あのレシピ本(2)

 テーブル上に置かれた本は、全部10冊。

 1冊目は、辞書。2019年度版と書いてある。2冊目は、『プロもおすすめ、調理器具の選び方』。3冊目は、『おすすめ文具』。4冊目は、『業務用厨房機器の全て』。5冊目は、『厳選、お菓子100選』。

 6冊面は、『お店を始めるには』。7冊目は、『アウトドア用品』。8冊目は、『雑貨、ファッション、アンティーク、厳選』。9冊目は、『おすすめ料理(特集、パン)』。10冊目は、『2019年おすすめ家電』。


 エミリーは、これらの本を一通り見て思った。この部屋にある調理器具等は、本に載っている物と同じもの。

 これらは、メアリーの魔法を使って、この本の中から取り出し物。他にも、いろいろと本から取り出し。わからない言葉は辞書で調べ。ただ、懐中時計は、本から取り出した後、特殊な魔法をかけていた。


 今から12年前、『厳選、お菓子100選』と『おすすめ料理(特集、パン)』の本が2冊、この山小屋のそばに落ちていた。残りの8冊とあのバラの写真が印刷された缶の箱と一緒に、4年前にこの山小屋に中に突然現れ。前王が言うには、おそらくこの本は未来の本。この時代の本ではないと。

 あと、『厳選、お菓子100選』の本の表紙の裏には、エミリーの名が書いてあり。100番目のレシピのページは破られていた。

 エミリーは、このレシピ本と前王が作ったレシピ本と比較すると、前王の方がより工夫がされていた。


 メアリーの魔法は、今も進化している。今から4年前、前王は王に内緒で、料理研究室に1度だけメアリーに来てもらい。この日の3日前に、前王がこんなことを言った。

「魔法でこの本の中身を取り出すことができればいいのだが」

 メアリーは、前王の役に立ちたい、その想いでいろんな魔法の呪文を組み合わせ、ある魔法の呪文を生み出し。本の中からいろんな物を取り出すことに成功した。

 メアリーは、何故、ここの調理器具の使い方を覚えていたのか。自然に覚えたと言っていた。エミリーは、知りたいことを知り。


 メアリーは何かを見ている。この部屋にある時計は、午後5時30分。

「エミリー。ちょっと遅くなったけど、夕食を準備するから、デザートを準備してくれる?」

「わかった。ちょっと待って」

「何? どうかした?」

「料理、できるの!?」

 エミリーは心配そうな顔をして、メアリーを見ている。

「はぁ!? 失礼な。料理は苦って言ったけど、作れないとは言ってないでしょ!?」

「ごめんなさい」

「別に謝らなくてもいいけど、そのかわり、とびっきりのデザートを作ってよ。あっ、それと、私、外にいるから、私が呼びに来るまで外に出ないでね」

「わかった。あっ、そうだ。忘れてた。材料とパティシエ用の服、用意してもらいたいんだけど」

 メアリーは魔法の呪文を唱えると。メアリーの右手に魔法の杖が現れ。本に向かって魔法の杖を向け、魔法の呪文を唱えた。

 すると、本の中から材料とパティシエ用の服が飛び出し。更に魔法の呪文を唱えると、一瞬でエミリーの着ている服がパティシエ用の服に変わり。エミリーは思わず拍手し、大喜び。

「クッキー見た!? 今の、凄いよね!」 

 メアリーはその光景に。

「まるで子供ね」、でも嬉しそう。

「私、子供ですけど。そっちだって、大人!?」

「何それ!? そう言えば、あの時、おじいちゃんもエミリーのように喜んでくれたっけ。あっ、急がないと、あとはお願いね」

 メアリーは外へ出て行き。エミリーは、多分あの日、旅の心得を教えてくれた時に、大喜びしたあの時の前王のことだと思った。


 さて、エミリーはどんなデザートを作るか。エミリーは調理開始した。

 初めて使う調理器具。戸惑いながらも何とかできそう。クッキーは、その光景を嬉しそうに見ていた。

 調理開始から、2時間経ち。メアリーが戻ってきた。

「2人とも、遅くなってごめんなさい!」

 クッキーはメアリーを呼び。

「何? どうかしたの?」

「あれ見てよ!?」

 クッキーが指差した方にはエミリーがいる。見ると、楽しそうに何かを作っている。その光景があまりにも楽しそうで。何がそんなに楽しいか、メアリーはそう思い。クッキーの隣の椅子に座りその光景を見ていると。


 エミリーが何かを作り上げ。  

「できましたね。なかなかのできばえかな!? あのー、そこのお2人さん、さっきからジッと見てない!?」


 メアリーが首をかしげて。

「何でそんなに楽しい表情をするの?」

「作るのが楽しいからに決まってるじゃないの!」

「そうなの? おじいちゃんが料理してる時は、なんか、実験って感じがして、いつも真剣な顔をしてたから……」

「メアリーも何か作ってみる? 楽しいよ」

「そんなに楽しいんだったら、やってみようかな!?」

 その時、クッキーが何か言いたそうにしている。

「あのー、お腹すいたんですけど」

 また、クッキーをほったらかしにするところだった。

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