Scene3

そうこう話しているうちに彼もなんとか三十分以内に食事を終えたので、さっさと業者に向かおうと外へでて歩いていると、


「おい村中、あれ見ろよ。」


「歩きたばこ、ですね。」

歩きたばこというのは、実は喫煙者である僕からしても非常に気分を害するもので、たばこを吸おうと吸うまいと、副流煙というのは気分のいいものではない。


「おいおっさん。」

“おっさん”と呼ばれた男が振り返る。


「俺はな、まだ死にたくねえの。おっさんが死ぬのは勝手だがな、周りに副流煙まき散らして歩くのはどうかと思うぜ。」


彼がおっさんだと罵った相手は、僕からみて、まだおっさんと呼ばれる歳ではないであろう人物だということは頭の中に置いておいていただきたい。


「忍野さん、この人まだおっさんじゃないと思うんです僕。」


「うっせーな、俺より年上っぽいのはみんなおっさんなんだよ。」


そういう忍野さんだってもう三十三だ。僕より年上なのだからおっさんじゃないか、と言うとまた面倒なので黙っていれば、


「あのなおっさん、俺、塾講師してんだけどよ、やっぱいるわけ、学生のうちに煙草吸っちゃってるようなバカが。なんでそういう子供がでてくると思うか考えろよ。」


先ほどから忍野さんとさほど歳も変わらないであろうサラリーマンは、すでに反省の色を顔に浮かべて立っているのに。


「あのな、大人がカッコ良けりゃ子供はグレねえんだよ。」


すいませんでした、気を付けます。そう言って逃げるように、歩きたばこの彼は去っていった。

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