お菓子対決

お菓子対決(1)

 魔法村から、前王の山小屋に戻ったエミリーたち3人。


 メアリーは共同部屋のソファーに座り、1人頭を悩ましている。

 エミリーは、感情的になっていたのか。負ければ、おじいちゃんのことはどうなるのか。王様はおじいちゃんを探してくれるのか。負ければそこで全ておしまい。王様のあの態度。果たして王様は、公平な審査をするのか、疑問。

 この勝負に勝ってレシピ本を取り返し。100番目のレシピが見つかり。おじいちゃんが見つかるのか。まるで一石二鳥ならぬ、一石三鳥になるとでもいうのか。わからないことだらけ。まるで鏡の主から、この難問を解いてみろ、と言われているような気もする。

 ただ、ここでわかっていることはただ1つ、前に進むためにはこの勝負に勝つしかないってこと。この勝負、我に勝算あり。但し、王様次第ということ。メアリーは、このことを心配している。メアリーの隣には、クッキーがお腹を空かし座っていた。


 その頃、調理場ではエミリーが昼食の準備をしていた。前王の書斎から、『おすすめ料理(特集、パン)』の本を持ち出し。その本にはいろんな料理のレシピが載っており。エミリーはページをめくりながら、何処か楽しげな表情をし、お昼のメニューが決まり。そのメニューは、パスタ料理。エミリーは、前王から料理を教わったことがない。今回初めて料理に挑戦する。なんかワクワクしているエミリー。


 この2日間、勝利を確信し余裕なのか。エミリーは、変なスイッチが入り、料理の楽しさにハマっていた。この緊張感のなさにあきれていたメアリー。クッキーはいろんな料理が食べられると喜んでいる。


 翌朝、玄関チャイムの音が聞こえ。部屋の時計を見ると午前6時。こんな朝早くに誰と思い。目をこすりながら玄関の内鍵を開けるメアリー。

 すると、そこには村長補佐の男が1人立っている。

「メアリー、おはよう。村長から急ぎで、この封筒を渡すようにと言われ預かってきた」

 村長補佐の手には、封筒が1枚。メアリーはその封筒を受け取り。村長補佐は箒にまたがり、上空へと上がり、魔法村へと帰っていった。

 メアリーは封筒を手に、前王の書斎に行き。明かりを点け、冷え切った部屋にエアコンを点け。机に向かい、封筒を開けると。やはり、お菓子対決のことが書かれていた。


 そのお菓子対決の対戦内容は。対決日時は、本日から5日後。午後1時より対決を開始する。会場には、午前8時までに入ること。遅れたら失格とする。対決時間までは、各自対決に備えての準備をすること。


 勝負方法は、5回戦で行い。勝負するお菓子のメニューはこちらサイドで決める。そのメニューは、お菓子100選から選び。勝負時にメニューを発表とし。先に3勝した方が勝ちとする。但し、お互い2勝2敗の場合は、双方の得意なお菓子で対決をし、決着をつける。尚、双方の対戦相手は、アシスタントを1人つけてもよい。

 審査員は王を含めて5人。勝ち負けを決める為、挙手をとる代わりに札を挙げることにする。尚、赤札をお菓子専門店、白札をエミリーとし。どちらが最高のお菓子かを決める。

 この勝負、エミリーが勝った場合は。お菓子専門店から、リュックとその中身全てを返してもらうことを保証する。尚、先日の王への申し立は、エミリーの好きにするがよい。王の座を受け渡す覚悟もある。

 この勝負、エミリーが負けた場合は、王の言う通りに従ってもらう。文句は言わさない。

 尚、お菓子専門店が勝った場合には、リュックとその中身全ては返さなくてもよい。そして、店主は城の料理人とし向かい入れ。魔法禁止違反の処罰はなし。よって魔法使いの少女は、魔法村の住人として暮らすことができる。但し、お菓子専門店が負けた場は、当然、リュックとその中身全てを返してもらい、国外追放を命じ。二度とこの国に足を踏み入れることはできない。


 この対決の会場は、城の敷地を使い、特例として魔法で会場の設置を行う。その為に、メアリーにその会場の設置を任す。明日の午後1時に城に来るようにお願いする。

 尚、審査員、お菓子専門店には、エミリーが王女ということは伏せてある。従って、エミリーは、異国のお菓子職人としてこの対決に参加する。


 最後に、このお菓子対決は公開勝負とする。会場には1000人の観客を見込んでいる。 以上が、対戦内容。この対戦内容は、文面を変えてお菓子専門店にも通達された。


 この対決方法で双方文句なし。ある意味、お互い手の内は知っている。しかし、この書面には、前王のことは何一つ書いていない。端から王は前王を見捨てるつもりなのか。調理場に立ち、悔しくて、悲しい思いをしているエミリー。やはりこの対決に勝利しないと、前王を見つけることはできない。

 この日を境に、エミリーは対戦モードのスイッチが入り、いかなるお菓子がきてもお菓子専門店に負けない為に、更に腕に磨きをかけ。調理場では、勝つことに集中し、いろんなお菓子を作っているエミリー。


 この対決では、アシスタントを1人つけてもいいことになっている。しかし、エミリーは1人でいいと言い。対戦相手は、店主と魔法使いの少女2名で出場する。


 メアリーは、いつものエミリーなら勝利は間違いなしと思っている。しかし、なんかいつものエミリーではない雰囲気。顔には負けたくないと書いているように見え。3人で食事している時もエミリーは対決のことばかり考え。食べるときくらいは、対決のことは忘れて、楽しく食べようよ、とメアリーが言ってもエミリーは上の空。3人で会話はなくなり。メアリーはエミリーに、声をかけられない状態。

 しかし、メアリーとクッキーは、違う。この2人は、いろいろおしゃべりをしながら楽しそうに、この調理場の隅に調理台を用意し、お菓子を作っている。食べる専門の2人が何故お菓子を作っているのか。言いだしっぺは、クッキーだった。

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