第7話『公園(3)』
「久しぶりっ、タカシ!」
カオリと呼ばれた少女は走って来ると隆志の腕に飛び込むように抱きついた。
「とっとっと‥。」
隆志は危うく片足で体のバランスを保ちながら、
「“久しぶりっ”て、お前、ついこの間ここで会っただろ。」
「ん?そうだったけ?」
少女は抱きついたまま小首を傾げた。
「いいから手を離せ。」
隆志は苦笑しながら、少女を振りほどこうとした。
そんな二人のやりとりを見て、ちづるは本を閉じ尋ねた。
「隆志さん、その子は‥?」
「ああこいつか?」
少女を腕から引き剥がすように離してから、隆志は親指で少女を紹介した。
「こいつはカオリと言って、いつも公園にいる超じゃじゃ馬少女だ。」
「誰がジャジャウマだっ。」
言うが早いがカオリは驚くほどの敏捷さと跳躍で隆志の鳩尾に飛び蹴りを食らわした。
呻き声を上げて吹っ飛んでった隆志を無視して、カオリは大きな両眼でちづるをじっと見つめた。
「‥‥。」
ちづるもその大きな両眼を静かに見つめ返していた。
十秒程見つめあった後、カオリが先に口を開いた。
「私カオリ。片仮名三つでカオリ。あなたは?」
ちづるは長い後ろ髪を軽く払い、
「私はちづる。隆志さんの家で一緒に暮らしているの。よろしくね。」
笑顔で挨拶を返した。
「へー、ちづるっていうんだ。」
カオリは大きな瞳でちづるの顔をまじまじと見て、やがて笑顔で言った。
「ちづる、カオリとオトモダチになろ?」
「ええ、お友達になりましょう。」
ちづるは即答した。
「わーいありがと!」
カオリは嬉しそうにちづるに抱きついた。
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