メアリーとの出会い(2)

 メアリーは改めて、エミリーがここに来た経緯を聞き。

「でも驚いた。あのおじいちゃんがまさか、前王様だったなんて……覚えていてくれたんだ……。ごめんなさい。私がアイスを食べたいって言ったばかりに……」

 メアリーは、おじいさんのことが急に心配になり、自分を責め、涙をこぼし、エミリーに謝っていた。

 そんなメアリーに、エミリーは優しく声をかけ。

「メアリーのせいではないから泣かないで、お祖父ちゃん、あなたに感謝していたよ。いろいろ手伝ってくれるって、でも魔法使いだったなんて知らなかった」

「……ごめんなさい」

「だからもう謝らなくていいから、メアリーは悪くないから。そうだ、お祖父ちゃんのお友達なら、今日から私も友達ね!」

「……なんでそうなるわけ!? 勝手に決めないでよね!?」

「えっ!? ダメなの? 何でダメなの?」

「ダメっとは言ってないでしょう!?」

「じゃ友達決定ね!」

「だから、何でそうなるわけ!?」

「だってほら、私、王女様だから!」

「はぁ!? そうきましたか。王女様の特権ってやつですか!? それって、ずるくない!?」

「だって私、前から友達になりたいと思ったんだもん」

 メアリーをすがるような目でジッと見ているエミリーに、メアリーは。

「……わかった! わかったから、そんな目で見ないでよね。友達になればいいんでしょう!?」

 エミリーは、首を縦に2回振り、大喜び。これに便乗してクッキーもメアリーの友達になった。

 すると、エミリーが何か思い出したようで。

「メアリー、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

「いいけど、何?」

「私、わからなくって、何でお祖父ちゃんは、メアリーのことを詳しく教えてくれなかったの? 何でだと思う?」

 エミリーは、あの料理研究室での出来事を話すと。メアリーは少しうつむき加減で。

「それは、魔法が原因ね」

「何で?」

 何でと聞かれ、メアリーは少し寂しげ表情であまり答えたく様子だったが、それでも話すべきだと。その話し内容だが、順を追って話すと。


 昔、何処かの国の魔法使いが、魔法でお金を盗み、人に危害を加え。何も関係ない魔法使いまでもが目の敵にされていた。

 そして、いつしか魔法使いを紛争に巻き込み。魔法は、国を滅ぼす。このことがあちこちの国に広まり。国民たちは魔法の存在に脅え、魔法の共存が難しくなり。魔法は禁止になり、衰退の一歩たどっている。


 ここの魔法の村の考え方は、魔法は身を守る為に使い、人を助けたり、人の役に立てってこその魔法。しかし、この村でも風評被害にあっており、魔法使いを辞める人もいた。

 そこで、王は、今から4年前。魔法禁止を魔法村に言い渡し。それを知った前王は、断固反対し、魔法禁止令を解くように王に交渉を続け。その甲斐があり、条件付きで魔法禁止令を解いた。

 その条件とは、魔法村の区域に結界を張り。その中で魔法の使用を許可し。魔法村からの出入りを禁止し。外部の人間もそれを禁止した。やむを得ない場合のみ、王の許可がいる。そして、もし何か問題でもおこしたら、魔法を禁止することになっていた。

 王はどういうわけか、魔法村のことをよく思っていない。何が原因なのか前王にはそれがわからない。従って、無暗に魔法のことは話せなかった。


 エミリーは、そのことを知り、ショックを受け。

「……そんな事情があったなんて……ごめんなさい。私、何も知らなくて」

「何で、エミリーが謝るの?」

「だって、私、王女だし」

「だから、仕方がないこともあるのよ」

「メアリーって大人ね……。私だったら、やっぱり辛いな。私なら、結界を解いたり。町のみんなに魔法のことをもっと理解してもらいたいと思うけど……私にそんな力もないし、何もできない。ごめんなさい」

「だから、謝らなくっていいから……ありがとう。そんなに思ってくれて」

「私、家出同然で来ちゃったし、もうお城には戻れない……。お父さんがお祖父ちゃんを探してくれないから、私が探すしかないと思ってここに来たけど」

「あんたって、本当にバカね」

「バカって何よ!?」

「でも、私は好きだな、無茶で真っ直ぐなところ」

「だったら私達、似た者どうってことね!」

「似た者同士か、そりゃいいわね……!」

 メアリーは思わず、笑ってしまい。

「もー、何がおかしいのよ!?」

「ごめんごめん、で、これから先どうするの?」

「わかんない。メアリーに会えば、何かわかると思って来たから」

「はぁ!? 何それ!? 無計画すぎる……。仕方ないなー。話を整理すると、3ヶ月前に城を出た後、直接この山小屋に来るはずだったと言うことなんだよね!? それなら、おかしいなー。もしこの山小屋に来たら、この懐中時計のアラームが鳴るはず……。しかし、アラームは鳴らなかった、ってことは。ここには来ていないってことになるよね……」


 エミリーは、懐中時計のアラームが鳴る、意味がわからない。

 メアリーは、いつもこの山小屋いるとは限らない。そこで、おじいさんがこの山小屋のドアを開けると、懐中時計が音で教えてくれる。その音をエミリーは聞くと、聞いたこともない音だった。

「このアラームが鳴らなかったってことは、城からこの山小屋に来るまでの間に、何かあったってこと?」

「エミリーの話通りなら、そうなるよね……」

 前王にいったい何があったのか。2人は考え込んでいる。


 その時、メアリーがテーブルの上にあったタッパーを見て。

「あっ! チョコレートが全部なくなってる!?」

 すると、クッキーが申し訳なさそうな表情で。

「……ごめんなさい。あんまり美味しかったから、つい全部食べちゃって」

「あとでゆっくり食べようと思ったのに……」

 それを見て、エミリーは辺りをキョロキヨョロし。メアリーがそれに気づき。

「エミリー、どうかしたの?」

「ここって、料理研究所だよね?」

「そうだけど、それがどうかしたの?」

「だったら、お菓子の材料があるはずなんだけど!?」

「えっ!? 作ってくれるの!? ミルクチョコレート!?」

「材料はある?」

「あるけど……」

 メアリーは、何かを思い出し、考え込んでいる。

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