正義
「同じ生物として尊敬してやろう」
十二枚の真っ黒な羽で少し浮かんでいた。皇帝殺しは全人類を嘲笑するような表情を浮かべた。皮肉にもその姿は美しかった。
「後回しにしてやろう。薔薇」
八橋の体は仰向けの状態で宙に浮いた。ルクスを使い果たしていた八橋はされるがままだった」
「どういう事だぜ?」
八橋の上からは三本の鉄槍が現れ、八橋を突き刺した?
最初の一本は八橋の中心に真っすぐ。最初の一本を中心に二本は互いに交差して突き刺さった。流れ出る血流は止まる事なく流れ続けた。
「先輩⁉八橋先輩!?」
「神の力を与えてくれて感謝する。これは朕の慈悲だ」
鉄槍が皇帝殺しの真横に現れた。その鉄槍は蕨の右腕を吹き飛ばした。
「うわあああああ」
万事休す。打つ手がない蕨はただ叫んだ。
異空間に蕨は吹き飛ばされていた。深い暗闇の中に骨だけの巨体があった。頭蓋骨には金の冠が付いている。
「力が欲しいか?」
巨体の骨は喋る。
「ああ」
蕨に迷いは無い。
「そうか、代償は払ってもらうぞ」
巨体の骨は語る。
「代償って何?」
蕨は聞く。
「お前の命だ」
「お前ハデスなんだろ。人は死ぬとどこへ行くんだ」
蕨は代償には驚く事なく聞く。
「冥界だ。そこにあるのはただひたすらの空虚のみ」
「そっか。寂しくなるな」
蕨は呟くと異空間からは脱していた。
「漆黒義手」
蕨の右腕には黒い義手が付いていた。神器の力を解放した蕨はういろうを発見する。
「なんでういろうさんが?」
蕨は尋ねる。
「あなたへの借り、そういえば返していませんでしたから。
時は止まる。勿論、皇帝殺しの動きも止まる。動けるのは宰領の4人だけだ。
「八橋先輩のことは頼みました」
蕨は言った。ういろうは八橋のもとへ蘭と共に駆け寄った。
「任せました、蕨君」
ういろうは蘭と共に八橋を持って結界の外へテレポートした。
蕨は皇帝殺しの前に近づいて行く。
「これが俺の正義だぁぁぁ‼︎」
蕨が叫ぶと蕨は精神世界へ飛ばされた。
「大河君、そんなことやめて」
「ごめんもう決めたことだから」
「大河、後悔はないか」
「ああ、もちろん」
「よかった」
父親は笑った。
「大河、お疲れ」
今川蓮は笑って言った。
「俺はお前の分まで正義を貫けたかな?」
「君と友達になれたこと本当に誇りに思うよ。君は正義の為に力を貫き通したと誰もが言うだろう」
「なら、良かった」
「俺等寂しくなりやがるな?」
八橋は蕨の手を取ろうとした。
「八橋先輩はまだ大丈夫だよ。諦めないで、いつか必ず目を開ける日が来るよだいじょうぶ」
蕨はその手を剥がす。
「お疲れ蕨君」
ういろうが言った。
「ういろう先輩も最後に駆けつけてくれて、そのおかげで今こうやってとどめを刺すところまで行けました。円卓のみんなにもありがとうって伝えといてください」
蕨は感謝を伝える。
「蕨君、死んじゃうの?」
杏は蕨の制服を強く引っ張る。
「杏には本当に助けられたよ色々」
質問に答える事なく蕨は言う。
「私の約束無謀だったかな?」
杏は泣きながら言った。
「そんな事ないよ。愛してる。だからこそ。ごめんね」
杏は蕨から目を背けて嬉しさと悲しさの狭間で、泣いた。
蕨は義手となった右手を恐ろしく静かに皇帝殺しに打ち込んだ。
「朕は倒されたのか?」
皇帝殺しは言った。
「ああ」
「何故?」
「さあね。でも罪が返ってきたんじゃないかな」
「罪?」
「人を殺すのは罪なんだよ」
「朕はいつだって搾取する側であるべきなのだ。罪など受ける義理は無い」
「そう言うと所で罪がたまっちゃったんじゃないかな」
「朕はどこへ行くのだ」
「空虚だよ」
「朕は、死んだのか」
「そうだよ。さっさと行こう。空虚の果てへ」
ドゴーン
とんでもない爆音が海底都市ポセアリウス鳴り響き彼らは消えた。
◆◆◆
八橋を持ったういろうと蘭は葛切の病院に駆け込んだ。
爆音とともに杏は円卓へと駆け出していた。
「はぁはぁ。涼風さん。みんなは、大河君はどうなったんですか?」
杏は涼風を問いただす。
「皇帝殺しと大河のいた空間が結界ごと無くなった。恐らく二人はもうこの世には居ないのだろう」
「やっぱりそうですか」
杏は言う。
「君は最後、蕨と会話できたかい?」
「大河君は最後愛してるって言ってくれました」
「なら良かった」
涼風はライターとタバコを取り出し、火を付けた。
◆◆◆
「八橋先輩はどうですか」
ういろうは聞く。
「鉄槍の除去は終わった。彼はしばらく眠りについている。だが私がいつか目覚めさせる」
「葛切先生、これでよかったんですかね」
「分からない。でもきっとこれでよかったんだ。あと君に、君たち円卓に最後の依頼だ。このポセアリウスは撤去される。そのことを円卓に伝え、ポセアリウスの人々を地上への移動を円滑に進めるために協力してくれ」
「分かりました」
◆◆◆
「八橋先輩は眠っています。蕨君はもう居ません。ですが、この街の宿命は果たされ、この世からポセアリウスも、皇帝殺しも、ブラックスワンも、皇帝も、神器も、超能力開発も、無かったことになります。私からは最後に一つだけ。みなさんお疲れさまでした。そして蕨君から皆さんへの言葉です。ありがとう」
ういろうは円卓で堂々と言った。
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