メアリーとの出会い

メアリーとの出会い(1)

 エミリーの目の前には1件の山小屋。ここにメアリーという女の子が住んでいるのか。エミリーは、クッキーに抱きかかえられ、お姫様だっこから降り。辺りを見渡すと、山小屋が1軒あるだけで、林の間からたくさんの家が見える。エミリーは山小屋の出入口と思われるドアをノックした。

「すみません、メアリーさんいますか?」

 返事がない。

「すみません、誰かいませんか?」

 返事がなく、誰もいない。

「もー、何でこんな時に留守なのよ……どうしょう?」

 エミリーは困っていると。

「あなたたち、そこで何しているの?」

 エミリーはその声に驚き。後ろを振り返り、辺りを見渡し。クッキー以外、誰もいない。


「あのー! 聞こえないの!? そこで何をしているのって、言ってるでしょ!?」

 また同じ声、その声は女の声。エミリーには、声だけ聞こえ、姿が見えない。

「あのー、私達に声をかけるのは誰?」

 その時、クッキーが何かに気づき。

「エミリー! 上!」

「上!?」

 エミリーは見上げると。頭上には、箒にまたがり、誰かわからないがこちらを見ている。

「私に声をかけたのは、あなたなの?」

「そうだけど、この魔法村では、見かけない子ね。この山小屋に何か用なの?」

「あなた、ここの家の人なの?」

「違うよ」

「えっ!? 違うの!? じゃ、この家の人、知ってる?」

「知ってるけど、何か用なの?」

「聞きたいことがあって、あのー、何でそこから話すの?」

「あなたの隣に、大きな生き物がいるでしょう!?」

「私の友達だけど」

「友達なの!?」

「もしかして、怖いの? 大丈夫。何もしないよ。体は大きいけど、優しいし、ちょっと泣き虫さんだけど、私の大事な友達なの」


 すると、その発言にクッキーが何か言いたそう。

「泣き虫は言い過ぎ」

「ごめんなさい。言い過ぎました。あっ、そうだ。もしかして、クッキーが言ってた町って、あの林の向こうなの?」

 エミリーの指差す方には、さっき見た、林の向こうにあるたくさんの家。

「……そうだよ」

「私があそこに行って、町の人たちに文句言ってあげるから、外見で判断するなって」

「いいよ、もうすんだことだから」

「すんでないよ! 謝ってもらわないと」


 すると、頭上の女の子が。

「あのー、そこの人! 私のこと、ほったらかしにしないでくれる!?」

 エミリーは頭上を見上げ。

「ごめんなさい。忘れてました」

「普通、忘れるかな!?」

「それより、そこから降りて来てもらえます。首が痛いんですけど」

「……分かったわよ。降りるから」

 上空より降りて来る女の子。髪はショートで、服装はエミリーと似ている。

「さっきから気になってたんだけど、その服とズボン……あなた、もしかして、エミリーなの?」

「そうだけど、えっ!? もしかして、あなたがメアリーなの!?」

「そうだよ」

「あなただったのね。ねぇ、お祖父ちゃんは何処に行った? あなたに会いに行くって言ったきりで帰って来ないの……! ねぇ! 教えてよ! お願い! 教えてよ、お願い……」

 エミリーは、メアリーの服を掴みながら、泣き崩れてしまい。それを見た、クッキーはメアリーを睨み。

「……泣かした。エミリーを泣かしたな。許さない!」

 クッキーはメアリーを捕まえようと。

「ちょっと待って! どういうこと? 帰って来ないって、私、半年以上前に会ったきりで、それ以来会ってなし、私も心配してたんだから」

「クッキー、ダメ! メアリーは悪くない。悪くないの、私、泣かないから」

 エミリーは涙を拭き、立ち上がり。その時、メアリーは何かを思い出し。

「そういえば、おじいちゃんが言ってた。私の孫は、天性の舌をもっている。きっといい料理人なれるって」

「お祖父ちゃんが、そんなことを……」

「そこに、山小屋があるでしょう!? あれって、おじいちゃんの山小屋なの、って言っても料理研究所だけどね」

「料理研究所!? 私、てっきり、あなたの家だと思ってた」

「外は寒いから、中に入らない? 私のブレンド紅茶を入れてあげるから」

「あの、さっきはごめんなさい」

「そのことはいいから、寒いから家の中入ろう」

「わかった。けど、この家にはクッキーが入れないよ」

「大丈夫、魔法の家だから」

「えっ!? そうなの? なんかワクワクする」

「あなた変わってるね!? 普通なら、魔法使いを見ただけで嫌がられるのに」

「嫌がられる!? どうして? 何で?」

「魔法が使えるからでしょう!?」

「わかんない」

「わかんないって、おじいちゃんあなたのこと、頭がいいって言ってたけど、嘘なのね」

「お祖父ちゃん嘘つかない。で、何で嫌がられるの?」

「はい、はい、とにかく中に入ろう!?」

 メアリーがドアの近くに来ると、ドアが勝手に開き。クッキーがドアに近づくと、エミリーと同じくらいの背丈になっている。


 3人は山小屋の部屋に入ると、勝手にドアが閉まり。山小屋の中に入ったエミリーは驚きの連続だった。建物の大きさと部屋の中の広さがまったく違い。その広さは、この山小屋の大きさの4倍くらいあり。部屋の中は、見たこともない物がたくさんある。エミリーは辺りを見ていると。

「エミリーもクッキーも、そこの椅子に座って、今、紅茶入れるから」

 メアリーは紅茶を入れに行き。エミリーの目の前には白い丸テーブルと椅子が4つ。エミリーとクッキーは椅子に座り。クッキーは嬉しそうな表情している。

「エミリーと同じ背丈だね」

「私はどっちでもいいかな、クッキーはクッキーだし」

「なんか嬉しい……」


 前王は、何故この山小屋に料理研究所を造ったのか。メアリーと何処で知り合ったのか。気になっている、エミリー。

 すると、メアリーが紅茶を入れて持ってきた。エミリーは驚き。

「えっ!? 紅茶、もう入れたの? 早くない?」

「学習しなさい。私は誰でしょう?」

「メアリー」

「違う、そうじゃなくて」

「えっ!? 違うの?」

「私はメアリーだけど、魔法使いなの!」

「知ってるよ。箒で飛んでたし」

「もー、なんか疲れる」

「そんな時は、チョコレートね」

「意味違う。えっ!? あるの?」

「食べる?」

「もちろん食べる。私、チョコレート大好なの」

 エミリーは、リュックを背負ったままですっかり忘れていた。リュックを下ろし。タッパーを取り出し、その中にチョコレートが入っていた。

「はい、どうぞ」

「ありがとう」

「クッキーも食べる?」

「食べる」

 メアリーは嬉しそうに、チョコレートを一口食べ。

「美味しい。ミルクチョコレートね。これって、エミリーが作ったの?」

「そうだよ。えっ!? 何でわかったの?」

「わかるわよ。でも、悔しいけどおじいちゃんのより、エミリーが作った方が美味しい、かな。何で?」

「悔しいって、何なのよ?」

「もしかして、天才!?」

「天才かどうかはわかんないけど、ただ、お菓子を作るのが好きなだけ、でも……」

「でも、何?」

「作るのは楽しいけど、私、思ったの。私の作ったお菓子を食べて、美味しいって言ってくれて、喜ぶ顔を見たら、なんかこっちまでも嬉しくなって」

「それって、うちのお母さんも似たようなこと言ってたよ。魔法は、人を助けるものでないといけないって。人の為に役に立ってこその魔法。人に喜んでもらえれば、私はそれだけでいいのって、それが生きがいだって言ってたけど、今の時代は、魔法使いは白い目で見られるし、嫌われているから、魔法使いは、無くなりつつあるって言ってた」

「えっ!? そうなの!? 何で? 魔法が嫌われるの? よくわかんないけど、もしお菓子が作れなくなったら、私は、悲しいな」

「あっ! 紅茶、冷めるから飲んで」

 3人は、紅茶を飲み。

 すると、エミリーは紅茶の味に。

「美味しい、この紅茶。お城で飲んだのと全然違う。こっちの数段上ね」

「お城!? エミリー!? もしかして、あのエミリーなの? 王女様ってこと?」

「そうだよ」

「そうだよって、王女様1人でここへ?」

 エミリーのあっけらかんとした態度で。

「そうだよ。でも、ここへ来る途中で、ね! クッキーと出会って」

 うなずくクッキーだが、チョコレートの入ったタッパーをジッと見ている。

「もう一つ食べたいんだけど、チョコレート!?」

「あと一つだけでよ!」

 エミリーは、クッキーにチョコレートを1つあげ。美味しそうに食べるクッキー。

 メアリーは、その光景を見ながら紅茶を飲んでいた。

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