第9話
*同時に二話出しています。八話を飛ばさないよう、ご注意ください
~そして、月日は流れ五年後~
「おお、今日はキミを雇って4年の記念日か。どうだい、私の元を卒業して、自前の事務所を持ってみるというのは」
不意に局長が呟きました。暦を見てみれば、確かに“あの日”から五年もの時が経っていました。
「いやはや感慨深いものだね。若手探偵だった私は、名探偵とも呼ばれるようになり、一回の執事だった君は、その名探偵を陰から支える立派な助手になっているんだ」
と、
「あんなに咲き誇っていた富の華も、たった一人の男に散らされてしまう。皮肉なものだよね」
結局、ムーンストーンを盗まれた後も半年ほど、アジサイ様はモンステラを捕まえようと躍起になられていましたが、捕まえることはできませんでした。それどころか、パーティー前日に入れ替わっていたベコニアも、あのまま帰ってこず行方知れずとなってしまいました。こうして家を引き継ぐ証も、娘も失ったあの家は離散してしまいました。路頭に迷った僕は、お金を得ながらも行方知れずになったベコニアを探すことのできる職、つまりサルビア嬢(今は大手事務所の局長をしていますが)の助手に転職したのでした。最初、僕を雇うことを渋っていた彼女も、あの事件での立ち回りとかを、一年ほど幾度となくアピールを繰り返していたら、ようやく雇うことを決めてくれました。
それから僕は、サルビア局長といろんな謎解き、もとい冒険を幾度となく繰り返しました。パートナーシップとか信頼関係とかいろいろ勝手に築かれてしました、といっても僕が将来愛するのは、ベコニアただ一人なので愛情は一切生まれませんでしたが。…たとえ僕の一方的な片思いでも。お嬢様はただの幼馴染としてしか見てなかったですし。
閑話休題
過去のことを思い出していると、会いたい気持ちが溢れてきてしまいました。そんな様子を察してか、サルビア局長がいいます。
「まあ、なんだ。勤続4周年の記念日だし、今日の依頼はきっといいものになるだろうさ」
「局長が直に受ける依頼とか怖すぎるんですが?」
「まあ、来たらわかるさ。さ、そろそろ依頼主が来る時間だ」
なんて雑談をしていたら、応接室のドアが開いて依頼者が入ってきました。そのの
顔を見た途端、息が詰まってしまいました。
「お久しぶりです、サルビアさん。いつぞやはお世話になりました、お陰様でお父様や家の呪縛から逃れることができました。また頼ることになって申し訳ないのですけれど、どうしても探してほしい人がいるんですの」
懐かしい声です。自分で探すまでもありませんでした。
「ああ、話は聞いている。なんでも昔の知り合いを探してほしいらしいね」
「ええ、私の初恋の人で、片思いでしょうけど、今も想っていますの。彼の名前は―――」
アングレカムの花束を君に(旧題 挑戦状) 馬瀬暗紅 @umazeankou
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