前王の失踪(4)
エミリーは、食事の間には行きたくない。料理研究室に行く、秘密の抜け道は使えない。きっと料理研究室には家来が見張っているはず。またお腹が鳴り、この部屋の出入口の扉を開けると。家来が2人いる。いつもなら家来はいない。王の指図で見張られているエミリー。
「王女様。どちらへ!?」
「なんでもありません」
すぐに扉を閉めたエミリー。
エミリーはお腹が減り、この城からどうやって抜け出したらいいのか、頭が回らない、考えも何も浮かばない。お腹は減るばかり。
ベッドに横になり、目を瞑り、眠れない。結局、私は何もできないのか。そんな想いがこみ上げ。せめて料理研究室の調理場だけでも使わしてもらうように家来に頼むしかない。エミリーはそう思い。急いで料理研究室へ行ってみると。驚いた、家来が1人もいない。てっきり家来がいるはずだと思っていた。何故、王はあんなことを言ったのか、わからなくなり。しかし、これでパンが作れる。
エミリーは、前王からパンの作り方まで教えてもらっていた。
パン生地を作り始めたエミリーは、パン生地をこねたりしていると。こうやってパンを作ったり、お菓子を作っているこの時が1番好き、改めてそう思い。
パンが焼き上がり。東側の壁には隠し引き戸があり、そこにある冷蔵庫から、ハムとチーズを持ってきてパンに挟んで食べ。紅茶を入れ、2口飲み。しばらく、この部屋を眺めていた。
エミリーはこんな時間にここに来たのは初めて。外はもうすぐ冬。ここは、石竈を使ったことで少し温かい。お腹もいっぱいになり。王の言っていた抜け道のことをもう一度考えてみた。
お父さんが言っていた抜け道は、この料理研究室に行く道のことだと、私はてっきりそうだと思っていた。しかし、そうではない。お父さんは抜け道を使っても無駄だと言いっていた。
無駄って何。どういう意味なの。ちょっと待って、私、肝心なことを忘れている。そもそも、この城から出ないとお祖父ちゃんは探せない。お父さんが言っていた抜け道とはそのことを意味するのでは。そうなると、城の外へ出る抜け道があるのということになる。
そういえば、お祖父ちゃんはこの料理研究室に、何処から出入りしているのか知らない。聞いたこともない、考えたこともない。
となると、何処かに出入口があるはず。考えられるとしたら、あの鍵のかかっている部屋しかない。エミリーはそう思い。
念の為にその部屋を確かめると。やはり、鍵がかかっていた。鍵は前王のポケット中。ではないと、エミリーは思っている。何故ならば、旅の途中で紛失する可能性があるから。この鍵のかかった引き戸の向こうには大事な部屋、大事な鍵。その鍵を隠すとしたらこの部屋ではないと、エミリーは思い。となると、残るは東側にある、もう1つの引き戸。
エミリーは、もう1つの引き戸を開けたら何があるのか、考えたことがない。当然、開けたこともない。もう1つの引き戸の所へ行き。内鍵を外し、引き戸を開けてみると。左側の壁には、懐中電灯がかけてあり。この部屋の明かりで少しだけ奥が見え、下へと続く階段が見える。とりあえず、階段を下りてみることに。
エミリーは懐中電灯を右手に持ち、階段を下ると。この周り雰囲気、この階段、この感覚は、料理研究室から自分の部屋へと帰る秘密の抜け道と同じ感覚。ここから前王が出入りをしていると思い。
となるとこの先は、前王の部屋ということなのか。エミリーは階段を上って行くと。行き止まりの壁。その壁を見ると、あの同じ仕掛けの隠し引き戸があり、開くと。自分の同じ部屋のように、化粧台の裏側が現れ、キャスター付の化粧台を横へずらして中に入ると。思っていた通り、前王の部屋だった。
前王の部屋は、エミリーの部屋の隣。エミリーは12歳になってから、前王の部屋には一度も行ったことがなかった。
エミリーは辺りを見渡し。何を思ったのか、この部屋の出入口の扉に行き、扉を開け。
すると、廊下には誰もいない。すぐに扉を閉め。ここからなら、外へ抜け出せるかもしれないと思い。しかし、今日は無理。前王から旅の心得を聞かされたことがある。それは、夜道は危険を伴う。移動する場合は、必ず日のあるうちに移動すること。今は夜、懐中時計は、午後11時過ぎ。それに、旅の支度も何もしていない。
旅の支度は明日にすることにして、元来た秘密の抜け道を通り、懐中電灯がかかっていたところの階段を上がろうとした時。左側の壁に、引き戸らしき物が見え。階段を上がりきり、懐中電灯の光をかざして見ると、引き戸があり、内側から鍵が外せる。
鍵を開け、引き戸をゆっくりと開けてみると。冷たい風が入ってくる。外が見え、松明の明かりが見え、見張り塔が見える。しかし、この辺りには誰もいない。
エミリーは寒いので、とりあえず引き戸を閉め、鍵をかけた。ここが、この建物の出入口。エミリーは、ここから城の外に出ることを決め。
その時、肝心なことを忘れていたことに気づいた。この城の敷地から誰にも見つからずに抜け出す方法をまだ見つけていなかった。一応、王が言っていた抜け道を探してみることに。そう思った時、もしかしたら私の部屋にあの仕掛けが。確かめることにした。
懐中電灯を消し、元に戻し。部屋の明かりを消し。急いで自分の部屋に戻り。早速、調べてみると、すぐに見つけたあの仕掛け。
ここには、物が余り置いていない為、壁にかかっていた絵画の裏に大人の親指くらいの穴が開いてあり。念の為に、秘密の抜け道と同じか確かめてみると。下へ続く階段があり、何処へ通じるかはわからないが、確認しても無駄と思ったエミリーは、壁を元の位置戻し。
この時、エミリーは疲れていた。この城の敷地から誰にも見つからずに出る方法は、明日の朝考えることにし。ひとまず、眠ることにした。
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