ノーマルスキルズ
「ここが今日から通う
青髪の少年はこの
その少年は宰領学園の周りをぐるっと歩き、凱旋門のような建物が、東、西、南、北、計四つある事。それら四つの門が繋がっているのを確認した。
「確か一年生は南門が近かったよな」
少年は最初に見ていた門まで戻りそこから中に入る。廊下が全方位の門の内側を正方形に繋いでいた。それに加えて、門から中央に向かう通路があり、中央には教会がある。
少年はキョロキョロとあたりを見渡した。少年が迷うのは無理はない。校舎がどこにも見つからないのだ。しばらくして少年は、門を裏から見ると、門の足が螺旋階段になっているのに気づいた。その近くの看板に螺旋階段の先に教室がある事が示されている。それを見た少年は螺旋階段を上がって行った。
階段を上がるとそこには至って普通の教室の扉があった。少年はガラガラと戸を開けて教室の黒板に貼ってある紙を確認し全四列五段ある中の一番扉側の一番後ろの席に座った。
「おはよう。君が
肌の真っ白な金髪のポニーテール少女は後ろを向き少年に話しかける。少女の青い目がはっきり輝いていた。
「うん。俺は
「私は
教壇には教師が立っていた。
「皆には自己紹介の仕方を教える。自己紹介はこの宰領学園では信頼の証だ。するときには、名前、学年、その学年でのルクスの順位、能力を名乗る事。君たちの例となるように、自己紹介をしてみよう。
ホームルームが終わり、一時間目の
キーンコーンカーンコーン
「
「寝るの得意だから」
「一緒に円卓に行くよ」
「ちょっと待って、円卓の事まだあんま知らないから、円卓について少しだけでいいから、教えて欲しい」
「じゃあ私の知ってる事を教えるね。円卓って言うのは、この海底都市ポセアリウスの治安維持の為に作られた宰領学園の生徒によって構成される組織。宰領学園の学年別ルクス上位者四人によって構成されるの。宰領は3学年制だから、円卓は計十二人によって構成されてる。その1人が私。そういえばちゃんとした自己紹介してなかったわね。私は
「ああ。
「よろしく。放課後は円卓の定期集会があるの。さぁ、円卓に向かおう」
◆◆◆
二人は階段を下り
「ここが円卓か」
「ここに座って」
2人が座ると、向かい側に座っていた坊主の3年生が立ち上がった。
3年生であることがなぜ分かるかというとネクタイが青いから。
*青が三年、緑が二年で、赤が一年である。
「今日の議題はノーマルスキルズについてじゃ。ノーマルスキルと言うのは下級能力者じゃ。ノーマルスキルの集団をノーマルスキルズと言っておるのじゃ。特定のノーマルスキルズがポセアリウスの研究者に対し脅迫状が送ったのじゃ」
坊主の男は淡々と話しを進める。
「それを俺らで何とかしようって事だな」
蕨はそう言った。
「違うのじゃ。今、3学年ルクス第一位が動いているのじゃ。彼1人にこの件は任せて欲しいのじゃ」
「待てよ。この街の治安を維持するために円卓はあるんだろ?誰かが傷つくかもしれないんだろ?一人に任せて、俺らはなんもしないってか」
坊主頭の三年生は蕨に近寄り、蕨の肩に手を乗せた。
「そうじゃ。理由は簡単じゃ。ノーマルスキルズは下級とはいえ超能力者じゃ。円卓が危険な目に遭うこと、及びノーマルスキルズを逆上させて一般人を被害に合わせるのを避ける為、最低限の力でノーマルスキルズを制圧したいのじゃ」
「そうかい」
「円卓会議はこれまでじゃ。解散」
坊主の男の声により会議は終わり、皆円卓を去っていった。
やがて、残っているのは蕨と杏だけになった。
「
わざとらしく蕨は言う。
「いいの、私の家結構遠いよ」
「別にいいよ。ついでにこの海底都市のこととか超能力の事とか色々知りたいし」
「ノーマルスキルズの事でしょ」
「まあそれもある」
少し目を背けて
「まあいろいろ教えてあげるよ」
◆◆◆
二人は円卓から出て、南門を抜けた。
「まず最初に、ノーマルスキルズって言う言葉は、ノーマルスキルの不良達を指す言葉なのを知っておいてね」
「不良?」
「そう。ノーマルスキルがただ集まっているだけなら、わざわざノーマルスキルズなんて言い方しない。ノーマルスキルズは普通、下級能力者の不良集団を指すのよ」
「不良なのは分かった。でも、ノーマルスキルズはなんで研究所に脅迫状を送ったりしたんだ?」
「超能力者になりたいって純粋な思いだけで超能力開発を受ける人は少ない。人生逆転の為に超能力開発を受ける人だって多いの。そんな思いを抱えていた人達にとって、自分がノーマルスキルになった事が許せない。だから、ノーマルスキルズにはそもそも、研究者嫌いが多いのよ。恐らく、それが激化していったのでしょうね」
「そんなのおかしいよ。そいつらはちゃんと能力を得てるし、研究者だってわざと下級能力者を作り出してる訳じゃないだろ」
「そりゃそうだけど。それを私に言われても。私の家もうそこだから、じゃね」
「じゃあね」
「俺の家どこだっけ?」
昨日このポセアリウスに来た
「あった」
(どう見るんだ?)
ポセアリウスの形は地図で見ると円である。地図には方角が示されているが、土地勘のない蕨にとって自分の家に行きつくのは至難の業だった。
「取り敢えず、学校に戻るか」
蕨は1人そう呟いた。
海底都市ポセアリウスはドーム状になっている。ドームの中から海はくっきりと見える。
「まじかよ」
(どうしようかな)
(よし行くか)
「すみません、
「何じゃコラ。喧嘩売っとんのか、このクソガキが。こっちは逃げられて、いらついとんじゃこのボケカスゥー」
金髪モヒカン長ランの男が
その後ろには二人の男がいた。もう一人蕨に怒号を飛ばした男と似たような、というかほとんど同じ男が一人。もう一人は赤いスカジャンを着ているダンディな昭和の俳優のような顔をした男がいた。モヒカン二人に関しては年齢は分からないが、赤いスカジャンの男は多分30歳くらいだろう。
「おい、ま、ま、ま、待てブラザー、そいつは
後ろにいた怒号を飛ばしたやつとは別のモヒカンが言った。
「何だって。本当じゃねーか。この肌色のブレザー。間違いなく
怒号を飛ばしたモヒカンの足は震え上がった。
「てめーら、だらしねーぞ‼︎」
赤スカジャンは二人に喝を入れる。
「だ、だだ、だって」
二人のモヒカン達は手をつなぎ合わせ、震えながら言った。
「もういい、俺が出る」
赤スカジャンの男はそう言ってコキコキと拳を鳴らした。
「宰領の奴らは良いよな。無条件で英雄に選ばれる。俺も、お前みたいになりたかったよ」
「お前は自分で超能力開発を受ける道を選んだんだろ」
「違う。選んだんじゃない。こうするしかなかったんだ」
「お前の過去に何があったかは知らない。知るつもりもない。でも、ノーマルスキルズの研究者たちに罪はない。お前らも分かってんだろ」
「研究者達は俺たちを、宰領の生徒により優れた能力を与える為の都合の良いモルモットだとしか思ってない。俺らが怒るのは当然だ」
「たとえそれが本当の事だとしても、こんなことしなきゃ行けない理由にはならないだろ」
「絶対にこうしなきゃ行けないんだよ。理屈じゃねぇ。」
「やるしかねぇんだな」
「そこにいるモヒカン2人の能力は痛覚をいじる能力だ。ただ、この2人に喧嘩中に手出しはさせねぇ。代わりにお前は能力を使わずに俺と戦え。この喧嘩、負けたら俺らはポセアリウスを出ていく。ただし、お前が能力を使った場合、お前が俺に負けた場合、お前は地獄を見る事になる。この喧嘩買うよなぁ」
手のひらを返して挑発をしながら赤スカジャンの男が言った。
「上等だ」
「てめえのその目、むかつくんだよぉ‼」
赤スカジャンは
すると赤スカジャンは顔の前で両手をクロスさせる‼︎
「俺の能力は
赤スカジャンの不穏な動きに合わせて、ほんの一瞬で蕨は動きを変えたのだ。
「歯を食いしばれよ」
赤スカジャンは吹き飛んだ。
グハッ
「その青髪。もしかして、喧嘩狂いの浜の悪魔か⁉︎そう言えば、この街に来てるって噂があるな」
「知らねえよ」
「気取りやがって」
赤スカジャンは右手の拳に能力を使い、硬化させ、
「覚えておけ、俺は無能力者だ。なにも得なかった。誰よりも無力だ。でも、どんなに無力でも、例え間違った行いを過去にしてしまったとしても、正しい道は歩めるんだよ。正義は貫けるんだよ。だからお前もこんなとこで腐ってんじゃねぇ‼」
バシンッ
「分かってくれればそれで良いんだけど、それでも勝負するならかかってこいよ」
蕨は残党のモヒカン2人に語り掛ける。
「ひっひっひっ、ひぃ」
二人のモヒカンは言葉にならない言葉を喋る。
「お前ら、こいつのことは頼んだぜ。俺は勝った。だからじゃないんだけど、これからは、人を恨む生き方じゃなくて、大切なものを守る為に生きて欲しい」
「も、もも、もちろんだぜ。俺ら、三人でブラザーズだからな」
モヒカン2人は倒れた赤スカジャンの男を運んで、研究所を後にした。
◆◆◆
それを発見され、ニュースにまでなった
「おはよう、道端王子」
「
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