第6話『公園(2)』
やがて二人は、公園‥二人が十日前に出会った『桜木公園』に着いた。
そんなに広い公園ではないが、文字通り桜の木が多数ある公園だ。
既に幾つかの木々は桜が開花しており、公園は一年で一番綺麗な時季を迎えようとしていた。
公園に着くと、ちづるは桜の木々が立ち並ぶ遊歩道に所々設置してあるベンチの一つに座った。
そしてセーラー服の胸ポケットから、持参してきた一冊の本を取り出した。
隆志はその隣に座りながらその本に目を向けた。
「あれ、その本‥。」
「隆志さんの部屋の本棚からお借りしました。」
「そうか。」
隆志は本の題名を見た。
「‥『坂の上の渚』か。これ大分前の小説だけど気にいったのか?」
「はい。とてもいい本です。」
ちづるは笑顔で答え、ページをめくった。
それからちづるは『坂の上の渚』を読み耽った。
一方隆志はその隣で昼寝を始めた。
しばらく経ち、目を覚ました隆志は、飲み物でも買おうかと公園の入り口付近にある自販機を見て腰を上げた。
すると、
「タカシー!」
元気な女の子の声がした。
声の先を見ると、幼い青色の制服を着た、大きな両眼がたまらなく可愛い七歳位の少女が此方に走って来た。
「おお、カオリ。」
来たのか、と言うように隆志はその少女を見て笑った。
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