第11話『公園(7)』


「あ、トモヤとシンタローだ!」

ちづると広場で遊んでカオリが、隆志と一緒にいる朝也と伸太郎に気付き、笑顔で駆け寄ってきた。


カオリの後を追って、ちづるも三人のもとに来た。

「隆志さん、この方達は‥?」

朝也と伸太郎を見てちづるは尋ねた。

「二人共高校の同学年で親友だ。お前の事も二人には話している。」

「そうなんですか。」

ちづるは微笑むと、二人を向いて礼儀正しく挨拶した。

「こんにちは。私ちづるといいます。平仮名三つでちづるです。宜しくお願いします。」

「おう、俺は七三里朝也だ。七五三の上下に、郷里の里でナミサト。早朝の朝とセの一本余計でトモヤだ。」「ボクは関本伸太郎。関係の関に、絵本の本でセキモト。シンは記録更伸の伸、タロウは桃太郎の太郎だ。宜しくね。」

伸太郎のその自己紹介を聞き、

「は?」

朝也は首を傾げた。

「記録更伸の“伸”って、“新”の方じゃないのか?」

「えっ!そうなの?」

伸太郎は驚いた。

「‥知らなかったのか?まあなんかそっちの字の方も意味深に読めるが‥」

呆れたように朝也が言うと、伸太郎は頭を抱えて、

「‥やっばー。いつもこの自己紹介をしてたのに‥メッチャ恥ずかしいよ‥。」

心底困ったように呟いた。その様子を見て、

「いや、大丈夫だろ。」

隆志が安心させるように言った。

「お前のアホさを見事に表現してると考えれば、立派な自己紹介だ。」

「はあ?」

伸太郎が妙な表情をしたのを見て、カオリは笑顔でちづるに言った。

「あのねちづる、シンタローはアホなんだよ!」

それを聞き、

「誰がアホだ!少なくともお前よりは頭脳は大人だ!」

声を上げた伸太郎に、朝也が真剣とも憐れみともつかない表情と口調で、

「いや、わからないぞ‥。実際お前はアホだしな‥。」

朝也のツッコミに、

「‥‥うっさいな‥。」

伸太郎は苦々しく笑うと、カオリをつかまえて、

「このやろこのやろ生意気だゾ。」

コツンコツンとカオリの頭を小突いた。


「うふっ。」

四人の一部始終を見ていたちづるが、思わず微笑みを洩らした。

それから皆を見て、

「皆さん、すごく仲が良いのですね。」

心底楽しそうに言った。

その微笑みが、傾きかけた夕日に鮮やかに照らされ眩しく映った。

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