第2拳【パンはパンでも食べられないパンはナ~ンだ?】


 敵は1人……?


 否――――


 突然の来訪者はD級兵隊にとって、ただの暇潰しに過ぎぬ相手だった。


 しかし、結果はどうだろう?――――


 無慈悲な多対1の総口撃そうこうげきは全て奴に食われた。


〝動揺〟、〝唖然〟、〝挫折〟、〝虚無〟……そして、〝敗北感〟――――


 けれど認める訳にはいかなかった……

 それは、D級としての薄く安いプライドではない。

 ここで失敗すればE級落ちはおろか、〝不要食民第三監獄さんかくコーナー〟行きも充分ありえる。


『おい、アイツまさか……百以上もいる兵隊達おれたち口撃こうげき


『まさか、そんな筈はない』


『たまたま当たらなかっただけだ……』


 そんな弱者の戯れ言がひしめく中『俺は、あまり立食が好きじゃないんでね。座りながら落ち着いて話でもしないか?』


 そう言いながら男は、戦場のド真ん中で胡座あぐらをかいた。


『さぁ、好きなだけ来いよ』――――と、言っている様な無防備かつ隙だらけの姿勢を、D級兵隊に向ける。


 煽られ、眼中に入らない兵隊達は『『『俺達をめるなぁぁぁあ!!!』』』


 体がはち切れるばかりに、絶叫と共に再び腹へ〝弾汁だし〟を補給する。


 そして頬へと装填し、発射までの時間……およそ1秒弱――――


 しかし、目の前の男に対してすきは、この戦場において死を意味する。


 生まれもった2本の腕は千手観音の如く、そして誰よりも速い動き――――男は既に技を放っていた。


 ――――『〝発攻はっこう2斤にきん-百斬挙ぴざぱん具無ぐなし〟』――――


 凄まじい轟音と共に兵隊達は呆然と立ち尽くした。


 不思議と兵隊達の衣服や体は無傷そのもの……。

 では、一体、何を斬ったのか?――――答えは、心に巣くっていた〝醜い自己顕示欲カビ〟だ。


 E級落ちはしたくない……。

 食民の底辺だけは嫌だ。

 そんな気持ちが根底にあるからこそ、自らより下を作る事に固執していたのだ。


『俺達は、いったい何をしていたんだ……』


『同じ食民に序列を付けるなんて、全く俺は馬鹿みたいだ……』


 先程までの怒りに満ちた表情ではなく、どこか安らいだようにみな、口々にそう言った。


 男はストレッチをしながら『ふぅ……先ずは雑兵を調理した所で……』と、言いながら辺りを見回した。


 強烈な殺気コロッケを放つ者が


 戦闘開始前に、誰かが述べた言葉に妙な違和感を覚える。


が来る前に〟――――?


『そう言えば、Eブロックのボスがいないな……』


 しかし、360゚見渡してもには、体が燃えてしまうような熱々アツアツ殺気コロッケを放つ者はいない――――


 ん?…………?


 そう気付いた時には既に遅かった。

 自らの倍以上もある影が、音も無く男を包み込む――――


 頭上高く舞うほどの大量の砂煙を上げ、正体に気付いた兵隊共は阿鼻叫喚とした状態となる。


 その者、筋骨隆々で緑のタンクトップを纏い、頭髪は黄色いトサカを思わせる風貌。


 体長は推定、ヤングコーン50本分強


 ※ヤングコーンは一本当たり10cm計算(季節、肥料等により変化有り)


〝Eブロック工場長-玉蜀黍トウモロコシ


オデジロダンのようだ?』



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る