第9話『公園(5)』




「あれ、隆志じゃん。」

再び自分を呼ぶ声を聞き、隆志は顔を上げた。


声をかけたのは公園内を歩いていた隆志と同年齢位の二人の男子だった。

「おう、朝也に伸太郎。」

隆志は本を閉じ、二人を見て笑顔になった。


隆志に声をかけた二人の男子。

一人は七三里朝也なみさとともやという名前の、前髪が長くて背が高く、ややクールイケメンな男子。

もう一人は関本伸太郎せきもとしんたろうという名前で、背は隆志と同じ位の剽軽そうで笑顔の明るい男子。

二人とも、隆志と同じ御崎坂高校に通っている同学年の生徒で、三人は中学生時代からの親友同士だった。


「ここで何してんの?」

ベンチにもたれかかりながら、伸太郎が隆志に尋ねた。

隆志はブランコにカオリと並んで乗り遊んでいるちづるを指差して答えた。

「あいつと散歩しに来たんだ。」

朝也と伸太郎は隆志が指差した先の少女、ちづるを眺め見て、

「‥そうか、あのセーラー服の少女が、例の居候している子か。」

頷きながら言った。

親友同士であった為、隆志がちづるという少女と居候している事は二人共隆志から既に聞いていた。

「見知らぬ少女と暮らしてて大丈夫なのか?」

ちづるを眺めながら、朝也は隆志に尋ねた。

隆志は腕を組んで、

「始めは当然違和感バリバリだったけどな。でもそれもほんの数日で、いつの間にか家族みたいになってたさ。‥両親が居なくて幸いだったよ。」

おかしそうに笑いながら答えた。

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