第8話 友人

俺は今、教室で飯を食っている。


妹が作ってくれたお弁当だ。とてもおいしい。


今日はいつもと違って、耳にイヤホンをつけていなかった。


なぜなら一緒に食べる人がいるからだ。


「・・・」


「・・・」


しかしこの沈黙耐えられん。


しかも夢はなぜか可愛らしいお弁当には手をつけずに、俺を凝視している。


そんなに見られたら、、、恥ずかしいよ、、


「今日は珍しいな。いつもは天文部の奴らと食ってるよな?」


俺は耐えかねて訊いた。


「え?あぁ、そうね。」


どこか上の空な夢。


「どうした?天文部の奴らと喧嘩でもしたか?」


「いや、そうじゃなくて、ただ、、、」


「ただ?」


「優とご飯食べたくて、、、迷惑だったかな?」


「お、おう。別に大丈夫だぞ。」


いや、何この可愛い生き物。


よく見たら唇にいつもより艶がある。


リップ塗ってんじゃーん。


「それなら、夢も飯食えよ。」


なんとか言葉を紡ぐ。


「うん、、、」


夢が小さなウィンナーを頬張る。小動物チックで可愛らしい。


「そんなに、見ないでよ。見られてると恥ずかしいから、、、」


俺ら飯食ってるだけだよね?大丈夫だよね?


恥ずかしくなって一気に米を口にかきこむ。


そのせいで胸が苦しくなる。


胸を叩いていると夢が「大丈夫?」とペットボトルを渡してきた。


ジェスチャーで謝辞を述べて、それをいただく。お茶だった。


おかげで落ち着いた。


すると夢がもじもじしている。


「どうした?」


「いや、間接キス、しちゃったなって。」


そう言って夢は恥ずかしそうに笑う。


くっ眩しい。これが青春か。


「そ、そっか。悪いね。」


めちゃくちゃ唇に目がいく。ぽってりしてて柔らかそうだ。


「いや、別に優なら、、、」


「それはどういう、」


きーんこーんかーんこーん


ラブコメ的には空気の読めてるチャイムだった。腹立つ。


「あ、もう昼休み終わりだね。」


夢はとんでもないスピードで机を前に向ける。


夢の髪は、心なしかいつもより明るく見えた。




そしてそのまま夢の髪を眺めていると、学校が終わる。


「、、、じゃあね。」


「また明日。」


ぎこちない挨拶だが、悪くない。


しばらくして、俺も教室を出た。

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