第2話

平安末期

時が流れ、京の都がいま、変わろうとしていた。平清盛(たいらのきよもり)は病で64歳の生涯をとじ、独裁者清盛の死は平氏(へいし)の運命を変えていった。清盛を亡くしたふ平氏はつぎつぎ戦に敗れていった。源平(げんぺい)の争乱のなか、源頼朝(みなもとのよりとも)は戦をしながら、着実に新しい国作りと政権をつくるために、関東に地盤固めを始めるのであった。

頼朝より遅れて木曽義仲(きそよしなか)が兵をあげるのである。

義仲と頼朝とはいとこ同士、木曽の山野を駆けめぐって育つた義仲、以仁王(もちひとおう)から頼朝と義仲に平氏討伐への令旨(りょうじ)をいただく。山野に育った義仲は巴と知り合い男勝りの巴に惹かれ家臣の中に入れ、巴を連れ京の都にそして上るのであやった。 義仲は北陸道を進んでゆき、戦上手な義仲は1年ほどで北陸一帯ををおさえてしまった。

そんな時代ともわからない、くろ猫とお姫さま、「ねえ、くろちゃん、わたしたちどこにいるの?、」 何も知らぬ姫君、のんびりとくろ猫に問うが、 「何も知らん人やなー、わしら幽霊にしても妖怪にしても、初心者、空を飛ぶことも、走ることもできんのや、誰かに取り憑かねば!、」 そのとききたないだみ声が聞こえる。 「お前ら、取り憑くことも知らんのでは、」 「誰や!わしらをからかうのは!」 「わしか?わしは妖怪カラス、もう何百年も生きてきてる。」 ケラケラ笑うカラス、 「まあー、妖怪カラス何百年さん、立派なお名前だこと、」 「こらー女!ひとをばかにしとるか、」嘴で姫君を突っこうとする、 「まあ、まあまっとくれやす、このお姫様、人間でおます。それもなんにも知らん姫君で困ってます。」 「そこの女、人間か?それは大変や、人間が妖怪になるなんて、それより間もなく戦がはじまる取り憑く暇があるんかいなー、」妖怪カラスから、源平合戦のことを聞き、取り憑く相手が少ないことを妖怪カラスから聞くのであった。

「それより妖怪カラスさん、名前はないの?、」 「あるさ、わしの名はカラスの勘三郎、わからないことは聞いてくれたまえ、」

「取り憑く相手が少ない?なぜなのですか?、」 「ここ数年、都は飢饉がつづき死人も多く、生きるため、人間も動物もこの京から離れていったのさ、」 姫の問いに答える勘三郎、そのときくろ猫が大きな声で! 「いたぞ、ほら小さな猫がだが痩せてるなー、」

「やっぱり食物がないのね、」急にくろがその痩せている猫の体に入ってゆくのであった。「キヤー」 姫の声を残して小さな子猫の体の中に入ってゆく妖怪になった姫と猫、「なんだ!なんだよー、人の体の中に誰れだよー君たちは、」 「わしら妖怪の新人、しばらく君の体を借りるよ、」 「困るよー、なんでおれなんだ!、」 「大丈夫!君はお腹が空いているだろうー、お腹を一杯にしてやるよ、」 「うそー、本当に、でもヤバイ事などしないよね、こわくないよね、」 「オー、大丈夫、わしの言う通りにやればいい。」「人が落ち着くまで隠れていよう。」 夕方には人々がいなくなる、義仲や兵士が京の都に入ってきたのだ、奥の部屋は女達の部屋、女といっても巴御前と都の下女たちである。暗くなると下女たちは自分の部屋に下がってゆき、大きな部屋には巴御前一人になる、「おーい、今だいくぞ、」 子猫がおそるおそる入ってゆく・「いいかい、あの女に擦り寄っていけ、」「こわいよー、大丈夫かなー、」「おれを、信じろ!」「まあー猫、どこから入ってきたの?、」子猫の頭を撫ぜる巴御前、「子猫よ女の人の膝に乗って、女人は、膝に乗られるのが好きなの、わたくしもよ」こわごわ膝に乗る子猫、「まー、人に慣れているのね、お腹が空いていない、ここにさきほどの残りものがあるは、」 何日ぶりかの食事であった。お腹が一杯になった子猫は巴御前の膝の上で寝てしまう、子猫を撫ぜながら一人でつぶやく、「あの人が好きでついて来たけど、何故か不安なの、御所に上がったまままだ帰ってこない。猫よあの人は無事に帰ってくるかしらん、」 子猫を撫ぜながら暗い部屋の中に目をやる巴御前、下女が灯りを持ってくる。 「義仲さまはまだお帰りはないのですか?」 「はい、まだお帰りになってないのでは、」 しばらく待つていると、激しい足音で義仲が帰って来た。「巴、帰ってきたぞ!」「お帰りなさい、いかがでした、上皇さまのご機嫌は、」

「おお、後白河法皇さまから、平氏の追討を命じられた。だが鎌倉にいる頼朝にも都に上って一緒に平氏を討てと使いを出したと、ふん、頼朝など腰抜けにやれるものか、今にこのわしが頼朝を討て1番強いことを見せてやる。のー巴よそなたも思うであろう。」「はい、あなたさまなら、日本一の武将になられるでしょう。」巴御前に褒められ意気揚々の義仲、巴御前の膝にいる子猫を見て、首のところをつまみ「なんじや、これは、猫ではないか、」うれしそうな顔の巴御前は「はい、ねこでございます、でもわたしに懐いていて、」。「そうか、巴が飼いたいのなら、長くはここにいないが、それでよいなら、平氏の追討を命じられた。明日から戦の準備をしなくっては巴、忙しくなる、思い出すのー、京に入る前に礪波山(となみ)の倶利伽羅峠(くりから)で打ち破ったことを」意気揚々と話す義仲だが義仲は、山奥で育ち作法など何も知らず。食料を得るためひどい乱暴を働き、不作法な振る舞いがおおく、貴族たち民衆からも評判が悪く、後白河法皇は、ひそかに頼朝に義仲追放をうながす使いをだす、」 そのような事も知らず義仲は、鼻息も荒く平氏の追討を夢見た。巴御前が可愛いがった子猫もすっかり大きくなって、巴御前からももと名付けられ巴御前のまわりを走り回っている、 その頃都落ちをしていた平氏が、西国の武士を味方につけ、義仲の軍を敗退させ、京の都を取り戻そうとしていた

後白河法皇は、頼朝に東海、東山の両道、東国一帯の支配権を認める宣旨をあたえるのであった。このことで義仲はクーデターをおこし後白河法皇を閉じ込めてしまった。その知らせを聞き、弟の範頼に大軍をつけ義経ともに義仲を討っことを命じたのである。。 宇治川で義仲はぶつかり、大軍に敗れるのであった。その夜巴御前に義仲は別れを告げる。 「わしは討ち死にすることになるだろ、覚悟のうえだだが巴お前は逃げよ。」「いやでございます、今までもご一緒に闘ってまいりました。死ぬも生きるもご一緒に、」「巴!お前はわしに恥をかかすのか、女と一緒と言われたくわない、たのむ逃げよ。このことを国にいる者に伝えてくれ、」義仲に説得され渋々納得した巴御前は最後の奉公として、敵将御田八郎師重の首をあげ、泣く泣く東方に落ち延びる。 ももは草の影ですべてを見ていた、ももの中にいる姫君が泣きだしたのである。「泣くな!人ごとではないか、」「わたくしも人よ、巴御前かわいそうあんなに好きな義仲さまと別れるなんて、ねえくろちゃん巴御前、どうなるのかしらん、」「知るか!どうでもいいじゃないか。、人のことではないか、」「わーん、巴御前かわいそうわーん、」「泣くな!うるさい、」泣きやまぬ姫君に手を焼くくろ、泣く姫君を見てくろも哀しくなってゆく。「ねえーくろちゃん巴御前はどうなってゆくの。」同じことを聞く姫君に「わしら、まだ新米ここから先に行く事はできないよ、おーいカラスの勘三郎どの、君なら羽根があるから、あの二人のゆくすえがわかるだろうーそれにわしらより長いこと生きてきてる。たのむよ!」勘三郎はうなずき飛び去っていく。 戻ってきた勘三郎は、暗い声で「信濃に戻ろうとした巴御前は頼朝の軍につかまり、それから先はわからない。」「あんなに強い巴御前が捕まるなんて、」「ああ、不思議とおとなしく捕まったぞ、」姫君の心にカラスの勘三郎の声が哀しく響いてくる。

「義仲さまと別れてもうどうでもいいのね。」胸に哀れが迫ってくる。 その義仲も敗れて近江国の栗津で討ち死に31歳であつた。

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