第4話
そんなこんなで、その翌日。たまたま近くにいたサルビア嬢に連絡が渡り、その日の夕方には御館様と会話するに至ってしまいました。サルビア嬢との面会の場には、御館様とラベンダー様、二人に仕える執事二名と、取られる予定の宝石、それを継ぐ予定のお嬢様と、そのお嬢様に仕える僕とサルビア嬢の7人がいます。
「成る程。事情は分かりました。予告状の最後に入っているこの判子は、確かに怪盗モンステラのものです。そうなれば確実に次の満月の夜、約一週間ほどでしょうか、彼は確実にきます。私も出来る限り、力は尽くしますが何分相手が相手です。必ず守りきれるわけでは無いのでそこはご了承ください。」
「分かった。ただ、どうしてもあれは我が一族にとって必要なもの。あれがなければ我が娘ベコニアが正当な後継者となれず嫁げなくなってしまうからな。くれぐれも頼んだぞ」
作戦会議を終え、自室に戻る最中、いきなりお嬢様に頬を抓られました。
「あにするんですか、ほじょうさま」
「シュウがあのサルビアとかいう女の人に、ずっと熱い視線を注いでいるからよ。自業自得だわ」
もしかして、サルビア嬢に敵意の目を向けていたのがばれてしまったのでしょうか。お嬢様は鋭いですし、何より僕に嫉妬なんてしてくれるわけないですもんね。とりあえずごまかしましょうか。
「別に見てませんよ。それに僕はお嬢様一筋ですよ。確かにあの人はきれいだと思いましたけどそれでも僕にとっての一番はお嬢様、唯一人ですよ」
愛の言葉ならいくらでも出てきます。だって本心ですから。
「~~~シュウ、簡単にそんな事言うのひどいよ。もう」
なんて会話をしていると背後から
「やあ、少年少女よ青春してるね」
と、声が掛かりました。
振り返るとそこにはちょうど会話の中心にいたサルビア嬢でした。
「ああ、安心したまえ。別に人の恋路に野暮な横やりを率先して入れるほど腐ってないからね」
図星を指されて思わず赤面してしまいました。隣を見れば、何故かお嬢様も顔を真っ赤に染めています。
「でも、確か君は何も問題なければしたきりとやらにしたがってその身一つで嫁がなければならないのだろう。大変だな公爵令嬢と言う立場は。家のため、自分の恋すら犠牲にしてしまうのか」
と、演技がかった口調で聞いてきました。
「そうですね、僕たちは絶対に結ばれることは無いですね。でもそれでもどうしようもないほどに彼女のことが大好きですし、せめてお嬢様が嫁ぐその瞬間までは誰よりも近くでお嬢様のことを守りたいですね」
何故か赤面していて若干使い物にならなくなっているお嬢様に代わって答えます。すると、サルビア嬢はいきなり真顔になって
「なあ、少年よ。ならば、君はお嬢様のために悪事に手を染められるのかい?」
と聞いてきました。一瞬驚きましたが、その感情をいつものようにポーカーフェイスの奥に沈めて答えます。
「ええ、お嬢様を守るためなら悪魔にだって魂を売りつけてやりますよ」
その答えを聞いてサルビア嬢は、
「そうか、変なことを聞いたな。残り少ない逢瀬を邪魔して悪かったな。後は若い人同士よろしくやってくれ」
と、お見合いの仲人さんみたいな台詞を残して踵を返して去っていきました。あれ?あの人僕たちの背後から来ましたよね。まさか感づいたのでしょうか。と僕が内心焦ってると
「シュウ。早く部屋に戻りましょう。ここだと誰に聞かれてるか分からないし、それにもし聞かれたとき黙ってくれる人ばかりじゃないもの」
とお嬢様に言われてしまったので、部屋に戻りました。そうですね、計画がどうなるか分からない以上、残り少ない日々を大切に過ごしましょう。万全を期すつもりですが、何分僕では力不足ですし。
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