お城へ戻ることに

お城へ戻ることに

 翌朝。

 エミリーたち3人は、お城に向かっていた。


 昨日、エミリーはこんなことを言い出した。

 鏡の主が言った言葉をよく考えたんだけど。もしかしたら、この勝負で100番目のレシピを見つけることができるような気がする。私の勘だけど。確かに、メアリーの作戦なら、レシピ本を取り戻すことができる。しかし、それでは100番目のレシピを見つけることができない気がする。正々堂々と勝負し。この勝負、本物の王に審査してもらう必要があると思うの。そうエミリーは言い。


 そのことに反対するメアリーは。そんなことをしたら、もともこもなくなる。おじいさんを探すことができなくなる。第一、王様がこの勝負を快く引き受けがない。それに、正々堂々と判断を下すとは考えにくい、エミリーには申し訳ないけど。しかし、何でレシピ本を取り戻すのに、そんな考えになるの。よりよって、本物の王様に審査だなんて。困惑するメアリー。


 すると、それに対してエミリーは。私は王女。このことから逃げてはいけない。王から逃げてはいけない。お父さんから逃げてはいけないの。クッキーが言いたいことは、そういうことだと思うの。そう言うと。クッキーは静かにうなずいていた。


 そのことに、なんかよくわかんないけど、なんかうらやましいような、悔しいような、メアリーは。

「何でエミリーはそんな強いの?」

「強い!? それは2人がそばにいてくれるからでしょ。所詮、私は弱い人間。でも、私はこの国を守らなければならない。なんか急にそう思って。でも、心の強さは、メアリーに負けるけどね」

「えっ!? そうなの?」

 なんか嬉しいメアリーだが。今のエミリーは、出会った時のエミリーとは、一味違う雰囲気。何か、底知れぬ自信に満ち溢れ。今の私なら大丈夫。そうメアリーには見えていた。


 エミリーたちは、お城の近くに来ると。どうやら、正門からお城に入るつもりでいる。しばらく歩き、正門の近くまで行くと。そこには正門を見張る小屋が見え。

 すると、門番がクッキーに気づき。

「何だ!?  その化け物は!?」

 その一言に、エミリーはくってかかるように。

「誰が化けですって!? 謝りなさい! クッキーに今すぐ謝りなさい!」

 怒りの表情を見せるエミリー。

 すると、クッキーが止めに入り。

「エミリー! いいよ、気にしてないから」

「よくない!」

 すると、門番がエミリーの前に立ちはだかり。

「素性がわからない者をここから先へは通す訳にはいきません!」

 エミリーは門番を睨み。

「私の顔をよく見なさい!」

「何!? 顔だと……!? 王女様!? エミリー王女様ですか!? 大変失礼たしました。王女様のお連れ様に申し訳ありませんでした!」

「以後、外見で判断しないように、気をつけてください!」

「わかりました! 申し訳ありませんでした!」

「王様に、私が会いたいと言っていると、伝えてくれませんか? 私はここで待っていますので、お願いします」

「わかりました!」

 門番は走り城の中へ行き。10分経ち、門番は走って戻り、息を切らしながら。

「……王様が王の間で待っていると、言っております」

「わかりました。ありがとう」


 クッキーは魔法で背丈を小さくすると。エミリーたちは城の中に入り、王の間へ向かい。王の間に着くと、扉の前には家来が2人立っている。エミリーは家来を目の前にして。  

「エミリーです。扉、よろしいでしょうか?」

 家来たちはその姿に驚きながら、扉を開け。エミリーたち3人は中に入り、目の前には。王は椅子に座り、隣に王妃が立っていた。エミリーたちは、王の近くまで行き。

 すると、王は、髪を切ったエミリーの姿を見て驚き。隣の王妃も驚いている。


 お城では古くから、女性の髪は肩から上は切ってはいけないことになっていた。城の決まりを破ってまで、髪の毛を切ったことに、王はエミリーの心境がいろんな意味でわからない。

「……髪まで切って、何しにここへ戻って来た!?」

「王様に、お話を聞いていただきたいことがあります」

「あんな置手紙まで書いて、今更、何を聞けという?」

「また、逃げるんですか!?」

「逃げる!? 何故、私が逃げないといけない」

「娘の話を聞いてくれないじゃないの!?」


 王は椅子から立ち上がり。

「前にも言ったはず!? 私がどんな想いでここにいるか、お前にわかるか!?」

 王はエミリーを睨みつけ。

「そんなのわかんない! わかんないよ……。でもね、お父様。私、お祖父様が見つかったら、お父様とちゃんと向き合って話そうと思ったの。王女としての自覚って、いったいなんなのか。城を出でいろんな人の話を聞いて、ほんの少しだけどわかった気がした……。逃げていたのは私の方かもしれない。だからちゃんと話そうって。だからお父様も、私の話を聞いてください! お願いします!」

 この態度、あの頃のエミリーとは、やはり違っていた。

 すると、メアリーがエミリーの横に行き、王の前でひざまずき。

「王様! 私はメアリーと申します。エミリー王女様の親友です。無鉄砲で無茶ばかりしますけど。真っ直ぐで心の強い、優しい方だと思っています……。どうか、エミリーの話を聞いてください!」

 すると、クッキーまでも。エミリーの横に行き、王の前でひざまずき。

「私はクッキーです。見てくれはこんなですが、エミリーの親友です。私に優しくしてくれます。お願います、エミリーの話を聞いてください!」


 その時、王妃はその光景に胸を打たれ。王の前では無口な王妃が口を開いた。

「王様! エミリーが髪を切ってまで、ここに来たこと。それに、こんな素晴らしいお友達ができたこと……。いいかげんにしてください! ちゃんと娘と向き合って、話しを聞いてやったらどうですか!?」

 エミリーは、初めて見た。王の前で怒鳴りつけるような態度の王妃を。

 すると、滅多に見せない王妃の態度に、王は。

「……分かった! 話を聞こう。言いたいことがあるなら話しなさい」

「ありがとうございます。お父様」

 エミリーは、お菓子作りのこと。城を出てからのこと。そして、前王のことも話し。魔法の村には、絶対に罰を与えないようにお願いした。

 王は、前王のことを知り、驚き。エリーやメアリーことは咎めず。お菓子対決の審査を引き受け。魔法の村のことは許すと言い。エミリーたち3人は、王に礼を言い、喜んだ。

 しかし、王は真剣な表情で、エミリーを見て。

「エミリー、喜ぶのはまだ早い。私の話しがまだ残っている。この勝負の審査を引き受ける。但し、条件がある。エミリーが負けた場合は、今後一切お菓子作りは禁止とする。そして、私の言う通りにしてもらう、それが条件だ」

 そのこに、王妃はそれではあんまりだと言い。しかし、エミリーは怯まない。

「条件!? そんな条件どうでもいい! 但し、私が勝った場合は、私の好きなようにさせてもらいます。そして、もう1つ。私は私なりのやり方で、この国を支えて行けるようになってみせます!」

「面白い! やって見るがいい。但し、この勝負に勝ったならの話だ!」

「絶対に勝って見せます!」

「楽しみだな、その勝負……。勝負方法と日時と会場は、後日通達する」

「わかりました」

「下がりなさい」

「王様、勝負の日までは、お祖父様の山小屋にいます」

「わかった」

「ありがとうございました! 失礼致しました」


 エミリーたち3人は城を出て。魔法の村へこのことを報告しに行き。村長は驚いていたが、メアリーの作戦が結果的にうまくいけばいいと願っていると言い。それ以上は何も言わなかったが、魔法村をあげてエミリーを応援すると言ってくれた。エミリーには心強い味方がまた増え、目頭を熱くさせていた。


 一方、エミリーたちが城を出た後。王妃は、王の態度に疑問を抱いていた。というより、以前よりそれが増した感じだった。しかし、この勝負に勝てば何かが変わる予感もしていた。その反面、負けたらどうすればいいのか。これは、一か八かのかけのようにみえる王妃だった。

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