お菓子との出会い(5)
前王はスケジュールの見本を作り、できたスケジュール表をエミリーに見せ。日程の組み方の基本を教え。いかに効率の良い日程の組み方のポイントを教えると。スケジュール作成を3日で仕上げるように言い。エミリーは、覚えることがこんなに楽しいことだと初めて思った。
その時、窓の外は日が沈みかけ。
「お祖父ちゃん、そろそろランプを点けないと暗くなるよ」
「それなら大丈夫。そこの引き戸の横に蛍光灯のスイッチがあるから、入れてくれるか? わしは、ブラインドを下ろすから」
エミリーは地下室にいた時に、あの白い光のことを聞いていた。天井を見ると、蛍光灯が20本ついていて。ここに来た時に、開けた引き戸の右側にあるスイッチを入れ。やはり、ランプとは比べ物にならない明るさ。とにかく明るい。
前王は、何か紐のような物を動かし。見ていると窓が隠れて行き、まるでカーテンのように閉まって行く。6枚の窓全て見えなくなり。
「お祖父ちゃん、あれは?」
エミリーは、窓の方を指差し。
「あー、あれか!? あれはブラインドと言って、カーテンみたいなものかな。アルミ製で、火災で燃えないという特性があると書いてあったな。あれを閉めとかないと、外から見たら、やたら明るいからな。あっ、そうだ。肝心なことを言い忘れていた。この研究室で見たことは、絶対に秘密だからな。誰にも言わないように」
「わかった」
エミリーは、秘密にすることが何となくわかったような気がした。ここだけは別世界。そろそろ部屋に戻らないと夕食の時間に間に合わない。そのことを前王に告げると。鍵のかかった部屋から、パテシエ用の制服と帽子と靴をエミリーに渡し。そして、落としても壊れない、半永久的に動き続ける懐中時計を渡し。最後に、懐中電灯を渡した。
エミリーは、もらった全ての物を手提げ袋に入れて。ランプの代わりに懐中電灯を持ち。点けてみると。ランプより明るく、これなら足元から先の方を明るく照らし、秘密の抜け道の暗い階段を気にせずに歩ける。それに、ランプは火だけど、懐中電灯の明かりは火ではない、火の心配はない。何か不思議な物ばかり。
エミリーは、前王におやすみなさいと言い。ここへ来た時の秘密の抜け道を通って、行き止まり壁まで行き。隠し引き戸を開け。前王が言っていた、化粧台の下にあるキャスターのストッパーレバーを下げ。化粧台動かすと、黒い丸い形をした物が転がり。大きな化粧台が簡単に横へ移動でき。壁を元に戻し、化粧台も元に戻した。手提げ袋はベッド下に隠し、食堂の間に行った。
久しぶりに食堂の間に行くと、王と王妃が無言で座っていた。前王が帰って来ていることは既に知っているようで。エミリーは前王の話はせずに、無言の食事だった。
食事が終わり、エミリーは部屋に戻ると。ランプの明かりでスケジュール作成を始め。書いては消してを繰り返し、懐中時計を見ると午後10時。今日この辺でやめて、ノートと筆記用具をまた手提げ袋に入れ。またベッドの下に隠し。
お菓子との出会い。思ってもいないプレゼント。忘れられない1日になり。エミリーはベッド入り、今日の出来事を思い出しながら、いつの間にか眠っていた。
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