あのレシピ本
あのレシピ本(1)
前王とメアリーと出会いは、今から4年前、メアリーが8歳の頃。
メアリーは、魔法使いとしてずば抜けたセンスを持ち、魔法使いの天才と言われ、大人顔負け。そのことを1番に喜んでいたのは、メアリーの祖父だった。
この頃、メアリーは祖父に喜んでもらう為に、最上級者用の魔法を覚えるのに一所懸命。しかし、突然の魔法禁止命令が出たことで、祖父に最上級者用の魔法を見せることができなくなり。
そんな時に、心臓が弱かった祖父が亡くなり。メアリーは、悔しさと悲しみで泣きながら家を飛び出し、箒で飛行していると。町人たちに飛行しているところを目撃され、町の広場にメアリーが降りてきたところを魔法禁止違反だと言い、町人たちに捕まってしまった。この町の中にも魔法をよく思わない連中もいる。
この時、メアリーはただただ泣くばかりで。何処から来たのか、名前を聞いても答えない。町人たちの問には何も答えない。
町人たちは、これではらちが明かないと判断し。そこで、このことを町の役人に知らせに行こうとすると。そこへ、食材探しの旅から帰る途中の前王が通りかかり、この騒ぎの訳を聞き。
「この件は、私に任して欲しい」
前王がそう頼むと。町人たちはすぐに承諾し。この時初めて、前王とメアリーが出会い、
メアリーは前王とは知らずにいた。
前王はメアリーをおんぶして、お城には行かず。町外れの小高い山の中腹にある、山小屋に向かい。しばらく歩いていると、メアリーは泣きつかれ、眠っていた。
メアリーをおんぶした前王は、山小屋に着き。山小屋の中に入ると、メアリーが目を覚まし。
「おじいちゃん、ここは?」
「私の家みたいのものかな」
「そうなんだ」
メアリーは、辺りをキョロキョロしている。
前王は、メアリーが何故、町の広場で泣いていたのか訳を聞きくと。
突然前王は、真剣な表情で。
「メアリーすまなかった! 許してくれ!」
「何で、おじいちゃんが謝るの?」
「……メアリー、おじいさんが必ず、魔法を使えるようにするから安心しなさい」
突然、見知らぬおじいさんにそう言われたメアリーは、何処となく祖父に似ていた前王の言葉を信じ。大好きな魔法がまたできる。しかし、複雑な気持ちだった。
この出会いがきっかけで、メアリーは前王と仲良くなり。この後、条件付きで魔法が使えるようになった。
あの山小屋が、今エミリーたちがいる山小屋。
その山小屋が建つ前、前王がまだ王であった頃、その山小屋から見える町、メアリーが町人たちに捕まった町には。町もなく、荒れ果てた土地があるだけ。
そこで、畑や町を造る計画になり、王自ら指揮を執り。その為、一時的にこの辺りにたくさんの山小屋を建て。そして、畑や町は完成し。山小屋を1件だけ残した。
王は、あの町の成長を視察する為に、山小屋を寝泊りに利用することになり。王位座を譲ってからは、1人であの町を視察し。今から4年前までは、その山小屋はただの山小屋だった。メアリーの魔法で、料理研究所兼、いわば別荘みたいな感じの魔法の山小屋になった。
前王の山小屋がある場所は、魔法村の領域にあり。魔法村の村長と前王は、昔から仲が良く。10年前の紛争にこの国も巻き込まれたが、防御の魔法では世界一と名を轟かせていたこともあり、この国は被害を受けなかった。
エミリーはいろんなことを知り。
すると、突然メアリーが立ち上がり。
「そうか、そうだよ! おじいちゃんは大丈夫だよ!」
「えっ!? 何? どういうこと?」
「だから、鍵! 鍵だよ! 身を守る鍵。あれを持っている限りおじいちゃんは大丈夫ってこと!」
エミリーは鍵と言われとも何のことだか、さっぱりわからない。
身を守る鍵とは。前王は家来を連れて旅はしない。そのことを知っている魔法村の村長は、1人旅は余りにも危険ということで、前王がいつも持ち歩いている鍵に、身を守る為の魔法を村長自ら魔法をかけた。この魔法により、あらゆることから身を守ってくれる。
このことを知り、エミリーは、あの部屋の鍵だと思い。前王は無事だということがわかり、これで一安心。ただ、問題なのは、何故、帰って来ないのか、そこだけだった。
メアリーはエミリーに、ここへ来る途中に前王のことで何か気になることがなかったか、念の為に聞くと。特になく。ただ、クッキーと知り会った場所から、先のことはわからないと。それもそのはず、クッキーの足が速く。景色を見る余裕すらなかった。
それと、メアリーはもう一つエミリーに質問した。前王が出かける前に変わった様子はなかったか。その質問に、特に変わった様子はなかったと言った。
2人はもう一度は話し合い。帰って来ない原因は、必ず城からここまでの道のりにあると思い、探索することに。しかし、この部屋にある時計は、午後2時50分。探索するには、時間的に遅いので、明日の朝9時から探索することに。
2人はこの時、何か忘れていることに気づき。そう、クッキーのことをほったらかしにしていた。
2人はクッキーに、ほったらかしにしたことを謝ると、クッキーも謝り。その訳を聞くと。クッキーは、2人の話を聞いてはおらず。2人に背を向けて、リュックに入っていたパンやクッキーをムシャムシャと食べ。どうやら、相当お腹がすいていたことと。あまりの美味しさに、リュックに入っていた食べ物を全部食べていた。
エミリーは、怒る気にはなれず、むしろ嬉しかったようで。美味しいと言って食べてくれたことが。しかし、勝手に食べないでねと、優しく言った。
この光景にメアリーは、クッキーが何者なのか気になり。クッキーに直接聞かず、エミリーに聞くと、さっき出会った時のことを話し。そして2人は、クッキーことをあれこれ詮索しないように決め。エミリーも気になることが。
「メアリー、ちょっといい?」
「何?」
「さっき話していたレシピ本だけど。100ページが破れてるって言ってたけど、どういうこと? あれって、100ページにどんなレシピを書いていいのかわからないってことじゃないの?」
「あっ、そのことね!? だったら、この部屋の説明したあとでもいい?」
「別にいいけど」
クッキーには、説明が終わるまでじっとしてもらうように言い。
この部屋は、出入口は1ヶ所だけ。東側にドアがあり。その近くに丸いテーブルと椅子4つ。
東側には、棚が置いてあり、お菓子や料理に必要な材料などが入っている。次に、家庭用冷蔵庫が2台並び。その隣には電子レンジ2台とオーブンレンジ2台が棚の上に並び。食器棚がある。
南側には、システムキッチンと業務用キッチンが並び。その隣には、ガスコンロ3口とIH調理器2口。その上には換気扇ある。
西側には、製菓用デッキオーブンとコンベクションオーブン。パン用のデッキオーブンに、メアリー特製の急速粗熱取り機。
北側には、エミリー・メアリーの部屋、おじいさんの部屋と書斎、トイレにお風呂。それぞれにドアがついている
中央には、調理台が3つ横に並び。ステンレスの調理台2台に、大理石の調理台。
その調理台下には、調理器具がたくさん置いてある。そして、ここにもあの地下室と同じ、業務用の冷蔵庫と冷凍庫がある。
この部屋の説明は、2時間ほどで終わり。エミリーは、ただただ驚いているばかりで、調理器具の使い方は、記憶力の良さでカバーし、一通り覚え。
メアリーは、お菓子作りや料理が得意だとエミリーは思っていた。ところが、料理は苦手、お菓子は何一つ作ったことがなく、食べるのが専門。それなのに、何故、ここにある調理器具の使い方を覚えているか。疑問に思ったが、魔法の凄さに圧倒されていた。
「メアリーって、凄いね。魔法でこんなのが作れるなんて」
「それ、違うよ。私、作ってないし」
「えっ!? 意味分かんな。どういうこと?」
「知りたい? だよねー!」、ともったいぶり。
「もー、何なのよー」
「仕方たないなー。私の秘密、教えてあげる。といっても、このことはおじいさんと魔法村の人たちは、みんな知っているけどね。ただ、このことは他の人には内緒だからね」
「わかった」
メアリーは前王の書斎に行き。両手に何かを抱え、抱えた物をテーブル上に置いた。
「この本、ちょっと見てもらえる? わからないことは、あとで教えるから」
「……わかった」
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