないよ〜。蕨君の方が百倍くらいかっこいいよ〜」

「でもそういう人ってほっとけませんよね」

「私はそんな事ないよ~。最中は蕨君とは違って能力があるし~。それにね~」

「それに?」

「私達のリーダーだからだね~」


 ◆◆◆


 二年前


「ノーマルスキルズはお前らをぶっ潰す。お前は不運だったな。だが、この街が先へ進むための犠牲だ。誇って死にな。拳銃」

 八橋の胸ぐらをつかみ、ノーマルスキルズの男は右拳を超能力で銃に変え、左手で引き金に手をかける。

「何だお前」

 突如その間に割り込んだのは最中卓である。

「卓?なんでこんな所に?逃げて」

「安心しろ。映像じゃ」


 割り込んだ最中とは別の最中が右手を拳を拳銃に変えた男の背後から、首に強い手刀を浴びせ気絶させる。


「卓。ごめん。いつも助けて貰って。本当は俺が頑張んなきゃ行けないのに」

 八橋が弱音を吐く。

「そんな事ないんじゃ。円卓全員でこの街を守れれば良いんじゃ」

 最中は笑顔で答える。

「卓も蘭も凛も体はってこの街を守ってくれてる。本当は俺が1番守らなきゃ行けないのに。俺はルクス1位なのに。虹谷先輩と違って足引っ張ってばっかりだ。ノーマルスキルが暴走した時だって俺の能力は使い物にならなくて、人質にされて円卓失格だよ」

「能力を使いこなせる様になったら、その時頑張って貰うんじゃ」

 また優しい笑顔で最中は言う。

「ありがとう。卓」


 ◆◆◆


(健は今誰よりも強くなったんじゃ。円卓での危険な活動はほとんど一人で終わらせるようになったんじゃ。だから健がいない間は、俺がその穴を埋めるんじゃ。)


「お前どうしたんじゃ。宰領の一年生が1人で何をしてるんじゃ」

 宰領の制服を着た男が少し通りを外れた道にいた。最中もパトロールでなけらば歩かないような場所である。


「うわぁぁぁぁぁぁ」

「スキルバーストじゃな」

「閉鎖空間」

 最中の周りを四角い壁が囲う。

「なんじゃ」

「閉鎖」


 ガチャン


 最中は四角い壁によって上下左右から潰される‼︎


「そんなんで倒せると思ったら甘いんじゃ」

 つぶされた最中とは別の最中が暴走した能力者に近づいて行く‼︎


「閉鎖空間。閉鎖」

 後ろから近づいていた最中が先と同じように潰される‼︎


「甘いんじゃ」

 今度は暴走した男の前後から最中が同時に近づいていく。


「閉鎖空間。閉鎖ぁぁ」

 両腕を片方ずつ最中のいる方に向け、上下左右から2人の最中を潰す。


 コツコツ


 もう1人の最中が背の方から近づいていき手刀を下ろす。


「少しだけ、眠るのじゃ。おやすみ」

 暴走していた能力者は最中によって倒される。


 最中卓の能力、映像操作は自分のホログラム映像を二つ同時に動かせる。つまり、本体を合わせて最中卓は三人いる。彼は円卓の3年生のリーダーであり、彼もまた円卓の能力者である。


「最中卓。スキルバースト1人確保したんじゃ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る