名前はクッキー

名前はクッキー(1)

 翌朝、午前8時。

 エミリーは城を出る前に、家来に昨日の皿を返し。旅の支度の服装に着替えると。いくら前王が小柄でも、服が少し大きすぎる為。腕ところを少しまくり、安全ピンで留め、ズボンも同様にした。靴は、パティシエ用の服をもらった翌日に、前王からもらったスニーカーを履き。これが結構お気に入り。


 エミリーは、懐中時計を見ると午前9時前。少し早いが、防寒着を着てリュックを背負い。地下道の出入口に向かい。途中に、料理研究室をもう一度見て。地下道の出入口の引き戸に着き。右側の石壁にかかっていた鍵を取り。家来がいないか、念の為に引き戸をゆっくりと開け。誰もいないことを確かめ、引き戸を閉め、鍵をかけた。

 エミリーは昨日、地下道の出入口、引き戸の左側に鍵があることに気づき、その鍵も一緒に持って行くことにした。


 エミリーは空を見上げ、今日の天気は、晴れ。気分はどことなく晴れ晴れしている。これから向かう先は、前王が言っていた山小屋を目指す。この城から一歩出たことがないエミリーは、不安をかき消すように、一刻も早く前王を探し出すことだけを考え、不安の表情はない。

 これから先は、今迄見たこともない世界が広がり、エミリーにとっては冒険の旅。果たして、無事に前王を見つけ出せるのか。


 エミリーは、この崖の道を通り、ジグザグ道を歩き、少しずつ前に進みながら下り。20分くらいかけて、崖の下まで降りてきた。

 ここで、エミリーは後ろを振り返り、上を見上げると、遠くに城壁が見え。驚いたことに、ジグザグ道はこの角度から見えなくなっている。ごつごつした岩が道を隠していた。


 エミリーはまた振り返り、目の前には森が広がり。辺りを見ると、道らしき道はなく。

コンパスを取り出し、東の方角を確認。このまま真っ直ぐ歩いて行くしかない。また歩き始め。風が冷たく、顔の付近が少し寒いが、太陽の光と防寒着を着ていることで寒くはない。

 森の中の道なき道を歩き、20分くらい歩くと、遠くに人影が見え。しばらく歩くと、目の前の景色が少し開けたような感じなり。そのまま歩いていると森がとぎれ、突然道が現れた。

 左側を見ると道が続いている。右側を見ると道が続いている。目の前は岩がむき出しになり、壁のようにそびえたち。

 そういえば、エミリーは昨日崖の上からから見た時は、この森の向こうは山ばかり。東の方角に行きたくてもこれ以上は前に進めない。ここは一旦迂回することにして、右の道を行くことに。10分くらい歩くと。十字路が見え。右側を見ると、わりと遠くに城が見え。この道を進めば、正門に行ける。左側の道は東の方角なので、こちらの道を行くことにした。


 エミリーは、しばらく歩くと体がポカポカしてきたので、防寒着を脱ぎ。防寒着を丸めて専用の袋に入れ右手に持ち。ほんの少し体が軽くなったよう気もする。懐中時計を見ると、午前10時半。道は真っ直ぐに続き。また、歩き始め。

 行きかう人はなく、家もなく、段々と山道に入り。歩いていると、左右の山に囲まれ、まるで山の真ん中を歩いているようで。人通りはなく、ただ真っ直ぐ歩き、どれぐらい歩いたのか。段々と足が疲れてきた。

 エミリーは、一旦立ち止まり。後ろを振り返ると、平たんな道を歩いたのではなく、上り坂を歩いていた。前だけを見て景色を見る余裕もなく、まったく気づかなかった。おそらく、左右が山ということもあり、同じ景色が続いたからなのか。

 懐中時計を見ると、午前11時。この道で合っているのか少し不安になり。あの地図には、大まかなことしか書いておらず。方角と山小屋の示す場所の近くに湖があることだけ。


 エミリーは喉が渇き、冷蔵庫に入っていたスポーツドリンクを水筒に入れ、持ってきており、それを少し飲み。このまま真っ直ぐ行けば、湖が見えてくるはず。また、歩き始め。しばらく歩いていると。山に囲まれた景色が変わり、右側だけが開けてくると。今度は、右斜め前方が、やたらキラキラして輝いて見え、少し歩くと湖が見える。


 湖に太陽の光が反射して綺麗。本当なら、こんな景色を前王と一緒に見られたはず。初めて城から出ることがこんな形で実現したことに、急に悔しいやら、悲しいやら、複雑な気持ちになり。涙がこぼれ、その涙を拭き。

 少し歩くと、右側に行く道が現れ。このまま真っ直ぐ進み。道は少しずつ下り坂。右手に湖を見ながらしばらく歩いていると。

 今度は、左側が少し開け、左側に曲がる道が見え。その先には、小さな広場があり。テーブルみたいな物が見え、椅子みたいな物も見える。そこで、一休みできそう。

 その場所へ行くと。テーブルと長椅子が置いてあり。この辺りを見渡すと、他にもテーブルと椅子が置いてあった。休憩所、そんな雰囲気。どうせなら、湖を前にして椅子に座ることに。

 エミリーは、リュックをテーブルに置き。懐中時計見ると、午前12時過ぎていた。ここで、休憩と一緒に昼食を摂ることに。

 リュックの中からから、タッパーを取り出し。湖を見ながら、パンにハムとチーズを挟んだサンドイッチを食べ。水筒のスポーツドリンクを飲んでいると。やはりここは、温かい紅茶が飲みたいと。

 エミリーは、30分ほど休み。コンパスを見ると。さっきの道を歩くと南東の方角に進む。あやうく方角を間違えるところだった。となると、東の方角へ進む道を見つけないといけない。

 すると、この広場の東の方角に道があることを見つけ。また防寒着を着てリュックを背負い、また歩き始めた。

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