Scene6

「痛えな、痛えよ、なあちょっと、縄ほどいてくれてもいいんだぜ。」


「忍野さん、僕ら拉致されてるんで、たぶん言い分とか、聞いてくれないと思うんですよね。」


殺されちゃったりする会社の子会社につかまったということで、やはり普通の印刷業者などではなく、訪ねてきただけでこの仕打ち。

パンフレットを取りにいけといったのは、僕らの上司だが、これは一体どういうことだろうか。


「さっきはどうもご丁寧におっさん呼ばわりしてくれてありがとう、僕、そんなに貫禄あった?」


煙草の吸い殻を床にこすりつけながら、なんども断りを入れておくが、あくまで忍野さんと同い年ほどでしかない男が言った。


「いや、ないね。むしろしなびてるよ。しなしなの焼きナスだな、美味しくないやつ。」


忍野さん、と言いたいところだが、この状況で無闇やたらにいつもの調子でツッコむと痛い目を見るのは百も承知なので、肘で彼をつついて制御を試みる。


「僕はしなしなのやつも味が滲みてて好きだよ。ちなみに僕、三十二なんだけどな。煙草のせいかな。」


「おいおい年下かよ。ほらな、だから煙草はよくないんだよ、な、村中もやめろよ、な。」


話をふるのか、今。

そして、なぜかこの中で一番穏やかな声を出す男は、その両手に拳銃とナイフを、ワンセットずつおもちゃのように持っているのだからもういよいよトイレが我慢できない。

ここに来たのはなんでだっけ。


 ああ、あの人の頼みだ。

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