皇帝殺し 

 計画日4人は円卓に集まった。八橋と蕨の顔はいつになくシャッキリとしていた。桜蘭は髪の毛を下ろしていて、眼鏡もつけていなかった。ういろうの顔は不安げな顔だった。


「揃ってるな。4人共」

 涼風が付くや否や確認する。すると円卓(*机が)が床に埋まり横にずれて地下に向かう階段が出現する

「この先だ」

 涼風の言葉で4人は地下へ向かった。 4人の前には水でできた壁に五芒星が書かれた結界が現れる。


◆◆◆


 結界を潜ると中心から4人は真っ白な部屋に移動した。


「お前が皇帝殺しか‼︎」

 蕨は少女に言った。


 皇帝殺しは真っ黒なドレスを着ている。革靴を履いていた。髪は真っ黒でシニヨンヘアー(お団子)をしている顔は目鼻だだちがはっきりしていて整っている。


 スレンダーな体、綺麗に伸びた足、美麗な顔、白い肌。存在するだけで他人を魅了してしまうような少女は皇帝殺しだった。


 その少女の口のあたりには真っ赤な血がマニキュアの用に付いていた。野鳥が死体をあさったかの如く人の骨のみ残った死体がいくつもある。皇帝殺しからは危険なオーラが漏れていた。


 これに逆らうということはいつ死んでもおかしくないということが4人にひしひしと伝わっていく。生乾きのあるはずがない風がそれをさらに引き立てた。4人の額からは大量に冷や汗が流れ出ていた。


「ダレダ、朕ノネムリヲサマタゲルノハ」

 モスキート音の様なキーンとした声が響き渡る。その不穏な声がういろうの心を完全に砕いた。

「無理だよ。こんなの。私には無理」

 ういろうの膝は笑っていて、目からは涙が溢れ落ちていた。ういろうの頭を恐怖が支配していた。

「ういろう逃げやがれ‼︎これは命令だぜ」

 八橋は叫ぶ。

「私は戦える」

 ういろうは強がって答えるが今にも崩れ落ちてしまいそうだった。

「ういろうちゃん逃げなきゃダメだよ。今のういろうちゃんは戦えない。このままじゃただ殺されちゃうだけ。いつもみたいに冷静になって逃げよう」

 桜蘭はいつになく強い口調でういろうを諭した。

「蘭先輩がこんなに言うなら私が逃げる方が正しいのでしょう。任せました。蕨君。八橋先輩」


 八橋も蕨も恐怖していた。それだけ皇帝殺しは異様な空気を醸し出していた。2人だって怖くて怖くて今にも震えてしまいそうだった。しかし、ここで皇帝殺しを倒せなければ世界が崩壊する。そうさては行けないと言う強い責任感が何とか2人を立たせた。


「朕トタタカウノハソコノフタリカ」

 皇帝殺しは言った。

「ああそうだ。お前は何故、人を殺す⁈」

 蕨はありったけの声で叫ぶ。

「朕ニトッテソレハカイラクナリ」

 皇帝殺しは答える。

「ふざけるな‼︎」

 蕨は再び叫ぶ。

「落ちつけ蕨」

 今にも飛び出しそうな蕨を八橋が静止させる。


「答えやがれ。快楽以外の理由は本当にないのか?」

 八橋が聞く。

「アア、興味ガナイ」

「糞野郎だぜ。お前は何のために生きてやがる?」

「殺人ノ快楽ノ為ダケダ。朕ヲ楽シマセル為ニ汝等ハ来タノダロ。朕ヲ楽シマセロ

 皇帝殺しは堂々と宣言した。


「蕨、接近戦だ」

 八橋が蕨の耳に囁く。蕨はうなづいた。

「覚悟しとけよ。お前の間違いを正してやる」

 蕨は皇帝殺しに言い放つ。

「面シロイ」


 サッ


 八橋と蕨は皇帝殺しに近づいて行く。丁度皇帝殺しを前後から挟み込んだ。


「クナイよ、貫けぇぇぇ」

 蕨はハデスのクナイを持った右手を伸ばす。


「クダラヌ」


 皇帝殺しはクナイを握った蕨の手をひゅっと避け蕨を蹴り倒す。続けて後ろから近づいて来ていた八橋を手の力だけで投げる。蕨と八橋は皇帝殺しによって同じ位置に投げられた。


「ツマラヌ。コロセ。薔薇」

 皇帝殺しはそう言った。


 倒れている2人の周りを床から天井まで突き刺さる、大きな鉄槍が円を囲むようにして出現してくる。


 ガンガンガンガン


 次第にその鉄槍が2人を追い詰めていった。


「蕨、手を繋ぎやがれ」

 八橋は蕨の左手を握る。

「蕨、クナイって言うのは投げる物だぜ。この鉄槍は何とかする。だから、さっき皇帝殺しがいた位置に目星をつけやがれ」

 

 ガンガンガンガン


 その会話の最中でも鉄槍は2人のスペースを奪って行く。 

「多分、大体の方角は分かります」

 蕨が言う。

「最後の瞬間。俺等を殺すための鉄槍が地面から生える時。それが恐らく1番油断する時だぜ。その時に、俺が炎を最大限にする。手を離したら燃え死ぬから気をつけやがれ。そして、そのクナイを投げつけろ」


 ガンガンガンガン


 次第にスペースが小さくなって行き2人は狭い空間に閉じ込められた。


青炎ブルーフレイム


 八橋の青の炎が周囲の鉄槍を溶かしていく。蕨と皇帝殺しの直線状には何も邪魔するものは無い。


「蕨、今だ‼」

 八橋が指示を送る。


「ハデスのクナイよ。葬れぇぇぇ」

 蕨が右手でクナイを投げつける。クナイは加速して皇帝殺しの胸元に突き刺さった。


「朕はずっとこの時を待っていた。朕はこれで完全な神となる」


 皮膚を完全に突き刺ささるはずだったクナイは皇帝殺しの体の中に取り込まれ、皇帝殺しからは漆黒の十二枚の羽が生えでた。

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