新たな決意

新たな決意

 エミリーたち4人はメアリーの家に向かう途中で、突然メアリーが立ち止まり。

「エミリー王女様。エリーのこと、何て言っていいか、ありがとうございました」

「エミリーでいいわよ!? エミリーで。それと、忘れないで欲しいことがあります。メアリーもエリーちゃんも、私にとっては大事な友達だからね! わかった?」

 メアリーはわかったと言い。エリーは、お姉ちゃんがもう1人増えたと言い、大喜び。

 すると、エミリーは、何か忘れていることに気づいた。そう、クッキーのことをまたほったらかしに。

 エミリーは後ろを振り向き、ちゃんと後ろをついて歩いているクッキーがいる。しかし、その表情はどことなく少し寂しげで。エミリーには、怒っていようにも見え、つい。

「ほったらかしにしたの、怒ってるの?」

「怒ってないけど」

「本当に本当?」

「だから、怒ってないって」

 その時、エリーがクッキーの足もとに抱きつき。

「エミリーお姉ちゃん、クッキーの体ふわふわだよ……面白いよ!」

 すると、クッキーは、急に目頭が熱くなり。

「私、人間はみんな私のことを嫌いだと思ってた。化け物って言ってた。これからどうやって生きて行こうと思ってた……。エミリーやメアリー、エリーちゃん会えて、この村に来て本当に良かった……。ありがとう、エミリー。ずっと一緒にいていいんだよね?」

「一緒にいていいに決まってるでしょ!? そんな質問、二度としないでね! 私は、絶対に見捨てたりはしないから」

 クッキーは、涙を拭くようなしぐさをして、エリーを肩に乗せ。エリーは大喜び。それにつられて、クッキーも笑っていた。

 エミリーはメアリーの手を握り、メアリーの家に向かい歩き出し。この時、メアリーは照れくさそうに、子供じゃないんだからねと言っていた。


 しばらく4人は歩いていると。メアリーの家に着き。メアリーが玄関の前に立つと自動でドアが開き、クッキーの背丈も小さくなり。家の中へ入り。ここの家も魔法の家だった。

 すると、そこにはメアリーのご両親が出迎え。どうやら、村長からスマホに連絡が入り、ここに来ることを知り。あの出来事は伝えてはいない。

 今日は、エミリーとクッキーはここに泊まることになり。メアリーの母親の得意料理、クリームシチューを御馳走になることになり。その時、クッキーは既にお腹が減っていた。


 食事ができるまでは、メアリーの部屋で待つことになり。クッキーはお腹が減ったよと言いながらエミリーと一緒に、メアリーの後をついて行き、メアリーの部屋に入ると。あの山小屋の部屋と同じ、変幻自在にできる部屋だとメアリーは言う。

 この部屋は、女の子の部屋というよりも、魔法に関する本がたくさん本棚に並んでいるが。カーテンは花の絵柄模様で可愛い。木の机にベッドがあり。変わった椅子が置いてあり、メアリーはこれ何と聞くと。ソファーという物で、これもあの本の中から取り出したものだと言う。


 この村では、取り出し魔法を使えるのは、どういうわけか、メアリーと村長のみ。ただ単純に魔法の呪文を唱えればいいわけではないようだ。何がどう違うのか。


 メアリーからこの部屋のことをいろいろ聞いているエミリーの横では、クッキーとエリーはベッドの上で飛んだり跳ねたり、遊んでいる。それを注意するメアリー。


 エミリーはこの部屋を眺めていると。

「メアリー、1つ質問があるんだけど、いい?」

「いいけど、何?」

「本の中からいろんな物を取り出すことができるけど、それって、無限に取り出せるものなの?」

「へー!? エミリーも私と同じ質問をするのね? おじいちゃんが言ってけど、この世に永遠の物はない。無限に取り出せると考えない方がいいって言ってた。必ず何処かで終わりがあると。だから、大事に使いなさいって」


 夕食時間になるまで、クッキーとエリーはお外で遊び。あとの2人は、メアリーの部屋で、いろいろとおしゃべりをしていた。

 夕食時間が近づき、エミリーはダイニングに行くと。キッチンでメアリーの母親が料理をしているのを見て、少しだけうらやましそうだった。

 王妃は、料理はつくれるが、エミリーは一度もその料理を食べたことがない。全ての料理は、城の料理人が作る、そういう決まり。エミリーは、母親の手料理とはどんなものか食べて見たいなと思い。


 食卓のテーブルには、みんな集まり、テーブルにはクリームシチューとパンにサラダと飲み物が置いてあり。

 エミリーは、ビーフシチューは食べたことはあったが、クリームシチューは初めてだった。野菜がごろごろ入っていて美味しい。なんて言ったらいいか、これが母の味。感動していた。

 クッキーは相変わらず、食べるのが早く。お代りを催促し。食事中は楽しく、会話も弾み、メアリーの子供の頃の話しで盛り上がり。メアリーは勘弁してよと言い。笑い声が部屋中に響いていた。

 そろそろ就寝の時間になり。エリーは、クッキーと一緒がいいと言い出し。渋々、メアリーは自分の部屋にエリーの分のベッドを魔法で用意し。これでベッドが4つ、2列に並び。隣同士コソコソと話をしながら、4人は眠りついた。

 この4人は、あんな出来事があったのにも関わらず、明日は明日の風が吹く、そんな感じだった。それに、まるで姉妹のようでもあり、友達のようでもある、なんか不思議な関係。クッキーは毛むくじゃらの大男だが。


 翌日。

 村長の使いの者が来て、4人は村長の家に向かい。エリーはクッキーと離れたくない様子。

 4人は、村長の家に着くと、昨日と同じ部屋に案内され。しばらくして、村長がこの部屋に入って来ると。

「エミリー王女様。今しがたお城に偵察に行った者から連絡がありました……。どうやら、内密にエミリー王女様を探し始めたようです」


 お城では、エミリーの置手紙を家来が見つけ。その置手紙は王の手に渡され。家来たちに王女を探すように城内をくまなく探し。秘密の抜け道は気づかれてはいない。いった何処からこの城を出たというのか。それともこれはハッタリなのか。心中穏やかではない王は、仮にこの城から抜け出し、城の敷地からも抜け出し、王女が家出をしたことがバレたら、国中の笑いものになる。何としてでも探し出せと、内密にエミリーの捜索が始まった。


 そうとは知らないエミリー。まさかこんなにも早く捜索するとは。何でお祖父ちゃんは探さない。そこは違うだろうが、と思うエミリーは。

「私をお城に連れ戻す気ね。そういかない」

「いかがなさいますか?」

「私達は、町に行きます」

「しかし、すぐに見つかってしまうのでは?」


 すると、エミリーは後ろを振り返り、メアリーの顔をジロジロ見て。

「私、決めた!」

「決めたって、何を?」

「髪」

「かみ!?」

「髪の毛をメアリーと同じくらいに短く切って!」

「はぁ!? 何で髪の毛を切るの? 何で?」

「城の決まりで、女性はみんな長い髪の毛をしているから、まさか王女が髪の毛を切るとは思わないでしょ? それに、髪の毛を短くしたら見た目の印象も変わるでしょ? それと、今日から私はメアリーの妹って言うことでお願いします。お姉様?」

「はぁ!? ちょっと待ってよ!? 何でそんな風になるわけ? お姉様って、勝手に決めないでよね」

「いやなの?」

「いやじゃないけど……」


 このやり取りを見て、村長が。

「メアリー、そうしなさい」

「村長!」

「エミリー王女様の想い。しかと見ました。相当な覚悟、感服しました」

 メアリーは渋々納得し。

「但し、無茶な真似はしないでよ。それと、これからは私にも相談してよね」

「わかりました、お姉様」

「そのお姉様ってやめてくれる?」

「エリーちゃん、あそこに入る人は、誰?」

「お姉様」

「だよねー」

「もー、エリーまで!?」


 村長はこの光景に。

「メアリー。その元気なら、大丈夫だな?」

「はい!」

「ご両親には、私の方から説明しとくから」

「お願いします……。村長、王様の許可なく町へ行くことになります。私、どんな罰でも受ける覚悟はしていますが、この村や家族に……」

 エミリーは、村長を見て。

「町に行くことは、私が許可します……。罰など私がさせません。村長や村の皆さんは、私がお守り致します」

「ありがたきお言葉……。村のことは心配しないでください」

「私達は、一旦、お祖父さんの山小屋に戻って、明日の朝に、町に行って見ます」

「わかりました」

「エリーちゃんは、お留守番お願いね! できる?」

「できる! 一緒に行きたいけど、お留守番頑張る!」

「偉い! 頑張ってね!」

「はい!」


 すると、この2人の光景を見てメアリーが。

「まるで、エミリーがお姉様って感じね」

「そう、私がお姉様」

「何それ? わけがわかんなくなるから、行くよ! 妹!」

「はい! お姉様!」

「もー、うるさいなー」

「では、村長、行って来ます!」

「お気をつけて。何か困ったことが起きたら、連絡してください。メアリー、エミリー王女様を頼んだぞ!」

「わかりました! ありがとうございました!」

 

 エミリーは、髪の毛を切る決意をし。決意を新たに、エミリーたちは村を出た。

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