Scene6
「痛えな、痛えよ、なあちょっと、縄ほどいてくれてもいいんだぜ。」
「忍野さん、僕ら拉致されてるんで、たぶん言い分とか、聞いてくれないと思うんですよね。」
殺されちゃったりする会社の子会社につかまったということで、やはり普通の印刷業者などではなく、訪ねてきただけでこの仕打ち。
パンフレットを取りにいけといったのは、僕らの上司だが、これは一体どういうことだろうか。
「さっきはどうもご丁寧におっさん呼ばわりしてくれてありがとう、僕、そんなに貫禄あった?」
煙草の吸い殻を床にこすりつけながら、なんども断りを入れておくが、あくまで忍野さんと同い年ほどでしかない男が言った。
「いや、ないね。むしろしなびてるよ。しなしなの焼きナスだな、美味しくないやつ。」
忍野さん、と言いたいところだが、この状況で無闇やたらにいつもの調子でツッコむと痛い目を見るのは百も承知なので、肘で彼をつついて制御を試みる。
「僕はしなしなのやつも味が滲みてて好きだよ。ちなみに僕、三十二なんだけどな。煙草のせいかな。」
「おいおい年下かよ。ほらな、だから煙草はよくないんだよ、な、村中もやめろよ、な。」
話をふるのか、今。
そして、なぜかこの中で一番穏やかな声を出す男は、その両手に拳銃とナイフを、ワンセットずつおもちゃのように持っているのだからもういよいよトイレが我慢できない。
ここに来たのはなんでだっけ。
ああ、あの人の頼みだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます