真実を突きつけられ(2)
あの鏡と聞き、メアリーはまさかと思い。あの鏡なら何とかなる、前王は見つかるはず、大丈夫、そう思った。
しばらくすると、村長と村長補佐の男がアリスたちのいる部屋へ。
「村長! 本当にその鏡を使うつもりですか?」
「仕方がないだろう……!? 前王様にはいろいろと助けてもらった恩義がある。ここで返すのが筋だろうが! それに、前王様はわしの親友だ……!」
この2人、何かもめている様子。
「確かに、村長のおっしゃることはわかります。しかし、村のみんなと相談せず決めるのはいかがかと!?」
「……わかった。確かにそうだな。村のみんなの判断を仰ぐことにしょう」
「村長、ありがとうございます。では早速、村のみんなを集めて、このことを話してきます」
「わかった。頼む!」
村長の補佐役は部屋を出て行き。村長は申し訳なそうな表情で。
「エミリー王女様、お見苦しいところをお見せしました」
「いえ……。村長、1つお聞きしたいのですが?」
「もしかして、鏡のことですか?」
「はい」
村長が持ってきたこの鏡。この村に古くからある魔法の鏡。楕円形で、縦の長さは1メートル20センチくらい。なんでも願いが叶うと言われているが、できることと、できないことがある。例えば、亡くなった方を生き返らせることはできない。
鏡を横に寝かし、魔法の呪文を唱え。鏡の主が現れ、そこで願い事を言う。鏡の主は、その願い事の内容や願い事する人物を見て、願い事を却下する場合がある。ようするに、鏡の主次第ということ。
この願い事は、4年に1度だけしか使えない。今年がその年あたる。もし願い事がない場合は、次回に繰り越すことはできない。
魔法の鏡のことを聞いたエミリーは、立ち上がり。
「そんな大切な鏡でしたら、私が使う訳にはいきません!」
「何と! そのようなお気遣いをしていただけるとは……」
「もう一度、何か手がかりがないか調べて見ます」
「エミリー王女様のお気持ちは、嬉しいのですが……。それではいつ私達は恩を返せばいいのですか!?」
「でも、それでは」
「では、こうしてはいかがでしょうか? 村のみんなが、この鏡をエミリー王女様の為に使うことに賛成であれば、鏡を使うということでいかがでしょうか?」
村長の強い想いに断りきれないエミリーは、村長の言う通りにした。
しばらくして、先程の村長の補佐役がこの部屋に。
「村長! 村のみんなが賛成しました!」
「そうか、わかった。ありがとう!」
「村長、私はこれで失礼します」
村長の補佐役は部屋を出て行き。村長はこの結果に嬉しく。
「エミリー王女様。お聞きの通りです。よろしいですね!?」
申し訳ない想いのエミリーは。
「はい、申し訳ありません。よろしくお願いします」
テーブルに置かれた魔法の鏡。村長は、魔法の杖を持ち、鏡に向かって魔法の呪文を唱え。
すると、鏡の中から村長と同じくらい年の男、鏡の主が現れ。
「村長。願いを叶えたい者は誰だね?」
エミリーは、鏡の主を目の前にして。
「私です!」
「ほぉ、お嬢さんでしたか。私に何を願う? 話してみよ」
「私のお祖父さんを探してください」
「わかった。鏡に手を置きなさい」
エミリーは躊躇なく、右手を鏡な置き。
「これでいい?」
「……なるほど、王女でしたか……。強い意志を持っている。そして優しい心を持っている……。わかった。そなたの望みを叶えてやろう」
「ありがとうございます!」
鏡の主は目を瞑り。
「……見える。前王が山道を歩いている。なんだ、今の? 空から女の子が落ちてきた。その女の子を助けて……前王の光が消えている……」
エミリーは動揺し。
「鏡の主さん。光が消えているって、どういういう意味ですか?」
「私にもわからない。どういうことだ? 私の力が及ばないはずがない。しかし……」
村長の表情が青ざめながら。
「まさか、光が消えたって……前王様に身に何か」
鏡の主は、険しい表情を見せ。
「大丈夫だ。前王は生きている。間違いない! ただ、わからない」
エミリーは鏡の主を凝視しながら。
「何がわからないの?」
「前王の姿が見えない」
「えっ!? 今、生きているって」
「確かに、それは間違いない」
「だったら、今何処にいるの? 姿が見えないって……」
「ちょっと待ってくれないか!? 静かにしてくれ!」
「ごめんなさい」
ピンと張り詰めた空気のなか、静まり返り。鏡の主は、困惑気味の中、再び目を瞑り何か考えているか、1分が経ち。鏡の主が目を開け。
「わかった! そういうことか……。しかし、あの魔法は使った形跡があるが、何故だ!?」
あの魔法と聞き、村長は。
「まさか、いったい誰があの魔法を!?」
鏡の主は、指を指した。
「そこにいる小さい女の子……。何故、あの魔法を使って生きている!?」
鏡の主が指さす方には。村長は呆然とし。
「まさか、エリーが使ったのか!? あの魔法を」
村長の口からエリーの名を聞き、メアリーは困惑気味の中、立ち上がり。
「村長、どういうことですか!?」
すると、村長は真剣な表情でエリーを見て。
「エリー、ここに来なさい」
「なんで?」
「いいからここに来なさい!」
「はーい」
エリーは村長の目の前に立つと。いきなりエリーに、左腕を見せなさいと言い。エリーは訳がわからない。村長は、エリー左の袖をめくり上げ。
「ない!? 何処にもない!? 何故だ!?」
村長の行動と慌てぶりに、メアリーは困惑し。
「村長! 妹が、エリーが何をしたって言うのですか!?」
すると、村長は何処か悲しげな表情で。
「……死んだ人間を生き返らせる魔法をエリーが使ったようだ……」
メアリーは呆然とし。
「村長、エリーはまだ魔法使いの見習い中……。そもそも、私でさえ知らないその魔法を知っているとは思えません!」
その時、エリーが今にも泣き出しそうな表情で。
「お姉ちゃん……。ごめんなさい。私……」
エリーは泣き出し。
メアリーは、エリーのそばに行き、腰を落とし。エリーを見て。
「エリー、何で泣くの!?」
「……だって、お母さんが魔法の本を隠しているところを見ちゃったの……。お姉ちゃんのような魔法使いに早くなりたくて……」、また泣き出し。
「泣いてたら、わかんないでしょ?」
エリーは涙を拭きながら。
「……初めて箒に乗れた時、お母さんに内緒で魔法の本を持ち出して……。箒に乗って練習したら、急に強い風が吹いて……」
この時、エリーは箒にまたがり、あの鍵が落ちていた山の上空辺りで、箒の飛行練習をしていた。その時、突然の突風にあおられたエリーは、バランスを崩し、箒の制御ができなくなり、叫びながら山の中に落ちていった。
その叫び声が聞こえた前王は上空を見上げ、突然何かが落ちて来る。咄嗟にエリーを抱きかかえ、その反動で地面に倒れ。この時、胸ポケットに入れていた鍵がポケットから落ち。
エリーは抱きかかえられたまま目を開けると、木々の隙間から空が見え、前王の声が聞こえ。
「100番目のレシピが……」
エリーはこの聞き覚えのある声に驚き、起き上がり後ろを振り返ると、そこには姉の友達の前王がいる。
この状況がどんな状況なのか、エリーはわかり。祖父のことを思いだし、息をしていない、心臓も止まっている前王を見て。お祖父ちゃんを助けないと、そう思ったエリー。
どうしても前王を助けたい一心で、ショルダーバックの中から魔法の本を取り出し、無我夢中で本のページをめくり、人間を生き返させる魔法が書いてある記述を見つけ。エリーはその魔法の呪文を唱えた。
すると、前王の体が光り出し、眩しい光を放ち。前王の姿が消え。
エリーはいったい何が起こったのかわからない。その時、エリーを呼ぶ声が聞こえ。その声はメアリーの声。エリーは怒られると思った。黙って本を持ち出し、こんなことになった。怖くて、怖くて、何も言えなかった。
その事を知ったメアリーは。
「……エリーが申し訳ないことをしました。すみませんでした! ごめんなさい、ごめんなさい……」
メアリー気が動転し、その場に泣き崩れ。エミリーは2人に近寄り。
「……2人とも泣かないで、お願いだから……。お願いだから、泣かないでよ……!」
しかし、2人は泣き止まず。
「お願いだから、泣かないでよ!」
いっこうに泣き止まない、この2人。
「もう泣くのはやめなさい!」
つい怒鳴ったエミリー。
2人はやっと泣き止み。エミリーは涙をこらえ。
「泣きたいのは私の方よ……! でも私は泣かない。お祖父ちゃんを見つけるまでは、絶対に泣かない!」
村長は、その光景を黙って見ていた。しかし、鏡の主の発言に納得がいかない。
「鏡の主様、御騒がしました。しかし、これはいったいどういうことですか……? 人間を生き返らせるには、自分の命を差し出さないことには、この魔法はかけられません。現に、エリーの左手には星の示しがない。それに、既に3ヶ月が経っている。もし前王が生き返っているならば、エリーは1ヶ月後にはこの世にいないはず。納得がいきません。何故、前王様が生きていると言えるのですか!?」
「そこなんだよ。私がわからないのは……。しかし、前王が生きていることは間違いない。そうだ、もう1つ言っておかないといけないことがある」
鏡の主は、エミリーを見て。
「王女。王女が持っている……それは何と言うのだ、そのテーブルの下にある……」
「……これですか? リュックです」
「それはリュックと言うのか。3ヶ月前に別の国の町から来た者が、前王のリュックを拾い。その者があの町に住みつき……。リュックの中に入っていた、レシピとかいう本を使ってお菓子とかいう食べ物を作っている。前王を見つけたいなら、その本を返してもらい。そして、その本の破れたページ、100番目のレシピがわかれば、前王は見つかるはず。今回は長居をした。わしは、これで失礼する」
エミリーは鏡の主に言うことに、困惑気味だが、鏡の主に礼を言い。鏡の主は鏡の中に戻って行った。
「村長、ご協力ありがとうございました。私、あの町に行きます。行くわよ! メアリー!」
「……行くって言われても、エリーが申し訳ないことを……」
エミリーは、エリーのそばに行き。
「エリーちゃん、これで涙を拭いて……。よく話してくれたね。辛かったね。あなたは何も悪くない。誰も悪くはないの。あなたのおかげで、お祖父ちゃんは生き返っているから、ありがとうお祖父さんを助けてくれて。でも大丈夫。お祖父ちゃんは、必ず私達が探し出すから。見つかるまでは、誰にもこのことは内緒よ。約束できる?」
「エミリー王女様。許してくれるの?」
「当たり前じゃないの。あなたは悪くない。許してあげる」
「エリー約束する。絶対に約束守るから」
「それでいい。私は、魔法のことはわからない。けどね、使っていい魔法と使ってはいけない魔法がるの。もし間違った使い方をして、メアリーお姉ちゃんがいなくなったらどうする?」
「絶対にいや! いやだからね。いなくなったら」
「でしょ? だから、お母さんに教えてもらいなさい」
「わかった」
エミリーは村長の方を向き。
「村長、聞いての通りこのことは、ここだけの話にしていただけないでしょうか?」
「本当にそれでいいのかね?」
「ことを荒立てては、この村の皆さんが辛い思いをすると思うのです。それだったら、お祖父さんを見つけてからでも遅くはないと思います」
「わかった。このことは村長の私が責任を持つ。これから、あの町に行くのかね?」
「今から行ってみます」
「そう言えば、家出同然だと聞きましたが?」
「はい、そうです。置手紙をしてきました」
「どうしても、王様にはこのことを知られずに、探してあげたいということでよろしいのですね?」
「はい。王様は私のことも、お祖父さんのことも、ちっともわかってくれなかった。でも、今2つだけわかったことがあります。1つは、私1人では何もできないこと。もう1つは、相手の気持ちを考えること……。今でも思うのですが、身内を守れないのに何で大勢の人を守れるのかって、思っています。どうしても私はわからないのです。王様が何を考えているか……。お祖父さんを探し出して、もう一度話をしてみます」
「わかりました。私達も協力致します」
「これ以上、ご迷惑をおかけする訳にはいきません」
「エミリー王女様。申し訳ありませんが、この件はもうエミリー王女様お1人の問題ではないのです。この村の問題でもあります。及ばずながらお力になります」
「……そうですね。皆さんの力をお借りします。こんな私ですが、よろしくお願いします」
「そうと決まれば、まずは村のみんなにエミリー王女様がここに来たことを喋らないように通達しときましょう……。あとは、お城の様子も気かがりでかので、誰か探りに行かせましょう……。その連絡後に、この村を出てはいかがでしょうか?」
「わかりました。お願いします。あっ、偵察の件は私が許可します。これでもまだ王女ですので」
「お気遣い感謝します」
村長から連絡があるまで、メアリーの家で待機ということになり。メアリーの家に向かったエミリーたちだった。
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