前王の失踪

前王の失踪(1)

 エミリーは、前王からスケジュール表を3日で作るように言われ、早々とスケジュール作成を終え。この3日間は、前王から借りていたレシピ本を何度も繰り返し読み。昨夜は、パティシエ用の服を試しに着てみたり。ワクワクがとまらず、ベッドに入ってもお菓子のことをばかり考え。いつのまに眠ったのか、覚えていながわりとぐっすりと眠れた。

 当然、このことは王と王妃には内緒。もちろん家来たちにも内緒にしていた。幸い、エミリーの部屋には、5歳の頃から余程のことがない限り誰も入って来ない。3食、食事の間に行けば、お菓子作りのことはバレることはない。


 いよいよ、今日から本格的にお菓子作りが始まるエミリーは、これから3ヶ月間、あの秘密の抜け道を毎日通い料理研究室へ行く。そのことを考えるとワクワクし、この気持を押さえながら、バレないように朝食を済ませ。心急ぎ秘密の抜け道の階段を下って行き、料理研究室へ着き。

「お祖父ちゃん、おはよう!」


 前王は、朝食中。

「おっ! 早かったな。おはよう」

 前王妃が亡くなってからは、前王は1人ここで食事をしていた。

 エミリーは、パティシエ用の服を着て少し照れくさそうに。

「お祖父ちゃん。この服、似合ってるかな!?」

「サイズはピッタリだな。似合ってるぞ」

「本当に!? ヤッター!」

 エミリーは大喜び。

「エミリー。おじいちゃん食事中だから、食べ終わるまでそこに座って待ってなさい」

「はーい」


 しばらくして、前王は食事が終わり、2人分の紅茶を入れ持ってきた。

 前王は、紅茶を2口飲むと。

「エミリー。初日は、やはりケーキか?」

「そのことなんだけど……」

 作成した、スケジュール表を前王に渡すエミリー。

 前王は、真剣な顔でスケジュール表に目を通すと。

「これだったら3ヶ月間でいけそうだな。良く作ったな。しかし、何で初日から、シュークリームなんだ?」

「あのレシピには、完成したお菓子の写真が載ってたでしょう!? あの写真を見ていたら、見た目の派手さはないけど、なんか私に似ているような感じがして」

「似ている!? シュークリームが!?」

「だって、こじんまりして、なんか可愛いっていうか、ほら、私って可愛いでしょう?」

「それ、自分で言うか? エミリーも言うな」

「えー!? 私って、可愛くないの?」

「可愛い、可愛い、可愛いに決まってるだろう」

「もー、お祖父ちゃんったら」

「エミリー。1つ言っておきたいことがある……。デザートは、見た目や華やかさや美しさを求められる場合があるから覚えておきなさい。そうだな、ケーキがそれに値するかな。でも、エミリーのそう言う見方も大事だな。勉強になるよ。言わば、見てくれより、味で勝負する。それもありだな」

「じゃ、私は可愛くないってこと?」

「何でそんな解釈になるんだ? さっき言っただろう、可愛いって」

「ならいんだけど」


 2人は、紅茶を飲み終え。お菓子作りの初日がスタートした。

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