真実を突きつけられ

真実を突きつけられ(1)

 エミリーは、この世の中に魔法が存在することを前王から聞き知っていた。魔法は無限の可能性を秘めている。不可能を可能にするともできる。しかし、魔法も万能ではない、できないこともある。

 エミリーはメアリーに、魔法で前王を探すことはできないのか、聞いた。

 すると、人探しの魔法はないと言う。何故ないのか。おそらく魔法を使ってまで人を探すという事態になったことがないから。だから、そんな魔法はないのだと言う。


 魔法村は、メアリーが暮らす場所。目には見えない魔法の境界線を張り、誰一人近づくことはできない、誰一人ここから出ることはできない。まるで陸の孤島のようにも思える。


 これから3人は魔法村に行くのだが。魔法村に行く手段として、魔法で瞬間移動できる。しかし、メアリーは一度いいからクッキーの肩に乗って魔法村に行きたいと言い出し。

 再びクッキーは元の背丈に戻り。2人ともクッキーの肩に乗り。落ちないようにクッキーに捕まり。メアリーは、魔法村の方角を指し。クッキーは走り出した。

 森の中を走るクッキー。木がクッキーを避け、クッキーの行く道を作っている。その光景に驚いているメアリー。クッキーの足が速すぎて、景色を見る状態ではない、速すぎる。しかし、なんか楽しい2人。

 3分くらい経ち。目の前には大きな川が見え。メアリーはクッキーを呼び止め。川の手前で止まり。

 メアリーは魔法で箒を呼び出し。箒にまたがり、上空に上がり辺りを見渡している。

「クッキー、この方角に走ってくれる!? 走って行ったら、木で作った壁が見えてくるから、そこで止まって」

「わかった!」


 クッキーは、また2人を肩に乗せ走り出した。川は真っ二つ割れ道ができ走り抜けて行き、驚く2人。

 しばらく走ると、木の壁が見え。メアリーはクッキーを呼び止め。目の前には、クッキーより少し高い木の壁が。

「クッキー、この壁通り抜けたら降ろしてくれる?」

「この壁通れないよ」

「通れないの?」

「人間が作った物は通れない」

「そうなんだ。わかった……。だったら壁づたいを右の方に歩いてくれる?」

「こっちね。わかった」

 しばらく歩くと。クッキーが人の気配に気づき。

「あそこに誰かいるよ?」、指を指し。

「大丈夫、見張りの役人だから。クッキーあそこにいる人のところに行って」

「わかった」

 少し歩き。見張りの役人が数人いる。

 すると、その中の1人が、クッキーのそばに来た。

「エミリー王女様ですね!? お待ちしていました。こちらへどうぞ。村長がお待ちしております」

 ここにいる見張りの役人たちは、クッキーを見て怖がる様子はなく。少し安心するクッキー。

 クッキーは大きな正門をくぐり。見張りの役人の後をついて行き。

 すると、辺りは家々が見え始め。大勢の人だかりが。しかし、ここの村人たちは、クッキーを見ても怖がらない。そこへ、1人の少女がクッキーの前に現れ。

「あっ! お姉ちゃんだ!」

「エリー、家に入なさいって言ったでしょ!」

「だって、エミリー王女様が来るって言うから」

「家に戻っていなさい!」

「何で? お姉ちゃんばっかり、ずるいー!」

「帰りなさい!」

 そのやり取り見ていたエミリーは。

「エリーちゃん! 一緒に村長さんところへ行こう!?」


 その発言に困惑気味のメアリーは。

「エミリー、ダメだって!」

 エリーは嬉しそうに。

「エミリー王女様、ありがとうございます。本物だー! 可愛い!」

「メアリー、可愛いってさ!」

「私、知らないからね」

 不機嫌なメアリーを肩に、クッキーは歩いていると。見張りの役人が立ち止り。

「エミリー王女様。ここが村長の家です」

「クッキー、私達を降ろしてくれる?」

「わかった」

 2人はクッキーから降りると。村長の家の玄関から誰か出て来た。前王と同じくらい年の男が1人。

「エミリー王女様。お待ちしておりました。私が、この村の村長です」

「エミリーです。お招きありがとうございます」

「さぁ、こちらへどうぞ! 中にお入りください」

「すみません。ちょっと待ってください」

「何か?」

「メアリー、クッキーを小さくしてあげて!?」

「クッキーも一緒なの?」

「当たり前でしょう」

「わかった」

 メアリーは、魔法の呪文を唱え。クッキーは背丈が小さくなり。

 すると、エリーも一緒に行くと言い出し。メアリーは反対し、エリーの手を握り無理やり家に連れ戻そうとすると、エリーは泣き出し。それを見ていたエミリーは。

「村長、申し訳ありません。エリーさんも一緒にお願いします」

「わかりました」

「エリーちゃん、良かったね! 一緒にいていいって!」

「ヤッター! エミリーお姉ちゃん、ありがとう!」

 私がお姉ちゃんか、いいかもしんないと思うエミリー。その後ろにいる、メアリーは不機嫌。

「もー、エミリーは甘いんだから」

 その発言に村長が、メアリーに声をかけ。

「メアリー、エミリー王女様でしょう!? 失礼のないように」

「ごめんなさい、村長」

 そのことに対してエミリーは。

「村長、私は気にしていませんので、お気遣いなく」

「お気遣いありがとうございます。では、こちらへどうぞ」


 村長の案内で4人は、村長の家の中へ入ると。あの山小屋と同じように家の中は広い。4人は、割と広い部屋に通されると。大きなテーブルと椅子があり。

「エミリー王女様、お連れの方も座ってください。メアリー、エリーも座りなさい……。エミリー王女様。話は今朝メアリーから聞きました。前王様の行方がわからないとのこと……。何か手かがりは見つかりましたでしょうか?」


 メアリーは、朝食を作る前に村長に、昨日のエミリーとの出来事を話し、相談にのってもらい。村長はこの部屋の窓の外を見ながら。前王様は約束を破る男ではない。前王様の身に何か起こった、それはない。何かトラブルに巻き込まれた、それもないはず。いずれにせよ、あの鍵を持っていれば鍵が前王様を守ってくれる。とにかく、前王様の行方を探さないと。その為にも手がかりを探す必要がある。最悪の場合はあれを使うしかない。

 しかし、クッキーさんはともかく、エミリー王女様がどうして結界を潜り抜けたのか。ここには入れないはず。前王は別として。村長はそんなことを思い。メアリーは、エミリーがどうして結界を潜り抜けたのか。このことに、何も思わなかった。


 エミリーはリュックを下ろし、リュックの中から、あの鍵を村長に渡し。鍵のことを話した。

 すると、村長は愕然とし。突然メアリーが立ち上がり。

「村長! お願いがあります。村長のお力で前王様の行方を探していただけないのでしょうか?」

「……仕方がありません。あの鏡を使うしかないでしょう。エミリー王女様。しばらく席を外します。少々お待ちください」

 村長は部屋を出た。

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