第3話『出会い(2)』



隆志は少女を背負い、自宅へ急いだ。

自宅に着くとすぐに、少女を毛布にくるみ熱いお茶を出したりと介抱した。


しばらくすると、少女は少し元気を取り戻した。


少女の容態が落ち着いたのを見て、隆志はまず自己紹介した。

「自分は日野隆志。日野市の日野に、タカは隆盛の隆、シはこころざしだ。現在この家に一人で住んでいる。」

自己紹介を終えると、隆志は少女に尋ねた。

「どうして公園で倒れていたんだ?」


少女は正座して、小さいが澄んだ声で答えた。

「‥道に迷ってしまって‥。」

隆志は更に質問した。

「どこに行こうとしてたんだ?」

「‥‥。」

少女は答えずに俯いた。

「‥まあいい。家はどこなんだ?」

その質問に、少女は俯いたまま答えた。

「‥ないです。」

「ない?」

怪訝な表情を隆志は浮かべた。

「‥はい。」

「おい、真面目に答えてくれ。」

「本当なんです‥。」

少女は俯いたまま繰り返した。


隆志はやれやれと頭を掻きながら、質問を続けた。

「名前は?」

「ちづるです。」

「苗字は?」

「‥ありません。」

「‥お父さんとお母さんは?」

「‥いますが、会えません。」

「はあ?」

隆志は遂に呆れた声を出した。

そんな彼に、ちづるは真面目な口調で続けた。

「私は、この世界で一人なんです。」

(…こいつ、頭おかしいのか?家出か、それとも記憶喪失か?…)

心を落ち着かせようと一口お茶を飲んでから、隆志は頭を抱えて思った。


隆志が思考していると、

「隆志さん、」

再びちづるが真面目な口調で言った。

「もし良かったら、私を一定期間家族にしてくれますか?」

「は?」

再び呆気にとられた隆志に、ちづるは表情も真剣にして続けた。

「私、この町に長くいます。この町でやらねばいけないことがあるので‥。よろしいでしょうか、隆志さん。」

「‥あのなあ‥。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る