第4話:主夫はEランクのクエストへ行く

「貴方のランクは最低ランクのEからスタートです」


受付嬢はぶっきらぼうにそう言うと、ギルドマスターと共に後ろへ消えて行った。


「良かったな、これで冒険者だ」


リオニーさんが後ろから言ってくれた。

周りからは妬ましそうな目、冷めた目、ポジティブな目線では無いと分かった、それはそうだろう、主夫がSランクで美人な人が面倒を見ると言ってくれているんだから、周りとしては面白くないだろう…


「リオニーさん、ありがとうございます、ご迷惑をお掛けして申し訳ないです」


そう言って頭を下げた、すると彼女は僕の肩に手を乗せ微笑んだ


「ふふ、そう頭を下げるな、友達だろ?困った時は助けるさ」


彼女から良い匂いがして、微笑んだ顔に見惚れてしまう…


「あ、ありがとうございます…」


何とか自我を取り戻し、依頼ボードを見に行く


依頼ボード、ここには様々な難易度の依頼内容が書いてる紙が張ってあり、

それを見て、受付嬢に渡し、依頼受注を行う。


(僕にも出来そうなクエストはー…Eランクの薬草集めだね)


僕は薬草集めの依頼を取り、受付嬢に渡す。

今回の受付嬢は表情が柔らかく、青い髪が特徴的な女性だ。


「さっきはごめんね、受付嬢は、冒険者にあんな態度を取る事は許されないのに…」

「私の名前はアダルよ、宜しくね、新人さん」


彼女は笑顔で自己紹介をし、依頼の説明等をしてくれた。


「よろしくお願いします、リヒティです」


「薬草集めですね、場所は村を出た森林に生えてます、しかし、モンスターも居ますので、注意してください。」


「ありがとうございます、アダルさん、それでは行ってきます」


「行ってらっしゃい」


僕はギルドを出ると、リオニーさんが立っていた。


「リヒティ、待っていたぞ」


「あ、リオニーさん」


「一緒に依頼に行くぞ」


「え…いや、薬草取り位、一人で…」


「ダメだ、私は責任者だぞ?、一緒に行くぞ」


彼女は僕の責任者として、無理矢理にでも一緒に行く様だ。

僕はリオニーさんの言う通り、一緒に行く事にした。


森へ向かう途中、彼女と話をした。


「リヒティ、君のお母様は重たい病気なのか?」


「そうですね…マナ枯渇病です」


マナ枯渇病、魔法を使い過ぎた人に起こる症状だ、これを治すには特効薬を飲む必要があるのだが、非常に高い。常にふらつきや眩暈等を起こし、日常生活に支障が出る病気だ。母さんは父さんが死んでから僕を育てる為、魔法を大量に使う仕事をして、過労で倒れたのだ。

もう2年もその病気で、早く治してあげたい。


「そうだったのか…確かにあれは10万ゼニー位するな…」


「ええ、だから、僕が沢山働いて、母さんの薬を買うんです、その為に冒険者になったんです、例え主夫でも、やれる事を全力でやれば、きっと達成できるので」


それを聞いたリオニーさんは感極まったのか、涙を流しだす


「リヒティ…君は良い子だ…健気だ…」


「あ、な、泣かないで下さい!」


そう言って僕はハンカチを取り出し渡す。


彼女はハンカチを受け取り、

涙を拭いているのだが、ハンカチを見続けている…

まるで、そのハンカチに何かを感じたかの様に。

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