Scene11

その後、忍野さんの幼少期の武勇伝も交えながら語られた話によると、その初恋の人というのは、当時、近所のすごく小さな幼稚園の園長先生を若くしてやっていたらしいということ。

これで後は大体の場所さえ思い出すことができれば、あと一歩なのだが。


「リンドウの家、とかそんなんだったっけ。なんか、おう、そんな感じ。」


「ふうん、リンドウね、分かった。探してみるよ。」


そういうとすぐに拳銃とナイフを持って、じゃあね、と言って出て行った。それは捜査に必要なものなんだろうか。


「なんで、リンドウなんですかね。」


「その人、リンドウ好きだったんだよ。花言葉が好きだったんだとさ。“悲しいときの、あなたを愛する”とかいうのだったかな。

なんかいいよな、俺、花言葉とか全然知らないけど、すごい、綺麗な言葉だよな。」


なるほど花言葉か。そしてやはり、なんだかんだ忍野さんは国語科の教師らしい。


 さ、僕らも帰ろう。片桐先生ときちんと話をしなければならない。


「ごめんね、本当に。ちょっとしたドッキリのつもりだったんだよ。鳶くんにも少し驚かせたらきちんと事情を説明するように言ったのに。怪我、してない?」


大変申し上げにくいが、

「怪我をさせたのはこちら側なんですよ、忍野さんが反撃に出ましてですね。そりゃあもう、コテンパンに。」


「え、鳶くんをですか?」


見たぞ、仏の片桐先生が苦い顔をしたのを。


「すいません、いや、まさか焼き・・鳶って人が、片桐先生が紹介してくださった方だとは思わなかったものですから。ねぇ。」


頭掻いてる場合じゃないですから。しかし、まあ彼なら大丈夫でしょう。と、言うからまあ大丈夫らしい。


「それなら、あとは鳶くんからの連絡を待つだけですね、私が連絡を受け取ったらすぐにお伝えしますね、そしたらまたあの場所へ向かってください。」


「うぃっす。」


「わかりました、ありがとうございます。」


ほら、きちんと返事しないと襲われますよ殺し屋に。


そういうと彼は、俺を舐めるなよ。と笑った。

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