前王の失踪(5)

 翌朝。

 エミリーは、午前7時に起き。この部屋の扉の外にいる家来に、朝食は食べないと、王に伝言するように頼み。家来は、そのことを伝えに王の間に行き、王に伝えると。

「どのみち何もできはしまい。お腹が減れば謝りにくるだろう。それまでは、ほっとくように」

 王は家来に告げ。

 その頃、エミリーは机に向かってノートに何か書いていた。

「これでいいかな……。さってと、どうやったら城壁を超え、外へ出られるかだけど」

 独り言を言いながら、ノートを1枚破き、文字が書いている方を裏返しにして、何か書き、机の右に置き。現状把握を始め、そのことをノートに書き出してみることに。


 あの山小屋とは何なのか。お祖父ちゃんとメアリーは友達って言ってたけど、メアリーとお祖父ちゃんは何処で会うのか。

 城からでるには、料理研究室から出る。旅の心得は大丈夫、わかっている。服装とか食糧の準備をする。問題は、5メートルある城壁の高さ。これが厄介だけど、超えたとしても周囲は崖。


 この時、ふとエミリーは窓の外を見て。お祖父ちゃんが帰ってくるのが見えると、ここからよく手を振って。ちょっと待って、おかしい。あの時、私は手を振っていない。エミリーは何かに気づき。


 あの時とは、12歳の誕生日を迎え、1週間後に前王が城に帰って来た時のこと。その日も前王が帰って来るのをこの窓から見ていたエミリー。

 もし前王が帰って来たなら、必ず家来が連絡してくれる。前王が帰って来たら、すぐに食材探しへ出ることもあるから、その都度連絡を家来に頼んでいた。

 しかし、あの時は、前王が帰って来たと連絡はなかった。家来が忘れていた、それはありえない。正門を通る時は、必ず家来が確認にしている。

 この城の出入口は、正門と裏門の2箇所だけ。他にはない。ただ、裏門は非常時の場合のみ使用でき、通常は閉鎖してある。

 ここで、エミリーは1つ勘違いをしている。それは、初めて冷蔵庫を見た時に、1日寝かした生地があった。即ち、前王が帰って来た日は、あの時の前日だった。


 この時、エミリーはあること思い出した。そういえば、家来たちがいつのまに前王が帰って来たんだと言い。不思議がっていた。

 もしかしたら、お祖父ちゃんだけが知る、秘密の抜け道があるのでは。だったら、秘密の抜け道は何処にあるのか。考えられるのは、あの鍵のかかった部屋しかない。やはり、あの鍵を探すしかない。探す場所はお祖父ちゃんの部屋。エミリーはそう考え。早速、行ってみることに。

 

 エミリーは秘密の抜け道を使って、前王の部屋に着くと。辺りを見渡し。鍵を隠すなら、やはりあの机の一番下の引き出し、あの秘密の鍵穴がある引き出ししかないと思い。机の所に行き、引き出しを開ける前に。お祖父ちゃん勝手に見るけどごめんね、と言い。勝手に許可をもらい。

 引き出しは全部で5つ。念の為に上から順に開けていった。

 1つ目の引き出しは、机の手前の引き出し。開けると、何やらわけのわからない書類が束になり、数枚入っている。

 2つ目の引き出しは、机の右側にある引き出しの1番目。開けると、ペンケース、定規、ノート、電卓、腕時計。

 3つ目の引き出しは、机の右側にある引き出しの2番目。開けると、本が5冊。難しくて、わからない本。

 4つ目の引き出しは、机の右側にある引き出しの3番目。開けると、ノート、懐中電灯、コンパス。小さな箱があり、開けて見るとお金が入っていた。

 そのお金を見て、エミリーはすっかり忘れていた、お金の準備。旅に出る時はお金がいる。お金は、自分の引き出しの中に少しだけある。あの金額なら大丈夫と思い。


 残るは5つ目の最後の引き出し、机の右側にある引き出しの4番目。鍵はこの引き出しに入っているのか。引き出しを開けようとすると、やはり鍵がかかっている。

 この机は、エミリーの机と同じ物。この引き出しの左側に椅子が置いてあり。それをいったん下げ。その右側の下を見ると。大人の親指くらいの穴が2つ開いている。ここに、左手の人差し指と親指を同時に入れると、鍵が開く仕組みになっている。このことは、王は知らない。もちろん王妃も家来たちも誰も知らない。知っているのは、エミリーと前王だけ。


 エミリーは、4番目の引き出しの鍵を開け、引き出しを開けて見ると。

「えっ!? 何これ? 何でここにバラの花が?」

 その光景に思わず声を出し。そのバラを見ていると、何かおかしい。違和感を覚え、そのバラを手に取ろうとすると、取れない。不思議に思い、よく見て見ると。本物そっくりの絵のような。これってもしかして写真なのか。形は長方形で触ってみると。固い木なのか、鉄なのか、わからない。箱のようにも思え。

 その箱のような物を机の上に置き。触っていると、蓋が開き。その中には地図が1枚。 結局、4番目の引き出しには、鍵は入っていなかった。


 エミリーの勘は外れ。地図を元の箱に入れようとした時。先程は気づかなかったが、8歳の頃に前王が旅の心得を教えてくれた時、この国の地図を見せてくれた、その地図だった。1度だけ見たことがあり。懐かしくて見ていると、驚いた。

 城のある場所から離れた所に、赤ペンで小さな丸を書き。そこには、山小屋・メアリーと書いてある。

 この時、見た時は何も書いてなかったはず、間違いない。何故ならば、この時、訳は聞かなかったが、とても良いことがあったと前王は言い、大喜びし。その光景を覚えていた。 その丸が示す場所は、ここから東の方角に、歩いて6時間くらいの距離。

 その場所に行けば、メアリーに会えるかもしれない。しかし、肝心な鍵がみつからない。 他に探す場所があるとしたら。もしかして、タンスにも同じ仕掛けが。エミリーはそう思い、急いで調べると。鍵はみつからなかった。


 他に鍵を隠す場所があるとしたら。エミリーは辺りを見渡していると。机の下に何か落ちていることに気づき。ここに来た時は、何も落ちていなかった。

 エミリーは机の所に行き、それを拾ってみると、紙が4つ折りになっている。その紙を見て見ると。石窯の文字が書いてあり。井戸、地下室の文字も。これは、あの料理研究室のことなのか。その紙を机の上に置き、広げてみると。あの料理研究室の見取り図だった。


 その見取り図に、エミリーが料理研究室へ行く時の抜け道にある、料理研究室へ出入する引き戸の場所に、地下道と文字が書かれ。東の方角に矢印が書かれ。そして、点線で城壁を超え、また矢印が、東の方角を示している。

 この地下道を前王が使って、城の敷地内から外へ出たのか。あの鍵のかかった部屋については、何も書いてない。

 エミリーは地図を記憶し。地図と料理研究室の見取り図を箱に入れ。元の場所へ戻し。急いで地下道の出入口の場所へ向かった。

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