お母さん宛の手紙
拝啓、お母さん。元気にしていますか?わたしは元気にやっています。
箱庭の王国では、毎日新しい発見があるし、新しい友だちもたくさんできました。
一つだけ、問題があるとすれば…
「おうおうおう!やんのかコラァ!」
「うふふふふ…今日こそその息の根を止めてさしあげましょう…!」
「二人とも!ケンカはダメ!」
「「(テメー)(あなた)は黙って(ろ)(なさい)!」」
「いいえ、黙らないわ!」
わたしの目の前で、ケンカが起きていることです…
わたしと同じ、だけど、少しだけちがう黒ずきんちゃん。
少し怖いけど、とってもきれいなカオス・シンデレラさん。
素敵なレディを目指しているアリスちゃん。
いつもなら、黒ずきんちゃんとシンデレラさんのケンカを止めてくれる子がいるんだけど、少し別の用事があるとかで、今日はいません。
かわりに今日は、アリスちゃんが止めに入ってくれたけど、逆効果みたい…
わたしじゃ二人を止められないし、どうしようか迷っていたら、ついに本気のケンカになってしまっていました。
「串刺しにしてやらぁ!」
「氷付けにしてあげましょう!」
「あぁもうっ!いい加減にしなさーいっ!」
黒ずきんちゃんの槍が貫き、シンデレラさんの魔法が周りを凍らせ、アリスちゃんの剣が切り裂く。
あまりの衝撃に、立っているのもやっとです。
そんなわたしの前に、救世主がやって来ました。カオス・アリスちゃんです。
「誰…?気持ちよく寝てたのを邪魔したのは…!」
「あ…カ、カオス・アリスちゃん!」
「…赤ずきんちゃん?もしかしてあなたが…」
「ち、違うよぉ!わたしじゃなくてあっち!あっちの三人が!」
「ア?……あ、あぁ…」
「お願いカオス・アリスちゃん!三人を止めて!」
「ヤダ。めんどい」
「え?ちょ、ちょっと!?」
わたしの呼び掛けも虚しく、カオス・アリスちゃんはどこかへと行ってしまいました。
そうこうしている内に、ケンカは激しさを増していました。よく見れば、近くにあった建物が凍り、テーブルが壊され、木が斬り倒されています。
もうダメかと、怪我を覚悟で止めに入ろうとしたその時、その声が響きました。
「三人とも?なにをしているのかな?」
「「「!?」」」
三人の動きがピタリと止まり、錆びた機械のような動きで、わたしの後ろにいる子…カオス・白雪姫ちゃんの方を向きました。
わたしの横を通りすぎ、三人の元へと歩いていくカオス・白雪姫ちゃん。とっても良い笑顔なのに、なぜかとっても恐ろしかったです。
「ねぇ?もしかしてケンカしてたの?」
「い、いいいや?べべっ、別にケンカなんて…!」
「そ、そそうよ、ケンカなんてしてないわよ…?」
「…ホント?」
「「ほら、仲良し仲良し!」」
「ふーん…で?アリスちゃんは?」
「ふぇ!?」
「アリスちゃんは何してたの?モシカシテ、アリスチャン…」
「わ、わたしも何もしてないわ!ほ、ほら!」
「「「仲良し!仲良し!」」」
「そっか!そうだよね!ケンカなんてするわけないもんね!…ダカラ、ツギケンカシタラ…ワカッテルヨネ?」
「「「は、はいぃぃ!」」」
わたしは呆気にとられていました。だって、あんなに簡単に収まるなんて思ってなかったから…収まったんだよね?
そんなわたしの隣に、カオス・アリスちゃんがやってきました。
「めんどい時は、カオス・白雪姫ちゃんに任せるのが一番…」
「…もしかして、連れてきてくれたの?」
「…めんどいけど、ほっとく方がもっとめんどいから…んじゃ、わたしは寝る…」
「あ、うん。おやすみ…?」
眠そうにして、ふらふらと寝所へ戻っていくカオス・アリスちゃん。連れてきてくれたことに感謝して見送りました。
三人のことは…カオス・白雪姫ちゃんに任せておきます。わたしじゃどうしようもないから…黒ずきんちゃんが呼んでる気がするけど…ごめんなさい。今そこに行く勇気はありません。
お母さん。こんな日々だけど、とっても楽しい毎日を送ってます。だから、心配しないでね。
今度、皆で作ったパイを贈るからね!楽しみにしていてね!
赤ずきんより
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます