第3拳【VSトウモロコシ】

 その場で地団駄を踏んだ玉蜀黍トウモロコシは、己の全体重をか弱き男に注ぐ。


――それこそ煎餅の様に薄くだ。


 懇切丁寧こんせつていねいに踏むことによって、


 数分もの間、玩具ではしゃぐ子どもの様な振る舞いを見せる玉蜀黍トウモロコシ


 足元で既に亡き者となっている男に対して、玉蜀黍トウモロコシはワザとらしく声をかけた。


オデ圧力プレスでコーンミールになったか?ガッハッハッハッ!!』


 ※コーンミール(玉蜀黍を粉状にした物)


 爆発音の様な声量に、数百は居る兵隊達は耳を塞ぎ、地を揺らすほどの高笑いが不快に響き渡る。


 しかし、弱者を踏みつけた事を喜んだ玉蜀黍トウモロコシの右足が僅かに浮いていた。


 体長五M強、体重は数百kgもある巨体の本人は気付かないが、通常の人間サイズである兵隊達から見れば一目瞭然である


 兵隊の一人が『工場長様!!足元が何か変です!!』と、注意を促した。


 必死な兵隊達の叫びを聞き、自らの足に違和感を覚えながらも玉蜀黍トウモロコシは、右足をズラそうとした瞬間。


 突如として突き上げられる様な衝撃が、玉蜀黍トウモロコシを襲う。


 無防備に背中は地面へと接触し、気付いた頃には視界が天を向き、耳にはが聞こえる。


 さっきまで大きな暗い影に包まれてたが、陽の元で明るみになる。


 そこには、が片腕を天に上げ『随分と、うすらデカイのが来たな……こっちはお前には用はないっ!!』と、睨みを効かしていた。


 倒れた態勢からゆっくりと起きあがると、『ほぉ……並の人間ニンジンに出せる殺気コロッケではないな』と、の男を見て言った。


 ようやく対峙した男と玉蜀黍トウモロコシ


 先に口を開いたのは以外にも、玉蜀黍トウモロコシだった。


『おメェ最近ザイギン|ここいらで〝り〟をしているオドコだな?おい、兵隊供ザゴドモ!!オデの〝お気に入り〟持ってこい!!』


 それを聞いた兵隊達に安堵の表情もなく、絶望で顔が強張こわばっている


 怯える者、みなが口を揃えて言った……『『『使』』』と――


 それは、ひ弱な兵隊達数十人が力を合わせて


それを兵隊事、軽々と上げるのを目の当たりにした男は『いよいよ趣味悪いのが出てきたな……』と苦笑いした。


 C級食民である玉蜀黍トウモロコシは、その巨大かつ頑強な体躯もさることながら、真に恐るべきなのはその武器にある。


コーンフレー


(中級食民である玉蜀黍トウモロコシが、賞味期限切れリミットオーバーの下級食民達をミンチにして造り上げた一品)


 全長は3M、所々に人間の面影が残る。


 玉蜀黍トウモロコシが人間達をその身で圧縮させた物で、要らない物は一切ない。


 素材本来の味が出た微笑ましい一品である。


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