黒ねことお姫さま
池上加津
第1話
平安時代
時は平安時代に入ったばかり、時の天皇は桓武天皇、平城京、長岡京、平安京といったように、相次ぎ遷都を還る事件が起き,自ら呪われていると思った天皇は陰陽道による怨霊封じの呪術を命じる。 毒殺されたといわれわはている義母の井上内親王その子他戸王「おさべのみこ」や、立太子の際に失脚した、実弟皇太子、早良親王「さわらしんのう」この事件は桓武天皇を擁立を画策した藤原家の良嗣継ぐや百川らの陰謀であるが,呪われることを恐れ時の桓武天皇が都を平安京に移すのであったその時より、平安京時代の幕開けであった。
そのころ貧富の差はひどく加茂川に死人が流れても誰も驚かない、悲しいことである、一部の貴族が金品を持ちそのおこぼれを貰うために貧しい貴族が少しでもお上に気に入られよと、あの手この手と頑張るのであった。
そのような貧しい貴族には、唯一娘がいたら誰か娘を見初めてもらうようにと、どこの貴族もが娘を着飾り、金品のある貴族が来てくれるのを待つのであった。
貧しい貴族の藤澤公継「ふじさわきみつぐ」の娘蜜雪「みつむし」は幼いころより美しいと近所の噂である、公継は身分のある貴族が我が家に来てくれることを願い近所に噂を自らが流すのであった。
「おまえ様、まだ娘は十三歳早くはございませんか?それに身分の高いお方様が来てくれますでしょうか、」 前の庭を見ながら腕組みをする公継であったが、難しい顔をしながら 「しかたあるまい、娘を見初めてもらえねば我等冬を越すことが難しいのでは、飢え死にか?惨めなことよの-」
夫婦は顔を見あわせ下を向く、その時娘蜜雪が足音をたてて夫婦の傍にくる。
「おかあさま、おとおさま何をなさっているのですか?」
可愛いい顔をして夫婦の顔を覗き込む、髪も背中の半ばである。
「おとおさま、今日は御所にお詰めの日では、まだ出処しなくてもよくって、」
「そうだな、今日夜通し詰めだな-、行ってくるか。車の支度をたのむ、」
「牛車ですね、たのみに行ってまいります、」
牛車もないこの家見栄で近くの友達にたのみに行く。御所に行く日は借りるのであった。
昔は牛車もあったのであるが貧乏で売りさばいたのである、牛車に揺られながら:、
「貧乏は嫌だな-、一日も早く娘に金持ちの婿殿を見つけねば、」
一人ぶっぶっと呟く公継。
御所に着き、友と話しをしているとき、三条兼光に声をかけられる。公継にとって直属の上司のお声がかり、なんぞ失敗でもしたのかと、頭を板に付けるのであった。「藤澤、聞くところによると、そなたには娘がいるとか?そうなのか」公継は心の中で驚きながら「は、はい、一人おります、」 「娘御は、幾つになられるのかな?」 「はい、十と五つでございます。」 そのころは十五と言っても十三 四歳である、
「さょうか、よい年頃じゃな、」
公継の心の中はドキドキと胸を打つ音が聞こえるかと思うほど、
「我が娘は、妻が可愛いがって育てているもので、今だ幼くなにも知らない小娘でございまする。」 三条殿が娘を気に入ってくれたのかと心の中で思いながら頭を下げ次の言葉を待つ公継である。
一度藤澤殿の家に参って、むすめごに逢って見たい。」
飛びあがる嬉しさを胸に隠しながら、「むさ苦しい所ではございますが、おいでくださいますなら娘もどれほど喜びますか、いつ頃お越し願いますか、」
「それからそのそれ相応それうちに。」次の日帰る牛車の中で公継不安になる。
「本当に来てくださるのか、娘を気に入って下さるのかな」
一人でつぶやきながら車の中で考え込む。 家に帰り着き、妻宣子に、今日の三条兼光の話しをするのであった。 笑いながら夫の話しを聞く妻宣子、
「うちの娘を気に入ってくれますかしらん」 「大丈夫だ、あんなに可愛いんだから、、」 二人で頷きあうのである。
それから本当に三日後の夕方に三条兼光が共のものをつれ藤澤の家に訪れるのであった。三条兼光は公継の家が珍しく、キョロキョロと見てまわるのである。
公継は三条兼光に妻を紹介して、娘のところに兼光をつれて行き娘蜜雪と娶せるのである、まだ幼なさのある蜜雪、髪もまだ伸びきれてない。 【ひめの名は?、」
名前を聞かれて幼い顔を上げ、
「みつむしと申し上げます、」
扇で顔を隠す仕草も可愛いい、ただ蜜雪は父からも母からも言われているので、おとなしくしているのであった。 【お父さんより年寄り?それによく太っているのね、いややわーでもお父さんやお母さんに言われているので、我慢、がまん、】と心の中で呟く。
その日から三日ほど家に居着く兼光に心の中で嫌がりながら、床を共にする蜜雪、御所に行くと言って兼光の家臣が衣服を届けてくるのであった。 「お帰りになられるの?、」 「またくる、お上に長くお顔を出さぬわけにいかぬ。それよりひめなにか欲しい物はないか、」 首を傾げ考えるが、欲がない蜜雪はとっさに頭に浮かんだものを口に出す、
「ねこがほしい、可愛いねこが」「さようか、ねこか、探してみよう、」 父,公継は心の中で舌打ちをするが、欲のない娘は父や母の心 の中までわかる年ではない。蜜雪はねこがくると一人喜び兼光のくる日を楽しみに待つ。それから一ヶ月後に兼光がねこをつれて、蜜雪の家にくる。家臣が気をきかせて、白布や、白紙を持って来てくれるのであった。貴重品である。公継や宣子が喜び大事に奥にしまい夫婦で笑いあう。
「ひめよそれ猫をつれてまいったぞよ、」 「ねこ!まあーうれしい黒い猫ね、黒ね!名前をくろにします。」 まだ子猫の猫にくろと名付け抱きかかえ頬ずりをするのであった。
「そのように嬉しいか、よかったのー、」 その日からねこと戯れる蜜雪、片時もねこのくろを離さない。 兼光がくるようになって、外も冬から真夏日に変わっていった。 この年の夏は暑い日が続く、蜜雪の髪も長くなり腰あたりまで垂れ下がるようになった。くろ猫も大きくなり、すっかり重たくなった。くろが戯れで蜜雪の膝に扇に片時も離れず、遊び回っている。 「くろ、暑いから離れて遊んで、くろ、雨が降らないね、それより今日は兼光様くるのかしらん?この頃来ないね!。」 一人で呟く蜜雪、奥の部屋では公継夫婦が 「暑いのー、宣子、この家も古いしそろそろ建て直せねばならぬのー、雨も漏れるし、冬までになんとかしなくては、」
「そうですね。親の時代?それより前?いつ頃からでしようか、床もいつ墜ちるか、」 不安そうな顔をする妻宣子に頷く公継、
「なにせひめの所からやらねば、ひめの部屋の屋根はいつ墜ちてもおかしくない。しかし暑い夏じゃなー、」扇で仰ぎ空を見上げる公継、空は青く白い雲がのびている。「いつ頃雨が降ったであろう、長いこと雨が降らぬのー、ああ暑い。」 雨が降ぬので、田んぼの稲が育たないと報告が入ってくる。 「今年は米も不作だろう。陰陽師が日夜祈っているが、」一人で呟く公継に頷く宣子である。なにも考えず、くろ猫と遊ぶ蜜雪、 静かな日である。小鳥の声も虫の音も聞こえぬ、蜜雪も不思議な顔で空を見上げる。
「くろ、雨が降らないね、」
くろを抱き奥の部屋に行く。数時間で夕方になろうとしている。くろ猫のくろを抱き、奥の座敷に座わろうとすると座敷が激しく揺れるのであった。あっという間に天井が崩れ落ち蜜雪と猫くろが一緒に下敷きになってゆく。どれだけの時間が、どれだけの月日、年数がたったのであろうか。蜜雪が目を開けても真っ暗である何も見えない。どこにいるのかもわからない!体にもどこにも痛くも痒みもない、なにがあったのか思い出すのに時間がかかった。
「そうだ!わたくしくろを抱いていたのよ、くろ!くろ!」
「うるさいな、くろ、くろとおれはここにいるよ、」
「エー!!くろがしゃべったー」驚く蜜雪、 「あたりまえだよ、この世のものではないからな、」「エー、わたくしはこの世の人でなくなった、では、何者?、」
「そうだなー幽霊か妖怪だなー、」 「幽霊か、妖怪、ではこれからどうやって生きてゆくのですか!。」 「そうだなー、猫にでも乗り移るか、」 「ねこにー、」 さてさてこの先どうなるやら、いつの時代にいくのやら、ねこと姫君次回をお楽しみに、一匹の猫と姫の旅のはじまり。
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