前王の失踪(3)

 前王が食材探しに出かけ。エミリーは料理研究室で新しいお菓子を作る為に、毎日、料理研究室に行き。あっという間に2週間が経ち。新しいお菓子ができあがり。あとは、前王の帰りを待つだけ。

 その日を楽しみにしながらエミリーは、既に99のレシピは作れるようになり。お菓子作りに磨きをかけ、いろんなアレンジに挑戦していた。

 そして、待ちに待った前王が帰って来る日がきた。エミリーはワクワクしている、新しいお菓子を食べて喜んでくれるか。しかし、夕方になっても前王は帰ってこない。予定では今日のはず。


 前王は食材探しに出かけると、予定通りの日に帰ってくる時もあれば、そうでない時も多々あり。しかし、今度の場合は、必ず予定通りの日、1ヶ月後に帰って来ると言った。間違いなく今日帰って来る、そんな雰囲気だった。エミリーは心配だったが、ここはしばらく様子をみることにした。

 ところが、1週間経ち、2週間経ち、前王は帰ってこない。エミリーは、心配で心配で、仕方がない。

 以前にもこういうことはあった。一番長い時は2ヶ月間帰ってこないことも。しかし、今回は意味が違う。

 エミリーは、王に相談はできない。食事の時も王は無言のまま、いつも通りに食事をし。前王の心配などそぶりもみせない。王妃は王に何も言えない。

 相談する相手がいないエミリーは、どうしていいのかわからない。そんな中、食材探しの旅に出てから、2ヶ月が経ち。エミリーは思い切って、王に相談することに。


 3人の朝食がすみ、エミリーは王の前に行き。

「お父様、お祖父ちゃん帰って来ないよ!? 約束では、1ヶ月で帰ってくるって言ったのに……私、お祖父ちゃんのことが心配で心配で、もしお祖父ちゃんに何かあったら、私……お父様、お祖父ちゃんを探しに行ってよ!」

「お祖父ちゃん!? お祖父様だろう!? あれほど自覚しろと言っただろうが!?」

「自覚!? またそれ!? もういい! お父様には頼まない!」


 王の前では、口を出さない王妃だったが。

「王様、あれではかえって」

「何で自覚がたらないんだ!」


 エミリーは部屋に戻り、泣き崩れてしまい。その後、エミリーは、一旦は王に頼まないと口にしたが、何度も何度も王に探しに行くように頼んだ。しかし、ダメだった。そんな中、とうとう食材探しの旅に出てから3ヶ月が経ち。エミリーは、我慢の限界を超えていた。

 エミリーはこの日の朝、食事をする前に滅多にいかない王の間に来ていた。王は椅子に座り。

「朝から何ようだ!? また、お祖父様のことか!?」


 エミリーは、いつになく真剣な表情。

「そうです。お祖父ちゃんと何があったのかは知りません……。もういい加減にして! あなたのお父さんじゃないですか!? 何故、探そうとしないのですか!?」

 王は椅子から立ち上がり。

「お前、誰に向かってそんな口の聞き方をする!? 私は王だぞ!」

「違う! 私は王様に言っていません! 私は、お父様に言っているのです!」

「……私が、どんな想いでここにいるかわかるまい。この部屋から出て行け!」

「何でそうなるの? 何でそうなるのよ!? もういい! わかった。私が探しに行く!」

「探しに行くだと!? 世間を知らない、王女の自覚も無い、お前に何ができる……!?面白い! そこまで言うならやってみるがいい。但し、この城から出られたらの話だがな。言っておくが、抜け道を使おうとしても無駄だからな」


 エミリーは、目を真っ赤にし、今にも泣きそうだったが、ぐっと我慢し。王の間を出て行き。自分の部屋に戻ると。悔しくて、悲しくて、ベッドの上で泣き崩れ、いつの間にか眠っていた。


 ここ数日、エミリーはあまり寝ていない。どのくらい経ったのか。懐中時計を見ると、午後6時。11時間も寝ていた。

 その時、お腹が鳴り。こんな時でもお腹はすくんだと。辛い時でも悲しい時でもお腹がすく。食べないと生きてはいけない。そんな時こそ食べないといけない。それが明日に繋がることになるから。前王が言ったことを思い出したエミリー。

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