第5話 幼馴染

マンションに着き、チャリ置き場に向かう。するとそこには非常によく知った顔があった。


「おっす、あかり、元気か?」


華奢な後ろ姿に話かける。


「、、、」


あかりは俺の声にピクッと反応した後に、俺を一瞥いちべつすることさえなく、駐輪場から去ってしまう。


近くの女子校に通っている須藤あかりは俺の幼馴染だ。同じマンションの住人であることから、家族間でも付き合いがある。


現在でも母親同士は仲が良いのだが、俺たちの関係は冷え切っている。昔は激アツだったのに。


俺はあかりのことが好きなので中学に入っても、よく一緒に帰ろうとしたり、クラスが違ってもおしゃべりしに行ったりしていた。


しかし次第に邪険に扱われるようになり、ついに中2のあたりで、もう関わるなと宣言された。それでもあかり以外に友達がいなかった俺は、話しかけ続けていた。


すると現在のように完全に無視されるようになった。俺はこんなにもあかりのことが好きなのに、あかりちゃんはツンデレなのね。


今日は制服姿が見られてよかった。白いセーラー服は金色のショートボブによく映える。この時、青いリボンがすげえかっこよく見える。


あかりの女子校は自由度が高く、あかりの髪の色はアニメのキャラみたいだ。


しかもあかりの目はくりっと大きな茶色で、目鼻立ちもしっかりしているので、金髪が本当によく似合っている。


これを伝えた時もあかりは恥ずかしかったのか、「・・・」って言ってたな。本当ツンデレなんだから。


俺もチャリを置いて、エレベーターに向かう。


あかりは先に行ってしまったようで三階にエレベーターが止まっていた。


上のボタンを押し、エレベーターを呼び、四の数字を押す。


四階の角にあるのが俺の家だ。


鍵を開け「ただいま」と言う。返事はない。

そう言えば妹は今日帰りが遅くなるって言ってたな。


ということは、盛大にアレができるわけか。ゲスな笑みを浮かべながら部屋着に着替え、スピーカーをつけてボリュームのノブを強気に回す。


そして、スマホで「頭の悪い音楽」のプレイイリストを選ぶ。


すると不規則なリズムでただ低い音の塊が流れ始め、そこに人の叫び声が加えられる。


これはいい。至高の時間だ。そのままベッドに横になる。こんなに安らぐ時はあろうか。




「お兄ちゃん、起きて」


「ん?」


妹に起こされる。どうやら俺は少し寝ていたようだ。音楽も止まって、しんとしている。


妹の顔を見ると、少し不穏な感じがする。なんでだろう。


「あっ、」


俺は禁忌を犯していたことを思い出した。そうだ、俺は大音量での音楽鑑賞という、妹に禁止されている事項の1つをバッチリ破っていたのだ。そうなればやることは一つ。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、、、」


陳謝である。





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