第2話『序章篇・出会い(1)』


三月某日、御崎坂みさきざか市。


北風がまた吹いた。

冬から春の季節に入っているとはいえ、まだ風は肌に冷たい。


(…寒…)

所用へ出かける為、街灯照らす夜道を歩いていた御崎坂高校みさきざかこうこう一年生の日野隆志ひのたかしは、思わず首をすくめた。

隆志は寒いのはやや苦手だ。

さっさと所用を済ませて家に戻ろうと、手に吐息を吹きかけながら隆志は思った。


その後、所用を済ませた隆志は帰り道を小走り気味に歩いていた。

先日、高校一年目の終業式が終わった。

月が変わるとすぐ新学期になり、隆志は二年生になる。

その始業式に向けて、ある程度準備はしておこうかと隆志は歩きながら考えた。


帰り道を歩くうち、隆志は公園の前を通りかかった。

すると、

(…ん?)

ふと公園内を見た視線の先、電灯の下にあるベンチの側に、黒い妙な物体があるのが見えた。


「…何だあれは?」

隆志は立ち止まり目を凝らしてその物体を眺めたが、何かは分からなかった。

結局彼は公園内に入り、その黒い物体に近づいた。


そして、

「おい、どうしたんだ!」

思わず声を上げた。

その物体は、黒いセーラー服を着た髪の長い十二、三歳と思われる少女だった。

倒れているのか眠っているのか、うつぶせに地面に伏せていた。


「おい、しっかりしろ。」

隆志は少女を揺すりながら声をかけた。

「ん‥‥。」

少女はすぐ目を覚ましたが、どこか意識がはっきりしていないのか、目元が虚ろに見えた。

その様子を見て隆志は即座に決断した。

「自分の家が近い。少しそこで休め。」

「…。」

隆志の言葉に、少女は無言で頷いた。

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